大幅下落のアップスタート【UPST】今買っていいのか

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今回は、株価の下落が続いているアップスタート・ホールディングス(Upstart Holdings Inc / UPST)について、なぜこんなに株価が下がっているのか、今が買い時なのか、期待できる点はあるのか、まとめていきます。

1. アップスタートの概要と株価

アップスタート・ホールディングスは、AIによるクラウドベースの融資プラットフォームを提供する企業です。
現在(記事作成時点)は消費者ローン、自動車ローンでサービスを提供しており、融資の際の審査を行うことで手数料収入を得ています。

アップスタートの銘柄分析はこちらにあります。

そんなアップスタートの株価は一時400ドルを超えるまで上昇しましたが、記事作成時は約40ドルとなっており、最高値の10分の1にまで下落しています。

UPSTの2022年6月10日チャート(約一年間)

2. アップスタートの下落理由

一体なぜ、アップスタート・ホールディングスの株価はこんなに下落したのでしょうか。

2-1. 金利上昇

アップスタートの一番の逆風とされるのが、金融引き締め政策による金利上昇です。
インフレが高止まりしていることもあり、引き締め施策が急ピッチで実施されています。

2-1-1. 利ザヤは収益に直結しない

一般的に、金融銘柄にとって金利の上昇は追い風になると言われていますが、アップスタートは違います。
アップスタートは貸付・融資をほとんど行っておらず、ローンの審査・承認プラットフォームの利用に対して手数料を得るビジネスモデルです。

従って、金利の変動で利ザヤが大きくなっても、アップスタートは恩恵を受けられません。

2-1-2. 借入需要の低下の可能性

更に現在、本来は金利上昇がプラスに働くと言われる金融系銘柄の株価も上昇できていません。
利ザヤの拡大というメリット以上に、リスクやデメリットを感じている投資家が多いようです。

そのリスクの一つとして、インフレや急激な金利上昇(短期金利含む)による不況、借入需要の低下が挙げられます。

元々、金利上昇は金融銘柄にとってのメリットとなる一方で、一般的な企業にとっては借入がしづらくなり、資金不足に繋がるといったマイナスの影響を及ぼす傾向にあると言われています。
今回、同様に借入しづらい傾向が、アップスタートのターゲットである個人消費者にも強く出ているのではないかと考えられます。

この借入需要の低下はプラットフォームの利用減少につながり、アップスタートにとって大きな打撃となります。
また、金利上昇は貸し付け側のリスクが増加することにもつながるので、審査が厳しくなり、結果的に承認率が下がるといった側面もあります。

2-2. ガイダンス引き下げ・成長率低下

こういった金利上昇、そして景気の落ち込みなどを踏まえ、アップスタートは通年ガイダンスを引き下げました。

2022年度の売上ガイダンスは当初14億ドル(1,400百万ドル)とされていましたが、修正後は12億5,000万ドル(1,250百万ドル)とされ、11%の引き下げとなっています。
2021年度と比較した成長率は、引き下げ前が65%、引き下げ後は47%です。

また、2022年度第2Qについては、売上が第1Q(前四半期)を若干下回り、利益(non-GAAP)は約半分になる見込みであると発表しています。
ちなみにこの売上見込みは、ガイダンスの上限値であっても、前年同期比57%の成長率にとどまります。

これらのガイダンス内容と2021年度の成長実績との差は非常に大きく、期待が離れる一因となりました。

2-3. 自社で抱えるローンの増加

本来アップスタートは自社での融資をほとんど行っていませんでしたが、ここにきてローン残高が急増しており、これをリスクの増加と捉える動きがあります。

ある程度のローン残高の増加は、自動車ローンへ参入した影響(一件あたりの金額が大きくなるため)だと考えることができますが、2022年度第1Q末時点の残高は、前四半期末の252百万ドルから598百万ドルへ急激に増加しました。

”ほとんどは研究開発(新商品のテスト)のためのローン残高だが、一部は金利の急上昇で利益が見込めず、自ら保有することにしたローンだ”といった旨の発言もあり、これまでの”仲介に徹することでリスクを回避する”というビジネスモデルが少々揺らいでしまっているのは事実です。

2-4. これまでの過度の期待の反動

2021年度の1年間で、売上は264%アップ、営業利益は1,097%アップという大きな成長を遂げたアップスタート・ホールディングスは、ネット証券の台頭や金融施策などによる投資ブーム、そして低金利によるグロース銘柄への注目に後押しされ、株価を大きく上昇させました。

また、この事業の急成長自体が、金融緩和施策、低金利といった経済的要因を追い風としたものでもあります。(経済施策がローンの返済を補助する形となり、借入需要が強まっていた)

しかし、この状況は一変しました。
金利が上昇し、借入需要の低下が見込まれ、更に株式市場全体の流れとして、グロース銘柄からバリュー銘柄への資金の移動が発生しています。

割高になっていた株価が急激に見直されたこと、そして同時に、追い風の状況から一転して逆風にさらされると予測されることも、株価を押し下げた要因です。

2-5. AIアルゴリズムへの不安

アップスタートの融資プラットフォームを支える審査・承認AIは、これまで確かに成果を上げてきました。
しかしこれは、前述した特殊な状況下(景気を良くするための施策が実施され、借入需要が強まり返済もしやすかった)でのことで、実はまだ本格的な不況を経験したことがありません。

初めての不況、つまりローン返済の延滞・貸倒れ(デフォルト)が発生しやすい状況において、AIがどこまで精度の高い審査を行えるのかという点は、アップスタートの今後の提携銀行数(2022年度第1Q時点では57行)を左右する重要な課題であり、投資家にとって不安を感じる部分です。

3. アップスタートは購入するべきか

株式市場全体が不安定な上、現状は特に短期的逆風が強いと考えられるため、クロとしては今すぐ大量に購入するのはおすすめしません。

しかし、期待できる点として「堅実な決算を出し続けていること」「住宅ローンや中小企業ローンなど、事業拡大の余地が十分にあること」が挙げられます。

決算については、これまでより弱気ではあるものの、年間を通じて成長を続ける見込みとなっています。

そして事業拡大については、住宅ローンに参入を果たした場合、現在既に展開している消費者ローン・自動車ローンと合わせて、最大市場規模は約5兆4,000億ドルにもなるとされています。
また、中小企業向けのローンも6,440億ドル規模だと予測され、事業を広げるための市場は十分あります。
※市場規模はThe Motley Fool記事を参照:https://www.fool.com/investing/2022/05/10/down-60-today-is-upstart-stock-a-buy-after-its-spe/(2022年6月9日閲覧)

クロとしては長期的な株価上昇に期待していますが、経済の動向や今後の決算(成長率、提携銀行数、自社で請け負うローン残高の推移など)、そしてアップスタート始まって以来の不況にAIが対応できるのか、今後も見極めていく必要があると考えます。

記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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