先日発表されたボイジャー・セラピューティクス(Voyager Therapeutics, Inc. / VYGR)の四半期決算(2021年第1Q)について、アナリスト予想とも比較しつつその内容をまとめていきます。
■ボイジャー・セラピューティクスの事業内容や年度末決算などを分析した記事はこちらにあります。
1. アナリスト予想との比較
直近4回はいずれもアナリスト予想を上回るEPSを達成しています。
ただ、現時点では販売できるものが無く(治療法・薬を開発している段階)収益は全て協業・コラボレーションの契約によって得られています。
次は、実際の売上高と損失額がどのように推移しているのかを見ていきます。
2. 四半期ごとの売上高と純利益(損失)の推移
これは、四半期ごとの売上高と純利益(今回は全ての期で純損失)をまとめた表です。
(単位:百万ドル)
2020年8月にAbbVieとの共同研究契約が終了したことにより、契約に残っていた繰延収益を認識し、一時的に売上高(販売するものが無いため、全て共同研究による収益)が増加しました。
また、2021年3月締めの四半期に認識された売上高は、Neurocrine社との共同研究からの650万ドルのみでした。
3. その他の補足
3-1. パーキンソン治療プログラムの終了
パーキンソン病の治療について臨床試験を行っていましたが、MRIでの異常が見つかったとされ、2020年12月に臨床保留通知を受けました。
その後、共同研究契約を結び出資を行っていたNeurocrine社は、2021年2月、パーキンソン治療プログラムに関する契約を終了しました。(他のプログラムでは共同研究・出資を続けている)
ボイジャー・セラピューティクスは”このプログラムがパーキンソン病患者に対して大きな可能性を秘めている”という考えを示しつつも、このプログラムを単独で進めることはしないと判断し、終了を決定しました。
また、将来的に”同プログラムの開発と商業化をパートナーに委ねることを期待する”ともしています。
3-2. ハンチントン病治療薬の臨床試験予定
ボイジャー・セラピューティクスは、2020年9月に、ハンチントン病患者への治療薬「VY-HTT01」の臨床試験を行うためIND申請(FDA/アメリカ食品医薬品局へ行う、治験薬投与の承認申請)を行っていました。
このIND申請は一旦保留となっていましたが、FDAから要求された追加情報の回答を行い、2021年4月に臨床保留が解除されました。
2021年第4四半期には米国の複数の施設でVY-HTT01のフェーズ1/2臨床試験を開始する予定です。この試験では、初期症状のハンチントン病患者を対象に、VY-HTT01の安全性と忍容性を評価します。
2022年には、安全性・忍容性・バイオマーカーに関する最初のトップラインデータを提供することを見込んでいます。
4. まとめ
ボイジャー・セラピューティクス(Voyager Therapeutics, Inc.)はまだ販売できる商品を持たず、商業化を目指して研究開発を行っている段階の企業です。
2020年の黒字もAbbVieとの契約終了が影響した一時的なものでした。また、契約終了はその後の研究プログラム停止や売上高にも影響を及ぼしています。
しかし、2021年4月にハンチントン病治療薬「VY-HTT01」臨床試験のIND申請が承認され、臨床試験へ進めることになりました。これは事業の収益化や成長に繋がるかもしれない(試験の結果次第)重要な一歩ですが、リスクの高い銘柄であることに変わりはありません。
(ボイジャー・セラピューティクスの事業内容や年度末の決算書分析を行った記事もこちら↓にあります)
今回の記事は2020~2021年のVoyager Therapeutics, Inc.の決算書及び四半期レポート、コーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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