ウォルグリーン【WBA】銘柄分析_増配魅力の大手薬局チェーン

米国株の年次決算書・銘柄分析
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ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(Walgreens Boots Alliance Inc / WBA)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

1. Walgreens Boots Alliance Inc(WBA)について

1-1. 業種

小売業(ドラッグストア・薬局チェーン)

1-2. 事業の概要

ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスは、子会社を通じ、米国、ヨーロッパで薬局チェーンを展開する持株会社です。

2021年度末(8月決算)時点で約13,000ある店舗では、処方箋薬の提供や市販薬、食品、日用品の販売、プライベートブランド商品の展開などを行っています。
また、新型コロナウイルスの感染拡大を受けてECサイトや非接触での購入も強化されており、インターネット注文した商品の当日配送やドライブスルーでの受取にも対応しました。

保有事業の一部であるブーツやNo7ビューティー・カンパニーの売却が検討されていましたが、2022年の予想外の金融市場の変化を受け、各事業の潜在価値を適切に反映した買収提案が無かったため、この売却は見直されました。
なお、この両事業の業績は力強いとされており、保持という決定の後押しになっています。
一方、卸子会社であるアライアンス・ヘルスケアは、大手医薬品卸業のアメリソースバーゲン(AB)へと売却済みです。

また、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスは45年増配を続けており、高配当株としても有名です。

1-3. チャート

ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスの株価チャートです。
2015年の夏頃から株価は上下しつつ下降傾向となっています。
2020年11月からは上昇し50ドル台をキープしていましたが、2022年に入ってからは下落が続いています(2022年9月14日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 流動負債が流動資産を超える
  • 自己資本比率は29%
  • キャッシュフローは安定した黒字

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

WBA貸借バランス_2021

(単位:百万ドル)

貸借バランスは”不安タイプ”です。

流動資産を流動負債が上回っている状況が何年も続いています。
財務上はあまり好ましくありませんが、後述するキャッシュフローには問題がないため、許容範囲内と判断します。

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は約29%です。
高い数値ではありませんが、最低ラインは十分超えています。

2-1-3. キャッシュフロー

営業活動がプラス、投資活動がプラス、財務活動がマイナスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。

事業から利益を生み出せており、更に減価償却費などキャッシュ面でプラスになる調整(現金の移動を伴わない費用)も大きいため、営業活動によるキャッシュフローは十分なプラス収支となっています。

一方投資活動ではマイナス収支が続いていましたが、2021年度(8月決算)は事業の売却(卸子会社の売却など)を行ったため、プラス収支になりました。

財務活動では負債による収入・支出が大きな割合を占めている他、配当金の支払いに毎年16億ドル前後を使用しています。

2-1-4. 項目まとめ

買掛金(2021年度は流動負債の約半分を占める)をはじめとして流動負債が大きく、流動比率・当座比率という面では好ましくありません。
しかし、ウォルグリーンのブランドへの信用、キャッシュフロー面での安定感があるため、すぐに問題が発生することはなさそうです。

2-2. 収益性

  • ここ数年ではROE・ROA低下気味
  • 2020年度は新型コロナによる打撃アリ
  • 2021年度はコロナ前の水準に届かず

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

WBAのROE(自己資本利益率)推移_2021

ROEは低下気味です。
特に2020年度は新型コロナ感染拡大の影響もあって利益が大きく減少したため、ROEはかなり低下しました。(売上は2019年度と大きく変わらず。2020年度は利益率の高い医薬品の販売が減少したと考えられる)

2021年度は売上こそ増加したものの、利益はコロナ前の水準に戻っていません。

なお、ROEの計算に用いられる自己資本の連続的な増加もありません。(自己資本は毎年増減している)

2-2-2. ROA(総資産利益率)

WBAのROA(総資産利益率)推移_2021

ROAもROE同様に推移しています。
なお、負債の増加に伴い、2020年度から総資産が大きくなっています。

2-2-3. 項目まとめ

ここ数年を見るとROE・ROAは低下気味で、2021年度の数値は米国平均を下回っています。
ただ、コロナ前はもっと高い水準であったことを踏まえると、今後回復・上昇する可能性もあると考えられます。

2-3. 経営の効率

  • 総資本回転率は十分
  • 2021年度は回転率上昇

2-3-1. 各回転率

WBAの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率_2021

回転率は問題ありません。
また、2021年度は前年度よりも売上が増加し、資産が減少したため、回転率は上昇しています。

2-3-2. 項目まとめ

全体的に回転率は良好です。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 2021年度は売上9%増加
  • 2020年度は利益大幅減。回復しきれず
  • 2022年度第3Qは和解金などで赤字
  • 2019年度頃から粗利率低下

2-4-1. 売上高と営業利益

WBAの売上高推移_2021

2021年度の売上は、前年度比約9%の増加です。
また、2018年度の実績を約1,000百万ドル(10億ドル)上回っています。
これには、新型コロナの検査・ワクチンが好調に推移したことも影響しました。

なお、2022年度第3Q(記事作成時点の最新決算。2022年3月~5月期)の売上は前年同期比4%減少したものの、第1Q~第3Qの9ヶ月間の合計は前年同期比2%増加しています。
ただ、新型コロナ関連の売上は失速しているようです。

WBAの営業利益(損失)推移_2021

売上高がV字回復を見せたのに対し、近年の営業利益は減少気味です。
特に2020年度は新型コロナ感染拡大の影響、のれんや資産の減損処理で利益面が悪化し、2021年度もまだ元の水準まで回復しきれていないことが伺えます。

また、2019年度の時点で利益は減少しており、この要因として粗利率の低下が挙げられています。
決算数値の修正で多少タイミングに差がありますが、23%程度あったものが21%程度まで低下しており、これは2022年度第3Qでも改善していません。

また、2022年度第3Qは営業損失が発生しました。
これはオピオイド訴訟の和解金発生などによるものです。
なお、第1Q~第3Qの9ヶ月間では、前年同期比54%増加し2,209百万ドルとなっています。

2-4-2. 項目まとめ

新型コロナによる打撃から回復しているところですが、直近(記事作成時点)では訴訟の和解金が発生し、予期せぬ四半期赤字となりました。

新型コロナの規制緩和は追い風となっているので、今後再び利益を増加させられるか注目したいです。
ただ、2019年度から営業利益は減少しており、その要因として粗利率の低下も挙げられているので一旦様子を見たい内容です。

3. まとめ

クロとしては、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(WBA)は、増配姿勢が魅力的ですが、様子を見つつ投資したい銘柄です。

利益の回復に期待したいですが、粗利率が低くなっている点が気になります。
新型コロナの規制緩和という追い風はありますが、その一方で新型コロナ関連の売上失速という側面もあり、すぐに大きくポジションを持つは控えたいと思います。

今回の記事はWalgreens Boots Alliance Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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