バーテックス【VRTX】銘柄分析_市販製品も持つ高収益のバイオ医薬品企業

米国株の年次決算書・銘柄分析
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バーテックス・ファーマシューティカルズ(Vertex Pharmaceuticals Inc /VRTX)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

1. Vertex Pharmaceuticals Inc(VRTX)について

1-1. 業種

バイオテクノロジー、ゲノム、遺伝子編集、メディカル

1-2. 事業の概要

バーテックス・ファーマシューティカルズは、バイオ医薬品を開発している企業です。
現在、嚢胞性線維症の小分子(低分子)医薬品4種類(TRIKAFTA/KAFTRIO、SYMDEKO/SYMKEVI、ORKAMBI、KALYDECO)が市販されています。

嚢胞性線維症は遺伝性疾患の一つで、北米やヨーロッパなど白人に多い病気です。
異常に粘り気の強い粘液が産生されてしまうことで、肺や気管支、消化管などに不調をきたします。
新生児~乳幼児に発症することが多く、症状の悪化は避けられないとされ、現在は予後20年~40年とも言われています。

バーテックスの製品はこういった嚢胞性線維症患者の約90%にアプローチ可能だとしていますが、この製品の効果が期待できない10%の患者に向けて、ゲノム・遺伝子編集、mRNAを利用した研究にも取り組んでいます。

また、現在臨床試験が行われているプログラムも複数あります。
嚢胞性線維症の新しい併用療法や、CRISPRセラピューティクスとコラボレーションしている鎌状赤血球症とベータサラセミアのゲノム編集治療は、現在臨床試験の第3フェーズに到達しています。
鎌状赤血球症やベータサラセミアは現状、ほぼ輸血や移植といった対処しかできない状況なので、このコラボレーションプログラムが成功すれば大きな一歩となります。

他にも、APOL1遺伝子変異による腎臓病、疼痛(痛み)、1型糖尿病の治療に対する臨床試験も行われており、特に疼痛に関しては、オピオイドの代替となり得るかと期待を集めています。(オピオイドは麻薬系鎮痛剤で、乱用や過剰摂取、依存が大きな問題となっている)

1-3. チャート

バーテックス・ファーマシューティカルズの株価チャートは、長期的に見ると、2020年7月頃まで上下しつつも右肩上がりをキープしています。
しかしその後は下落に転じ、しばらくその傾向が続いていました。
2021年11月後半から再び力強く上昇していますが、2022年4月から5月にかけて一度下降し、若干伸び悩んでいるようにも見えます。(2022年6月7日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • ひとまずの資金繰りは問題なし
  • 自己資本比率は75%
  • キャッシュフローも良好

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

VRTX貸借バランス_2021

(単位:百万ドル)

貸借バランスは”安定タイプ”です。

流動比率、当座比率どちらも400%を超えており、ひとまずの資金繰りには問題ありません。

固定比率も38%と低く、問題のない数値です。

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は約75%でかなり高く優秀です。

2-1-3. キャッシュフロー

営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。

事業からキャッシュを生み出せており、営業活動によるキャッシュフローはプラス収支です。

また、財務活動では株式の買戻しを行っており、2021年度は1,425百万ドル分の買戻しが行われました。

2-1-4. 項目まとめ

全体的に安定性は高く、自社株買いによる株主貢献も行われています。

2-2. 収益性

  • 純利益は増減している
  • ROE・ROAは米国平均超え

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

VRTXのROE(自己資本利益率)推移_2021

2021年度のROEは23%あり、米国平均を超えています。
自己資本自体も大きい中、この数値はかなり高いと言えるでしょう。

ただ、純利益は増減しており、2019年度、2021年度はそれぞれ前年度より減少しています。(2019年度に関しては、2018年度の法人税の調整の影響が大きい)
一方、自己資本は毎年増加続きです。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

VRTXのROA(総資産利益率)推移_2021

総資産が年々増えていることもあって、ROAもROE同様の推移をしています。

2021年度のROAは17%で、米国平均の2倍以上の数値です。

2-2-3. 項目まとめ

ROE・ROA共に高く、米国平均以上の収益性があると言えます。

気になる点を挙げるとするなら、純利益が一貫して増えておらず、増減している点くらいです。
しかしこれも一時的な調整や支払いの影響が大きいため、必要以上に気にすることではありません。

2-3. 経営の効率

  • 総資産回転率は低めだが上昇傾向
  • 棚卸資産回転率は高い

2-3-1. 各回転率

VRTXの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率_2021

総資本回転率は約0.6回で、最低ライン(1回)と比較すると少々低い数値です。
現金等を多く保有しており、総資産の約半分がこれにあたります。
なお、ここ数年の総資本回転率は少しずつ上昇傾向にあります。

また、棚卸資産回転率は高い数値です。

2-3-2. 項目まとめ

全体的な回転率は少々低いですが、この数値も上昇傾向にありますし、まずまずといった内容です。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 2021年度の売上成長率は22%
  • 営業利益は3%減少
  • 売上高研究開発費率が40%超えだが、黒字を維持

2-4-1. 売上高と営業利益

VRTXの売上高推移_2021

売上は年々増加しており、2021年度は22%の成長率となりました。
アメリカでは10%の伸び率ですが、アメリカ以外では66%もの売上増加が見られます。
このアメリカ以外の国々での売上増加には、2020年の第3QにEUでKAFTRIOの承認が得られたことも影響しています。

なお、他の製品からTRIKAFTA/KAFTRIOへの切り替えが進んでおり、売上の約75%(2021年度実績)をこのTRIKAFTA/KAFTRIOが占めています。

ちなみに、2022年度第1Q(記事作成時点の最新決算)でも売上成長率は前年同期比22%となっています。

VRTXの営業利益(損失)推移_2021

営業利益は、2021年度に前年度比3%減少しました。
この主な要因は研究開発費の大きな増加で、その大半を占めたのがCRISPRセラピューティクスへの9億ドル(900百万ドル)の前払金です。

また、その他にも臨床試験費用の増加や、パイプラインの多様化に伴う管理費用等の増加があるため、営業費用は大きくなっています。

2-4-2. 研究開発費

売上高は約7,574.4百万ドル、研究開発費は約3051.1百万ドルだったので、売上高研究開発費率は40.3%となります。

科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は5.2%とされているため、平均の8倍近い数値です。

※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所 科学技術指標2019

2-4-3. 項目まとめ

伸び率は少々下がりましたが直近の四半期まで売上は増加を続けています。

また、売上高研究開発費率は高すぎる数値ですが、販売している製品の利益率が高く(粗利率は88%)、収益性も維持されています。

営業利益の減少理由も一時的なものだと考えられるので、2022年度には改善される可能性もあり、更なる成長に期待したい内容です。

3. まとめ

クロとしては、バーテックス・ファーマシューティカルズ(VRTX)は市場の様子を見つつ購入を検討したい銘柄です。

既に一部の製品を販売までこぎつけており、その利益率は非常に高いです。
研究開発に多額の資金を投じながらも収益性を維持しており、現状は良い循環を生み出していると言えます。

臨床試験中の治療薬についても期待したいものが多く、治験の結果次第という側面はありますが、今後も注目したい銘柄です。

ただ、今後もしばらく金融引き締め議論や特殊な世界情勢が続くと見られるので、購入量を分割し、タイミングを見つつ保有したいと思います。

今回の記事はVertex Pharmaceuticals Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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