テスラ(Tesla Inc / TSLA)の決算書(10-K)・銘柄分析内容を、2021年決算を踏まえた内容に更新しました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. Tesla Inc(TSLA)について
1-1. 業種
自動車製造(EV)、耐久消費財、エネルギー貯蔵・販売
1-2. 事業の概要
テスラはEV(電気自動車)の先駆けメーカーです。
2021年通年では製造台数930,422台(前年比83%増加)、納入台数936,222台(前年比87%増加)となり、更に大きく規模を拡大しました。
既にセダン・SUVの複数のモデルがラインナップされていますが、他にもEVトラック、ロードスター(スーパーカー)などが発表されています。
また、自動運転技術にも力を入れており、独自のオートパイロット、FSD(Full Self-Driving)オプションを提供しています。
現在はあくまで運転支援システムの範囲にとどまっていますが、将来的には自律型のライドヘイルネットワーク(”ライドヘイル”は”車の呼び止め”の意味。車両の保有者が、自分の使わない時間に”自動運転タクシー”として他者に利用してもらうことで、収益を得られるネットワーク)の確立を予定しています。
エネルギー事業では、エネルギーを貯蔵しておける定置型蓄電池の提供(日本でも北海道に大型の蓄電池発電所を建設する予定)、ソーラールーフなどの太陽光発電システムの販売を行っています。
また、電力の小売事業へ参入する動きもあります。
他にも2019年から顧客向けの保険商品を発売するなど、EVを主軸としながら様々な展開を見せている企業です。
また、CEOであるイーロン・マスク氏もペイパル(正しくは前身となる会社)創設メンバーの一人であり、宇宙開発企業スペースXを創設しこちらでもCEOを務めるなど、非常に有名な人物です。
また、半導体不測の局面を切り抜けて売上を伸ばした点も評価されています。
1-3. チャート
テスラの株価チャートはこのようになっています。
2020年頃からじわじわと株価が動き始め、その後どんどん上昇していきました。
しかし、2021年11月頃からはイーロン・マスク氏の株式売却騒動や金融引き締め議論などの影響を受け、大きな上下を繰り返しています。(2022年1月27日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- ひとまずの資金繰りは問題なし
- 自己資本比率は49%
- キャッシュフローも問題なし
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは”ギリギリ運用タイプ”です。
ただ、流動比率は約138%、当座比率は約100%と、必要最低限の流動性は確保されています。
固定比率は116%と高めですが、純資産と固定負債でまかなえているのであまり問題ありません。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は49%と高い数値です。
2-1-3. キャッシュフロー
2021年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。
設備への投資などが大きいですが、事業から多くのキャッシュ(現金)を生み出せているため、健全に回っています。
また、債務返済にも多額の資金が使用されています。
2-1-4. 項目まとめ
ひとまずの資金繰りには問題ありません。
流動性の比率が昨年より下がってはいますが、許容範囲内です。
キャッシュフローは良好です。
2-2. 収益性
- 2020年に黒字に転じる
- 2021年のROE・ROAは米国平均到達
- 純利益は大きく増えている
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
ROEのマイナス値を減らし、2020年にプラスへ転じました。
自己資本は増加していますが、純利益も大きく伸びており、2021年は米国平均のROEに達しました。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
ROAもROE同様に上下しています。
こちらも米国平均~平均以上の数値です。
2-2-3. 項目まとめ
米国平均~平均以上の収益性を持っており、良好だと言えます。
2-3. 経営の効率
- 売上増加で回転率は上昇
- 棚卸資産回転率は製造業の平均程度
2-3-1. 各回転率
資産は年々増加していますが、それを上回る勢いで売上が成長しており、回転率は昨年よりも上昇しています。
総資本回転率は1回に満たない数値ですが、おおむね許容範囲と言えるところまで上がってきました。
棚卸資産回転率は製造業の平均上位の数値です。
2-3-2. 項目まとめ
良い数値だとも言えませんが、許容範囲内かつ上昇傾向にあります。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上・営業利益が大きく成長
- 2020年はコロナ感染拡大で一時的な生産停止あり
- 売上高研究開発費率は平均を超える
2-4-1. 売上高と営業利益
売上は年々増加しており、2021年は前年比71%の成長を達成しました。
生産稼働率は上昇しているものの、サプライチェーンの問題があるとしており、生産能力を100%発揮できていない状況が2022年まで続くという予測を述べています。
ただ、数年先まで納入台数は平均50%の成長を続けるという発言や、新しい工場が稼働前の最終段階に入っているなど、明るい見通しもありました。
2020年から営業利益が発生し、2021年は前年比227%もの成長率となりました。
昨年に続き費用も増加していますが、粗利率、営業利益率は上昇しています。
また、エネルギー事業は2021年も赤字となりました。
2-4-2. 研究開発費
売上高は約53,823百万ドル、研究開発費は約2,593百万ドルだったので、売上高研究開発費率は4.8%で、平均以上の数値です。(科学技術・学術政策研究所によると※11万人以上の従業員規模の平均は3.5%とされている。2021年のテスラの従業員は約99,000人)
昨年とほぼ変わらない比率となりました。
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
柱となるEV事業が大きく売上を伸ばし、2021年は大きな成長を達成しました。
サプライチェーンの問題は気になりますが、今後数年間は成長が続くという見込みが示されており、今後も期待したい内容です。
2-5. 2021年第4Q
今回、テスラの第4Q決算の個別記事は作成していないため、こちらに概要をまとめます。
2-5-1. 売上・利益
売上17,719百万ドル(約177億ドル)、EPS 2.54ドルで、アナリスト予想をクリアしています。
売上は前年同期比65%の成長となりました。
営業利益率は前四半期に引き続き14.7%と高く、最終的な純利益は2,321百万ドル(約23億ドル)で、前年同期比760%も増加しています。
2-5-2. 製造台数・出荷台数
先日速報も出ていましたが、2021年第4Qの最終的な数値は、製造台数305,840台、納入台数308,650台となりました。
どちらの台数も、前年同期比で70%程度増加しています。
3. まとめ
今回の2021年決算を見た結果、クロとしては、テスラ(TSLA)には引き続き期待をしたいと思います。
新しい工場が稼働するようになれば、まだまだ生産・納入台数を伸ばすことが可能ですし、収益性が高く、利益をしっかり確保できています。
ただ、テスラの人気が高いとはいえ、他の自動車メーカーのEV進出も進んでいるので、市場の動きはチェックしておきたいです。
今回の記事はTesla Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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