テラドック・ヘルス(Teladoc Health, Inc / TDOC)に代表される遠隔医療・テレヘルス市場は、2020年のコロナ感染拡大によって一気に需要と関心を高めました。
テラドック・ヘルスの株価はコロナ前は100ドル前後でしたが、2020年4月末には200ドルに達し、その後上下を繰り返しつつも2021年2月には一時300ドルをつけていました。
今回は、市場最大手のテラドック・ヘルスと、2020年にIPOしたアメリカン・ウェル(American Well Corp / AMWL)に焦点を当てて紹介していきます。
1. 遠隔医療・テレヘルス市場の将来性
アメリカのコンサルティング大手のマッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company, Inc.)が2020年5月に発表した論文では、米国の医療費(在宅医療や外来など)のうち、最大で約2,500億ドルが遠隔医療市場に移管され得ると予想されています。
遠隔医療・テレヘルス市場のコロナ感染拡大以前の年間総収益は約30億ドルと推定され、市場の将来性は十分にあると考えられます。
ちなみに遠隔医療最大手であるテラドック・ヘルスのコロナ感染拡大前の売上高(2019年売上高)は約5.5億ドル、コロナ感染拡大の影響を受けた2020年の売上高は約11憶ドルでした。
また、遠隔医療は患者と医師にとって便利なだけでなく、保険会社にとっても”外来診療より診察費が安く済む”というメリットがあります。
2. 注目企業
競合も多くいる市場ですが、ユーザーを多く抱えているテラドック・ヘルスとアメリカン・ウェルの2社に注目しています。
2-1. テラドック・ヘルスの概要
ユーザー数:有料会員数5,100万人(+ビジター2,200万人)
対象国:米国+米国外(2020年の収益のうち、88.4%は米国内で発生)
2020年売上高:約11億ドル
提携先の多さでは他社を圧倒しており、グローバルな事業展開を行うため多言語に対応している。
買収を繰り返しており、遠隔医療の関連分野を広くカバーしている。
(テラドック・ヘルスの決算書を分析した記事がこちら↓にあります)
2-2. アメリカン・ウェルの概要
ユーザー数:8,000万人
(ただし総合的な売上はもちろん、サブスクリプション収入もテラドックの方が多い)
対象国:米国
2020年売上高:約2.5億ドル
2020年IPO(上場)。Amwell(アムウェル)というブランドで事業を展開し、ユーザー数ではテラドックを超えている。
Googleから1億ドルの出資を受けており、JD Powerの満足度調査では1位を獲得した。
診察ブースとなる”キオスク”や、リモート診断を拡張する周辺機器(診断デバイス。聴診器やパルスオキシメーターなど)も提供している。
(アメリカン・ウエルの決算書を分析した記事がこちら↓にあります)
2-3. 2020年の成長
2020年の売上高が、テラドックは2019年の約2倍、アメリカン・ウェルは2019年の約1.6倍に増加しました。
ただし、損失額も増加しているため、赤字で決算を終えています。(なお、2020年に限らず赤字続き)
サブスクリプションの収入よりも診療に伴う収入が大幅に増加しており、それによる費用もかさんだようです。
2-4. Amazonが参入予定
2021年3月17日、Amazonが「Amazon Care」を全米に拡大すると発表しました。
既に試験運用で成果を得ており、2021年夏のサービス拡大を目指す予定です。
「Amazon Care」は専用アプリで医療相談を行える他、必要に応じて医療従事者や処方箋が自宅に派遣される仕組みになっています。
3月17日時点で既に、ワシントン州での他企業へのサービスを開始しており、今後も順次展開していく予定です。
3. 株価について
3-1. 株価純資産倍率(PBR)
現在(2021年4月16日時点)の株価は、テラドックが192ドル、アメリカン・ウェルが17ドルです。
どちらも赤字でPERが使えないので、株価純資産倍率(PBR)で比較してみます。
- テラドック・ヘルスPBR … 1.78※
- アメリカン・ウェルPBR … 3.32
2020年末の資産から見た場合、PBRの数値の低いテラドック・ヘルスの方が割安です。
3-2. ※PBR補足
テラドックは2020年に行った買収で純資産を約15倍に増加(その大半がのれん)させています。
この影響で、2019年は14ドル程度だった1株当たり純資産(BPS)が、2020年は約105ドルまで急上昇しました。
1株当たり純資産(BPS)が高いほどPBRは割安な結果になるため、今回の1.78という結果は過信できません。
なお、アメリカン・ウェルもIPOで資産が約3.5倍に増加(大半は現金同等物として保有)していますが、発行済株式数が増えたことで1株当たり純資産(BPS)はむしろ下がっています。
4. まとめ
売上高や提携企業・団体の多さはテラドック・ヘルスが断トツの結果となっています。
しかし、アメリカン・ウェルも独自の提携・サービスを打ち出しており、ユーザーからの支持があることもわかりました。
クロとしては、どちらに投資したいかといえばアメリカン・ウェルです。
ユーザー、そしてGoogleの支持もありますし、キオスクや周辺機器(オンデマンド診断を可能にする聴診器などのデバイス)の取り組みに期待しています。
ただ、Amazonの参入や、既に株式市場がコロナ後の社会を見据えていることから(遠隔医療市場は今後も成長しそうですが)一旦様子を見たいと思っています。
なお記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
コメント