アップスタート【UPST】銘柄分析_AI融資プラットフォーム企業の今後は?

米国株の年次決算書・銘柄分析
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アップスタート・ホールディングス(Upstart Holdings Inc / UPST)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待※短期的には厳しい

それでは見ていきましょう。

1. Upstart Holdings Inc(UPST)について

1-1. 業種

フィンテック、AI、金融(融資)

1-2. 事業の概要

アップスタート・ホールディングスは、AIを用いたクラウドベースの融資プラットフォームを提供する企業です。
提携銀行はこのプラットフォームを利用することで、高水準の審査の自動化を実現することができます。

現状、アップスタートのAIプラットフォームは69%の審査を自動的に処理することが可能で、時間やコストの削減につながっています。
その審査には1,500以上の変数が用いられており、通常の審査よりも多くの消費者が、より低金利で融資を受けられるようになったとされます。

もちろん、融資を受けられる消費者が増えても延滞率は悪化しておらず、AIによる審査の成果が表れています。
(内部調査によると、承認率はそのままで、損失率を約75%削減できることがわかったとしている)

また、アップスタートは審査後のローンのほとんどを他の機関へ分配し、仲介に徹している点も特徴です。
2021年度は売上の94%(801百万ドル)が手数料収入となっており、アップスタート自身のローンは2021年度末時点で252百万ドルしかありません。
そのため、貸倒れに備える引当金を確保せずに済むのです。

提携先の中ではクロスリバー銀行が非常に大きな割合を占めており、同行からの手数料収益は2021年度の売上の56%にもなります。
この極端な偏りは改善されてきていますが、未だその割合はかなり大きい状態です。

1-3. チャート

アップスタート・ホールディングスの株価チャートは、2021年8月の決算発表辺りから急激に上昇し始め、一時は400ドルを超える程に高騰したものの、その後は下落に転じています。
金利上昇などの逆風もある中でのガイダンス引き下げ、過熱し過ぎていた期待値なども手伝って、現在は40ドル台となっています。(2022年6月9日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 約10億ドルの現金を保有
  • 自己資本比率は44%
  • キャッシュフローは問題なし
  • 2022年度第1Qでは
    キャッシュフローに気になる点アリ

2-1-1. 資本の比率

自己資本比率は約44%と高めの数値です。
借入による資金調達を行ったため、前年度より19ポイント低下しました。

2-1-2. キャッシュフロー

営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。

2020年度から事業が黒字となったこともあり、営業活動によるキャッシュフローはプラス収支です。

また、財務活動では資金調達を行っており、その大部分は借入によるものです。

2-1-3. 項目まとめ

事業から現金を生み出せており、安定性には問題ありません。

ただ、2022年第1Q(記事作成時点の最新決算)では営業活動によるキャッシュフローがマイナス収支となっています。
これには自社で抱えるローン(売却目的となっている)が増えたことが影響しているようなので、今後の変動には注目しておきたいです。

2-2. 収益性

  • 2020年度から黒字に
  • ROE・ROAは米国平均を達成

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

UPSTのROE(自己資本利益率)推移_2021

黒字となった2020年度から、ROEもプラスになっています。
2021年度の実績は米国企業の平均とされる数値です。

また、IPOした2020年度以降、自己資本は急激に増加しています。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

UPSTのROA(総資産利益率)推移_2021

ROAもROE同様の推移をしています。

総資産が急激に増えた2021年度も、米国平均程度のROAを達成しています。

2-2-3. 項目まとめ

黒字となってまだ2年ですが、既に米国平均程度のROE・ROAを達成しています。
金融企業の側面もありますが、この数値を見ると、一般的な企業と変わらない収益性を持っていることがわかります。

2-3. 経営の効率

  • 総資産回転率は0.44回と低め
    …保有現金が多い
    …ローン債権保有も若干の影響アリ

2-4. 成長している・していく企業か

  • 2021年度の売上は264%成長
  • 2021年度の営業利益は1,097%の成長
  • 2022年度はガイダンス引き下げアリ
  • 売上高研究開発費率は平均の3倍

2-4-1. 売上高と営業利益

UPSTの売上高推移_2021

売上は年々増加していますが、2021年度の264%という成長率が驚異的です。
この売上の94%がプラットフォーム利用に際して得られる手数料収入で、残りは受取利息などで構成されています。

取引件数は1,314,591件となり、サービスの価格自体も上昇したとされています。

また、2022年度第1Q(記事作成時点の最新決算)の売上は、前年同期比156%増加して310百万ドルとなっています。

UPSTの営業利益(損失)推移_2021

売上の伸びに牽引され、2021年度の営業利益は1,097%の成長を達成しました。

営業費用としてはセールス・マーケティング費用が大きな割合を占めていますが、事業の急成長に伴う人員追加、それによる人件費増加は各費用(カスタマーオペレーション、研究開発、一般管理費など)で起きています。

また、2022年度第1Q(記事作成時点の最新決算)でも、営業利益は増加を続けており、前年同期比124%の成長を見せています。

2-4-2. 研究開発費

売上高は約848.59百万ドル、研究開発費は約134百万ドルだったので、売上高研究開発費率は15.8%となります。

科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は5.2%とされているため、平均の約3倍の数値です。

※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所 科学技術指標2019

2-4-3. 項目まとめ

2021年度は非常に大きな成長を遂げました。
2022年度第1Qは2021年度ほどではないですが、それでも3桁の成長率を維持しています。

ただ、インフレや金利上昇などの経済的背景に伴い、2022年度のガイダンス引き下げ(当初のアナウンスから11%の売上削減。この通りであれば通年の成長率は47%となる見込み)があるなど、成長の鈍化は避けられない状況です。

景気の回復といった外的要因、そしてAIの精度向上、事業の拡大などによる成長に今後も期待していますが、短期的には逆風の強い状況となりそうです。

3. まとめ

クロとしては、アップスタート・ホールディングス(UPST)には期待していますが、購入タイミングを見極めたい銘柄です。

実際に貸し付けるよりもリスクの低いビジネスモデル、そして既に優れた成果を上げ始めているAIの能力に、今後も期待しています。
現状は個人向けローン、自動車ローンを手掛けているアップスタートですが、住宅ローンや中小企業向けローンなど、事業を拡大する余地はまだまだあります。

アップスタート自身の引受ローンも増加している点は少々気になるので今後の動きを追っていくつもりですが、自動車ローンも扱うようになり、一件あたりの金額が大きくなっていると考えられるため、ある程度のローンの増加は仕方ないとも受け取れます。

ただ、経済的に強い逆風が吹いていることは間違いないので、今すぐ保有するつもりはありません。

今回の記事はUpstart Holdings Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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