ストーン【STNE】銘柄分析_ブラジルで顧客に密着したサービスを提供するフィンテック企業

米国株の年次決算書・銘柄分析
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ストーン(StoneCo Ltd / STNE)の決算書分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。

■この記事の単位は米ドルではなくブラジルレアルとなっています。
 2021年9月25日時点のレートは、1レアル=0.19ドルです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

2021年度通年・第4Qの速報はこちら

1. StoneCo Ltd(STNE)について

1-1. 業種

フィンテック(金融テクノロジー)、テクノロジーサービス

1-2. 事業の概要

ストーンは、テクノロジーが急成長するブラジルで、店舗・ECを問わないオムニチャネル機能を提供している企業です。
決済サービスやデジタルバンキング・ソリューションをはじめ、テクノロジーを利用した多様なサービスを展開しています。

決済サービスには、SMSなどのメッセージでの決済リンク送信や、購入者が請求書を共有できる”マルチバイヤー機能”、異なる支払方法に分割できる”マルチペイメント機能”など多様なラインナップがあります。
また、ストーンのデジタルバンキング・ソリューションは中央銀行のシステムと直接統合されているので、仲介者を必要としない点も特徴です。

これらのサービスだけでなく、ストーンは顧客データやサービスをデジタルプラットフォームに統合しており、AI・機械学習による評価、分析や、更なるサービス(例えば顧客のニーズに合わせた資金調達ソリューションなど)の提供を行うことができます。

また、顧客により近い場所で、満足度の高いサポートを提供するため、”Stone Hubs”と呼ぶ拠点をブラジル全土に設置しており、2020年12月時点での拠点数は350以上となりました。

提供ソリューションとしては、既にPOSシステムやビジネスに関するソフトウェア(予約や注文処理、在庫管理、会計など)、決済サービス、金融といった幅広いエコシステムを構築していますが、これをさらに拡大するため、小売管理ソフトウェア、銀行サービス、クレジットなどの市場への参入を進めています。

ワンストップで幅広いサービスを提供できるため、顧客を囲い込みやすい点が利点といえるビジネスモデルです。

1-3. 売掛金(信用債権)の問題

この問題について詳しく報告した2021年8月のプレスリリースが出た時点で、クレジットソリューション事業に着手し2年間が経過していますが、当初の見込みよりも回収率が低く延滞率が高い結果となっています。

ストーンの回収プロセスがまだ不十分という点も否めませんが、事業着手直後のコロナ感染拡大・ロックダウン、そして、ブラジル市場のカード債権登録(クレジットカード取引によって生まれるキャッシュフローを融資の担保とできる)のフレームワーク変更に伴うシステム移行の欠陥によるトラブルや、一部のアクワイアラーの不正も影響しています。

こういった状況を受け、ストーンは6月初旬にこれらの債権発行を一時的に停止し、不良債権に対する引当金の見積もりを更新することとなりました。
こうして設定された引当金の累計額は、クレジットソリューション総残高の約39%となる780.8百万レアル(7億8,080万レアル)です。

システムの正常な動作が確認され次第、クレジットソリューションの取り組みを再開する予定ですが、これには3ヶ月~6ヶ月かかる可能性があるとしており、決算にもこれらの不調が反映されると考えられます。

1-4. チャート

ストーンの株価チャートはこのようになっています。2020年2月頃のコロナ感染拡大によって一時的に下落した後、順調に株価を上昇させていました。
しかし、2021年2月の市場の波や、四半期のアナリスト予想を下回る結果が続いたことなどから、現在は最高値よりかなり低い株価となっています。(2021年9月25日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 資金繰りは問題なし
  • 自己資本比率は高め
  • 事業が黒字も、キャッシュフローはマイナス続き

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2020年決算書におけるSTNE貸借バランス

(単位:百万ブラジルレアル)

貸借バランスは”安定タイプ”です。

流動比率は約220%、当座比率も約210%で、短期の資金繰りに問題はありません。
固定比率は約17%ととても優秀です。

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は47%と高めの数値です。

2-1-3. キャッシュフロー

2020年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。

また、2020年の営業活動のプラス収支額は小さく、2019年までは営業活動が大きなマイナス収支となっていました。
これは主に、カード発行会社への売掛金が年々増加しているためです。(キャッシュフロー計算書では、売掛金は”まだ現金化されていない”ため、減算する。2020年は増加額が例年より少なかった)

投資活動は短期投資に多額を投じておりマイナス収支、財務活動は借入や公募による増資でプラス収支です。

2-1-4. 項目まとめ

貸借バランスは安定しており、ひとまずの資金は手元にある状態です。
ただ、事業が黒字にもかかわらず、営業活動のキャッシュはマイナス続きとなっています。

2-2. 収益性

  • 2020年は増資で資産が増加し、ROE・ROA低下
  • ROE・ROA共に米国平均の半分以下

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

STNEのROE(自己資本利益率)推移_2020

2018年から黒字となり、ROEもプラスとなっています。
2020年はROEがかなり低下しましたが、純利益自体は前年より若干増加しており、数値低下の主な要因は増資による自己資本の増加です。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

STNEのROA(総資産利益率)推移_2020

ROAもROE同様に上下しています。

2-2-3. 項目まとめ

黒字で利益を出していますが、2020年は増資などの影響もあって数値が低下し、ROE、ROAともに米国平均値の半分以下といった内容です。

2-3. 経営の効率

  • 総資本回転率が低いが、ビジネスモデルの影響も大きい
  • 棚卸資産はなし

2-3-1. 各回転率

STNEの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率_2020

総資本回転率は0.1回と低いです。
これは総資本に対して売上が小さいことを表していますが、ストーンの場合は多額の売掛金が発生するビジネスモデルのため、ある程度は許容範囲と言えます。
ただ、この売掛金をざっくり省いて計算しても回転率1回には満たない状態です。

また、短期投資にかなりの資金を投じていることも影響しています。(事業に直接使用されていない資産も大きい)

固定資産は前述のビジネスモデルなどの影響が小さく1.3回で、棚卸資産は保有していません。

2-3-2. 項目まとめ

ビジネスモデル上、総資本回転率の低さはある程度仕方ないと言えますが、もう少し売上を伸ばしたい内容です。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上は成長中だったが2020年はコロナで減少、損失も急増
  • 記事作成時点の最新決算(第2Q)を見ると回復傾向にある
  • 売上高研究開発費率は80%超えだが、一時的だと考えられる

2-4-1. 売上高と利益

STNEの売上高推移_2020

売上は順調に増加しています。
また、コロナ感染拡大による消費者の購買行動のオンラインへのシフトはプラスに影響しています。

STNEの営業利益(損失)推移_2020

営業利益の明示が無かったため、純利益をグラフ化しています。
2020年は売上が大きく伸びた一方で、利益はあまり増加しませんでした。

これには主に、原価の増加や人件費の増加(従業員も増えている)が影響しています。

2-4-3. 項目まとめ

売上の継続的な成長から今後にも期待したいですが、一方で利益の伸びの鈍化が気になります。
また、現在は不良債権の問題もあるので、すぐに業績が上向くことはなさそうです。

3. まとめ

クロとしては、ストーン(StoneCo Ltd)を、ブラジルの経済成長と債権問題の解決に期待して、少量保有しておこうと思います。

南米の経済的な不安定さもありますが、まだ現金が多く使用されている市場なので、これからまだまだサービス拡大の余地があると考えます。

また、不良債権の問題がネックですが、プレスリリース通り3~6ヶ月で問題を解決し業績が向上することに期待したいです。
また、この信用債権以外は好調で顧客数は増加しています。

ただ、リスクも高いので、多く保有するつもりはありません。

今回の記事はStoneCo Ltdの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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