2021年11月30日、FRB(連邦準備制度理事会)の議長であるパウエル氏から”インフレは一時的なものではない”という見方を示す発言がありました。
この発言を受けて株価は急落しています。
今回はこの発言やテーパリング、前回FOMCでの取決めの概要、最近の株価乱高下についてまとめます。
1. これまでのテーパリング見通し
テーパリング(金融緩和の縮小)は、11月のFOMCで開始が決定され、実際に11月から実施されています。
新型コロナの感染拡大による経済への打撃を受けて、FRBはこれまで国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券を月400億ドル購入する量的緩和施策を行っていました。
11月に実施されたFOMCでは、これを11月購入分から、国債100億ドル、住宅ローン担保証券50億ドルずつ減らしていく方針で合意しています。(11月の買い入れ量は国債700億ドル、住宅ローン担保証券350億ドルに、12月は国債600億ドル、住宅ローン担保証券300億ドルになるという文言も発表した)
このペースが維持されれば2022年半ばにはテーパリングが完了し、政策金利(FF金利/フェデラル・ファンド金利)の目標引き上げの議論ができるようになるという見方でした。
FOMCの議事録が公開されると、一部の委員が”より速いテーパリング完了”を求める主張をしていたこともわかりましたが、インフレについては”一時的なものだが、予想よりも長期化する可能性がある”という発言に止まっていました。
2. 11月30日のパウエル氏の発言
上院銀行委員会の公聴会でのパウエル氏の発言が、同日の株式市場に大きく影響を及ぼしました。
2-1. インフレは一時的ではない
インフレ率は2022年にかけて鈍化する予想だが、サプライチェーン、エネルギー価格などの押し上げ要因は来年も続くと思われるとし、インフレは一過性のものではないという見方を明言しました。
2-2. テーパリング早期完了を議論
次回のFOMCで、テーパリングの加速(数ヶ月程度早く完了させる)を検討すべきだという発言もありました。
次回のFOMCは12月14日~15日に予定されています。
2-3. その他
WHO(世界保健機関)が「懸念すべき変異株」に指定した新型コロナの新しい変異株”オミクロン株”は変わらずリスクであるとしています。
デルタ株より大きな脅威になり得るとも言われる今回のオミクロン株に対し、アメリカは既に一部のアフリカ諸国からの渡航を制限し、ワクチン接種を促すなどの対策を取っていますが、実際この変異株にどの程度の脅威があるのかを知るには、まだまだ解析の時間が必要です。
3. 株価の推移
以下のチャートは、11月24日から5日間のものです。
11月24日頃を起点として、株価の変動率を表しています。
ローソクで示されているのがS&P500、オレンジ色のラインがナスダック指数、水色のラインがダウ指数です。
乱高下していますが、ナスダック指数の方が激しい動きをしています。
なお、11月24日が11月に行われたFOMCの議事録発表、11月26日が新型コロナ変異株オミクロンの報道、11月30日~12月1日にかけてがパウエル議長の発言のあった時期です。
FOMCの議事録を受けてダウ指数は上昇気味でしたが、変異株の報道で急落し、少々持ち直したところで更にパウエル議長の発言によって下降しています。
一方ナスダック指数は議事録を受け一旦下落した後じわじわと持ち直し、変異株報道後は下落したものの週末をはさんで急上昇しました。
ただ、今回のパウエル議長の発言があった直後はダウ指数よりも勢い良く下がっています。
4. まとめ
新たな変異株”オミクロン株”出現の影響を受けて、一部テクノロジー株に注目が集まっていましたが、今回のパウエル議長の発言を受けて更にボラティリティが高まることが予想されます。
ここ数日で下がっている長期金利ですが、パウエル議長の発言で急上昇しています。もしこのまま上がればグロース系の銘柄には厳しい地合いとなります。
また、オミクロン株の解析結果が待たれる日々である一方、12月10日のCPI発表、その後14日~15日のFOMCと、市場に影響を及ぼしそうな要素がいくつもあります。
クロとしては、現状は新たな購入は控え、地合いを見つつ損切り・利確となる売却を行うつもりです。
記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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