ボイジャー【VYGR】銘柄分析_ゲノム・遺伝子の治療法を臨床開発中

米国株の年次決算書・銘柄分析
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今回はボイジャー・セラピューティクス(Voyager Therapeutics, Inc. / VYGR)の決算書(10-K)やニュースについて分析しました。クロの判断は以下の通りです。
2021年4月26日のFDA臨床保留解除の発表を受けて追記しました。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待※まだ商品を持っていない状態のため

それでは見ていきましょう。

2021年第4Qと通年の速報はこちら

1. Voyager Therapeutics, Inc.(VYGR)について

1-1. 業種

バイオテクノロジー、健康・メディカルテクノロジー

1-2. 事業の概要

ボイジャー・セラピューティクスは、ゲノムを利用した、重度の神経疾患の治療法開発を行う企業です。
アデノ随伴ウイルス(AAV)に焦点を当て、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、フリードライヒ運動失調症などに対して治療法の開発を行い、最終的には商品化を目指しています。

現段階では販売する商品・サービスがなく、協定を結んだ企業からの投資を収入としています

1-2-1. アデノ随伴ウイルス(AAV)を利用した治療

アデノ随伴ウイルス(AAV)はヒトや霊長目の動物に感染するウイルスですが、病原性が無く(現時点で確認されていない)、引き起こす免疫反応も非常に弱いウイルスです。

遺伝子治療の世界では注目を集めるウイルスで、この遺伝子配列を置き換えてヒトの細胞へ届ける(遺伝物質を細胞へ送るために用いる=ウイルスベクターとして用いる)ことで、これまで治療の難しかった病気にもアプローチが可能になると考えられています。

非常に革新的な治療法ですが、もちろんリスクも存在しています。
因果関係や関与が示唆される症状(ヒト肝細胞癌など。まだ明確に副作用とされてはいない)があることや、病気の種類によっては頭蓋骨内へ直接投与が必要となるなど、施術面でのリスクもあります。

1-3. チャート

ボイジャー・セラピューティクスの株価チャートはこのようになっています。
2019年1月29日、Neurocrineとのコラボレーション契約が発表されてから株価はしばらく上昇傾向にありましたが、現在は過去最安値をつけています。(2021年4月12日)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 短期の資金繰りは問題なし
  • 2020年の一時的な黒字で自己資本比率が上昇
  • キャッシュフローは不安の大きい形
  • まだ利益を出す事業を確立できていない

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2020年決算書におけるVYGR貸借バランス

(単位:百万ドル)

貸借バランスは“安定タイプ”です。
(貸借バランスのポイントについては、こちら↓の記事で紹介しています)

2020年の流動比率は約740%、当座比率も約710%あり、短期の資金繰りは問題ありません
負債として計上される繰延収益の減少によって流動負債が減り、流動比率・当座比率の数値が上昇しました。

これには、ボイジャー・セラピューティクスが協定・協業契約を結んだ企業から得る資金の一部を、契約期間を通じ契約内容の履行度合いに応じて収益として認識していく方法を取っていることが影響しています。
2020年はAbbVie社との契約期間が終了したため、終了日に残っていた繰延収益が収益として認識されました。

また、固定比率は約40%なので問題ありません

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は約60%なのでかなり良好な数値です。
2018~2019年は20%後半程度の数値でしたが、2020年は前述したAbbVieとの契約期間終了によって収益が増加し累積赤字減少となったため、大きく好転しました。

2-1-3. キャッシュフロー

キャッシュフローは、営業活動マイナス、投資活動プラス、財務活動プラスという”不安なタイプ”の組み合わせです。

本業で利益を出せていないため営業活動のキャッシュフローはほぼ毎年マイナスとなっており、投資活動や営業活動では、有価証券の満期による収入やストックオプション行使による収入でプラスとなっている年が多くあります。

本業となる営業活動がほぼ毎年マイナスのため、フリーキャッシュフローも良くありません。
(キャッシュフロー計算書の注目ポイントなどを、こちら↓の記事で紹介しています)

2-1-4. 項目まとめ

貸借対照表内の数値は良好(ただし累積赤字が積み上がっている)なので短期の資金繰りは問題なさそうですが、キャッシュフローは全体的に不安な内容です。

2020年はAbbVieとの契約期間終了によって一時的に黒字となっていますが、まだ販売できる商品・サービスが無く2021年は再び赤字となってしまう可能性が高い、まだまだ利益を生み出せる事業を作り上げる段階にある企業です。

2-2. 収益性

  • 2020年は一時的に黒字
  • まだ事業を収益化できていない
  • 現時点ではコロナ感染拡大の影響はない

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

VYGRのROE(自己資本利益率)推移

2020年のROEは約24%です。
これもAbbVieとの契約期間終了により、残っていた繰延収益、新たに認識した収益が加味された一時的な黒字です。

また、累積赤字が大きく積み重なった2018年はROEのマイナスも非常に大きくなっています。
2019年は純損失(赤字)額を2018年の半分程度に抑えられたため、マイナスのままではありますが数値が改善しました。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

VYGRのROA(総資産利益率)推移

ROAもROEと同様に上下しています。

2-2-3. 項目まとめ

2020年の黒字は一時的なものであり、事業の収益性はまだありません。
なお、現時点ではコロナ感染拡大の影響は受けていないとしています。

2-3. 経営の効率

  • 2019年から売上が増加しており、数値が大幅に改善
  • 2020年以降も同様の売上がある保証はない

2-3-1. 各回転率

VYGRの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率

総資本回転率は約0.7回、固定資産回転率は約2.7回です。
2019年はSanofi Genzymeとの共同研究終了、複数社との共同研究・協定契約締結が重なり、収入が伸びた(残っていた収益を認識した)ことで数値が改善しました。
2020年もAbbVieとの共同研究終了が大きく影響しています。

なお、販売する商品が無いため、現時点で棚卸資産は保持していません。

2-3-2. 項目まとめ

総資本から見ると、2020年の売上でも物足りない数値です。
商品を販売できるようになった際には、もっと多くの売上が必要になりそうです。
また、現時点では売上を他社との共同研究の契約に依存しているので、今後も同様の売上があるかはわかりません

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上・利益は2019年から急増
  • 売上増加の理由の一つが契約終了による収益認識なので
    その後の売上が不安
  • 研究開発費は売上高の60%超え
  • 販売できる商品がないため成長を見込みづらい
    →研究成果次第

2-4-1. 売上高と営業利益

VYGRの売上高推移

2019年はSanofi Genzymeとの共同研究終了、複数社との共同研究・協定契約締結が重なり、収入が伸びた(残っていた収益を認識した)ことで売上が大きく増えました。
2020年もAbbVieとの契約終了によって更に売上は増加しています。

VYGRの営業利益(損失)推移

2020年の売上増加と同じく、AbbVieとの契約終了によって一時的に黒字となりました。
また、契約終了によって一時的には大きな収益を得ることができましたが、これはその後の収入減を一つ失うことも意味しています

2-4-2. 研究開発費

2020年の売上高は約171百万ドル、研究開発費は約109百万ドルだったので、売上高研究開発費率は約64%です。
これは高すぎる数値ですが、販売するものが無く、他社との共同開発によって収入を得ている現状が反映されています。

2-4-3. 項目まとめ

他社と共同開発を行っている治療法が確立し商品化されなければ、成長を見込むことができません。

ゲノムや遺伝子関連の分野はまだまだ研究・開発段階の企業が多いですが、ボイジャー・セラピューティクスはまさにその段階の企業の一つと言えるでしょう。

2020年に終了した契約があるため、2021年の売上がどうなるか少々不安でもあります。

2-5. 補足:臨床試験のステータス

2-5-1. パーキンソン病治療の臨床保留

ボイジャー・セラピューティクスの研究の中で最も進んでいたパーキンソン病の治療について臨床試験を行っていましたが、MRIでの異常が見つかったとされ、2020年12月に臨床保留通知を受けました。

その後、パーキンソン病治療の”VY-AADCプログラム”を含む4つの研究・プログラムにおいて協定契約を結び出資を行っていたNeurocrine社は、2021年2月、パーキンソン治療プログラム(VY-AADCプログラム)部分のみ契約を終了しました。

2-5-2. ハンチントン病の臨床試験の申請

2020年9月に、ハンチントン病患者を対象とした臨床試験を行うための申請書を提出しています。
FDA(アメリカ食品医薬品局)は一旦申請を保留していますが、ボイジャー・セラピューティクスはFDAから受け取ったフィードバックの解決のために情報をまとめており、2021年前半には対応できる予定だとしています。

2021年4月27日追記
2021年4月26日、FDAに申請が受理されたことを発表しました。今年中には臨床試験を開始する予定です。
このVYTAL第1/2相臨床試験は、ボイジャー・セラピューティクスの開発した”VY-HTT01”の、初期顕在性ハンチントン病患者における安全性と忍容性を評価する用量漸増試験(適した投与量を調べる試験)です。
なお、ハンチントン病とは致死的な遺伝性神経変性疾患で、まだ承認された治療薬はありません。
企業の利益に繋げるにはまだまだ先が長いですが、投資家の期待値が高まる可能性はあります。

3. まとめ

クロとしては、ボイジャー・セラピューティクス(Voyager Therapeutics, Inc.)は「現時点では大きな利益を期待するのは難しい」銘柄だと判断します。

複数社と行っている共同研究の中で治療法を確立・商品化して利益を出せるようにならないと、企業として存続するのは難しいでしょう。
商品の販売を行わず現状の研究開発のみで収入を得るには、決算書の数値上あまり現実的ではありません。現在行っている研究の成功が望まれます。

短期の資金繰りは比較的良い内容で、積極的に研究開発を行っている企業ですが、決算書上まだ利益が出せそうになく、事業の性質上安全性や承認機関に関するリスクも高い銘柄です。
購入を検討される方はリスクヘッジを念頭に置いておかれるのをおすすめ(ポートフォリオ内の比率を抑えるなど)します。

今回の記事はVoyager Therapeutics, Inc.の決算書及びコーポレートサイトなどを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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