テラドック【TDOC】銘柄分析_遠隔医療のパイオニア

米国株の年次決算書・銘柄分析
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今回はテラドック・ヘルス(Teladoc Health, Inc / TDOC)の決算書(10-K)やニュースについて分析しました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

1. Teladoc Health, Inc(TDOC)について

1-1. 業種

健康&メディカル、医療施設、サービス

1-2. 事業の概要

テラドック・ヘルスは遠隔医療のリーディングカンパニーです。
インフルエンザなどの突発的な病気、慢性的・複雑な症状、精神医療など、幅広い分野での遠隔医療サービスを電話やビデオ会議のソフトウェアを使って提供しています。

自宅のテレビに接続するだけで簡単に仮想ケア(診察や薬の処方も可能)を受けられるデバイスはもちろん、病院内に設置できるカメラ付きカートや手術室用の広角レンズ搭載機器なども揃えています。
また、グローバルな展開を目指し、多言語に対応していることも強みです。

5,100万人を超えるユーザー(有料会員数)は24時間365日いつでも専門的な診療を受けることができ、その接続までの時間は、米国だと平均10分以内とされています。

1-3. チャート

テラドック・ヘルスの株価チャートはこのようになっています。
決算での予想以上に大きな損失、Amazonの遠隔医療への本格参入発表などが原因となり、株価はlivongo買収を発表した頃の水準まで下がっています。(2021年4月14日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 短期の資金繰りは問題なし
  • 自己資本比率は高い
  • キャッシュフローは良くない状態が続いている

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2020年決算書におけるTDOC貸借バランス

(単位:百万ドル)

貸借バランスは“おおむね安心タイプ”です。
(貸借バランスのポイントについては、こちら↓の記事で紹介しています)

2020年の流動比率は約320%、当座比率も約290%あるため、短期の資金繰りは問題ありません

また、固定比率は約105%で特に問題ありません。
ただ、買収を繰り返したことにより固定資産は非常に大きくなっています。
(貸借貸借表の各比率については、こちら↓の記事で詳しく紹介しています)

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は約90%と非常に高い数値です。
ただ、これは買収に伴って大量の株式発行を行った(livongo株をTDOC株へ交換した)ことが大きく影響しており、株式価値の希薄化にもつながっています。

2-1-3. キャッシュフロー

キャッシュフローは、営業活動マイナス、投資活動マイナス、財務活動プラスで、不安な組み合わせです。
多少の変動はありますが、ここ数年は同様の組み合わせが多く、また投資活動・財務活動の金額が大きくなっています
これは、投資活動では企業の買収、財務活動は社債の発行などが要因です。

過去5年間のフリーキャッシュフローは、ほぼマイナスです。
(キャッシュフロー計算書の注目ポイントなどを、こちら↓の記事で紹介しています)

2-1-4. 項目まとめ

貸借バランス、短期の資金繰りは問題のない内容です。
一方で、キャッシュフローは不安になる内容が続いており、その内容から資金調達と買収を何度も行っていることがわかります。
固定資産の大きさや、2020年の自己資本の増加(livongo買収の際、TDOC株へ交換する手法を取ったため)など全体的に買収の影響を大きく受けた内容です。

2-2. 収益性

  • 赤字が続いている
  • 2020年の自己資本・総資産増加によって数値が変動
  • 2020年はコロナによって需要拡大
    →事業拡大のための費用が大きかった

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

TDOCのROE(自己資本利益率)推移

赤字が続いているため、ROEもマイナスです。
2020年に数値が改善しているように見えますが、これは同時に自己資本が約15倍に増加したためで、実際は2019年の約5倍の純損失を出しています。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

TDOCのROA(総資産利益率)推移

ROAの数値は、主に総資産に連動して動いています。
純損失は2020年以外あまり変化が無く、総資産が増加することでROAのマイナスが小さくなっています。

2020年はROEと同様で、純損失の増加よりも総資産の増加が大きいため、マイナスの値は小さくなりました。

2-2-3. 項目まとめ

赤字が続いており、まだ収益性があるとは言えません

ただ、2020年はコロナ感染拡大の影響もあり、遠隔医療の需要が強まりました。
純損失だけでなく売上も増加(ただし2019年の約2倍程度)していますし、買収に伴う費用以外に人員補強などの事業拡大費用も計上されています。

今後これらが活かされれば、売上の更なる増加が見込めるでしょう。

2-3. 経営の効率

  • 資産の量から見ると売上高が全然足りていない
  • 棚卸資産はひとまず問題なし

2-3-1. 各回転率

TDOCの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率

総資本回転率は0.06回固定資産回転率は0.07回です。
これは非常に低く、資産に対して売上高が全く足りていない状態です。
なお、それ以前もあまり良い数値ではありませんでした。

棚卸資産回転率は約20回で、問題ないと考えられます。

2-3-2. 項目まとめ

売上高が足りず、効率は良くない状態です。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上は増加を続けている
  • 2020年はコロナの影響で需要増加
  • 買収関連と事業拡大費用で純損失が急増
  • 売上高研究開発費率は平均の約3倍

2-4-1. 売上高と営業利益

TDOCの売上高推移

2020年はコロナの感染拡大が追い風となって、売上が約2倍に増加しました。

TDOCの営業利益(損失)推移

2020年の損失は2019年の約5倍となりました。
これは買収に伴う費用の増加が一番の要因ではありますが、遠隔医療の需要拡大による人員補強などの費用がかかったことも影響しています。

2-4-2. 研究開発費

2020年の売上高は約1,094百万ドル、研究開発費は約165百万ドルだったので、売上高研究開発費率は約15%です。
科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員数を抱えた米国企業の平均は5.2%なので、平均の約3倍の比率で資金を投じていることになります。

※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所 科学技術指標2019

2-4-3. 項目まとめ

売上高が順調に増加を続けています。
買収など事業拡大のための投資も行っているので、これらの資産を活用できれば更なる成長が見込めるでしょう。

ただ、livongo買収は総資産を約10倍にするほどの大きなものでした。
この投資分を回収できるほどの成長は、ハードルがかなり高そうです。

2-5. 補足:livongo買収の影響

2020年にテラドックが買収したlivongoは、スマートデバイスや人工知能(AI)の分析を通じて、高血圧や糖尿病などの慢性疾患を持つユーザーの健康をサポートする技術・サービスの提供を行ってきた企業です。

テラドックは更に包括的なヘルスケアテクノロジーをユーザーに提供できるようになりましたが、この買収が発表された際、株価が約20%(約55ドル)下落するほど株主には不評でした。

2019年末の純資産は507百万ドルで、買収時点では約10億ドル程度の純資産を持っていた(テラドックの決算より)とされるlivongoですが、買収額は約140億ドルにも及び、その多くが既存のlivongo1株をテラドック0.592株へ転換するという方式を取ったことで、既存のテラドックの株式価値が希薄化しました。(新たに6,000万株以上を発行)

また、自己資本は約15倍(約15,900百万ドル)、総資産は約10倍(17,800百万ドル)に急増しています。
2020年の売上高は約1,094百万ドルでしたが、この資産規模ではまだまだ足りない売上高だと言わざるを得ません。

【2022年5月18日追記】
2022年3月決算において巨額ののれんの減損が発生したため、こちら↓でくわしく解説しています。
■テラドックの2022年4月の減損と巨額の損失について

3. まとめ

クロとしては、テラドック・ヘルス(Teladoc Health, Inc)は「買収による資産増加と今後の社会情勢が気になる(様子見)」銘柄だと判断します。

遠隔医療の幅広い分野をカバーする企業として分野の先頭を走り続けているテラドック・ヘルスですが、まだ赤字の段階で、資産や発行済株式が膨らみ過ぎているのが少々不安です。livongoの純資産と買収額の差額約135億ドルはのれん(固定資産)として計上されており、今後減損が発生した場合は、利益を圧迫してしまうことが懸念されます。

また、コロナの感染拡大も収束に向かうだろうとされている株式市場で、今後どの程度の期待が集まるのかという懸念点もあるので、クロは一旦様子を見たいと思っています。

ただ、世界的に遠隔医療の需要が拡大した際には、既に実績を積み多言語に対応しているテラドック・ヘルスは確実に有利ですし(現時点では収入の大半を米国が占めている)多くの買収によって遠隔医療の様々な分野を網羅している強さはあります。
短期の資金繰りは問題がなく負債も少ないのも良い点です。

アメリカン・ウェルとの比較や市場についてまとめた記事もこちら↓にあります)

今回の記事はTeladoc Health, Incの決算書及びコーポレートサイトなどを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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