ブロック(Block Inc / SQ)の決算書(10-K)・銘柄分析について、2021年度決算を踏まえた内容に更新しました。クロの判断は以下の通りです。
※旧社名スクエア(Square Inc)
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. Block Inc(SQ)について
1-1. 業種
情報テクノロジー、サービス、ソフトウェア、金融
1-2. 事業の概要
ブロックは、フィンテックを中心に様々なソフトウェア・サービスを提供するテクノロジー企業です。
これまで特に大きな成果を上げてきたものは、POSシステムやキャッシュレス決済などの包括的なサービスである”スクエア・エコシステム”、個人間送金・簡易銀行機能などのサービスを提供する”Cash App事業”ですが、他にもアーティストへの還元を重視する音楽配信サービス”TIDAL”などを手掛けて(2021年に買収)います。
更にグローバルな後払いプラットフォームAfterpayの買収も完了し、そのエコシステムは更に幅広いサービスを提供できるようになりました。
また、CEOのジャック・ドーシー氏はビットコインを支持していることで有名で、元々ビットコインの売買に力を入れてきましたが、先日社名をスクエアから”ブロック”へ変更し、ますますビットコインや仮想通貨(暗号資産)に注力する姿勢を見せています。
ビットコインのライトニング・ネットワーク(ブロックチェーンの外側で取引を行うネットワーク。取引の結果のみをブロックチェーンに記録することで、取引処理の速度向上・安価な手数料が実現できるとされる)の開発にも積極的で、Cash Appとの統合も始まっています。
また社名変更に伴い、これまで仮想通貨に携わってきたチーム”スクエア・クリプト(Square Crypto)”はスパイラル(Spiral)という名称に変更され、2021年にはTBDという別のチームを立ち上げました。
TBDは、開発者がビットコインやブロックチェーンテクノロジーに簡単にアクセスできるオープンなプラットフォームの構築がチームの使命であるとし、ビットコインを通じて、取引所の仲介を必要としない分散型金融サービス(DeFi)の実現を目指しています。
1-3. チャート
ブロックの株価チャートはこのようになっています。
2020年2月のコロナ感染拡大によって一時下落しましたが、その後は1年間もの間、大きな上昇を続けました。
しかし2021年2月頃から伸び悩みはじめ、11月頃には短期間で大きく下落しています。ただ、最近は決算が好感触だったことと、市場全体が上げ基調だったこともあり再び上昇しています。(2022年3月28日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- ひとまずの資金繰りは問題なし
- 営業活動のキャッシュフローはプラスを継続
- 有価証券購入に多額の資金投入
→フリーキャッシュフローが連続マイナス - 自己資本比率は24%
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

(単位:百万ドル)
貸借バランスは、厳密には流動負債が大きすぎますが”おおむね安心タイプ”といえるでしょう。
流動比率は約194%、当座比率は約125%で、短期の資金繰りは問題ありません。
固定比率は約104%です。
100%を超えていますが、ひとまず純資産と固定負債の合計を超える固定資産は保有していないので、問題はありません。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は約24%とあまり高くありません。
昨年と比較すると3ポイント低下しました。
2-1-3. キャッシュフロー
営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。
昨年同様、売買・満期保有目的の有価証券の購入に多額の資金を投じており、投資活動のキャッシュフローはマイナス収支です。
また、財務活動では債務による資金調達を行っています。
2-1-4. 項目まとめ
有価証券購入に多額の資金を投じておりフリーキャッシュフローがマイナス続きな点、負債の増加が続いている点は気になりますが、資産には流動性があり、営業活動によるキャッシュフローもプラスとなっているため、ひとまずは問題なさそうです。
2-2. 収益性
- 2019年から黒字に転換
- 売上の大半はビットコインによる
→利益率が低くROE・ROA低下
2-2-1. ROE(自己資本利益率)

事業が黒字化した2019年から、ROEもプラスに転じました。
しかしビットコインの仕入コストが大きく、ビットコインの売上が急増した2020年から、ROEは大きく低下しています。
また、この急激な変化(利益率の低い商品の売上が増えた)の影響もあり、2020年は営業損失が発生していました。
また、2021年は純利益の減少と自己資本の増加によって、ROEが更に低下しました。
2-2-2. ROA(総資産利益率)

ROAもROEと同様で、2019年から黒字になり、その後低下しています。
総資産の増加は著しく、ROE以上に大きな低下を見せています。
2-2-3. 項目まとめ
非常に大きな売上を達成していますが、売上の半分以上を占めるビットコインの利益率が低いため、ROE・ROAは低い結果です。
2-3. 経営の効率
- 総資本に対する売上ラインをクリア
- 売上増加により回転率は上昇傾向
2-3-1. 各回転率

資産・資本の増加は続いていますが、ビットコインにけん引され、売上も大きく増えています。
そのため、回転率は全体的に上昇傾向にあります。
総資本回転率は最低ライン1回を超え、固定資産回転率も高いです。
また、昨年に引き続き在庫は非常に少ないため、棚卸資産回転率はとても高いです。
2-3-2. 項目まとめ
ビジネスモデルの影響もあって回転率は高く、売上拡大が続いていることで更に回転率は上昇しています。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上は大きく増加している
- ビットコインが売上の半分以上を占めるが粗利率が低い
- 2021年は売上の1%程度の営業利益達成
- 売上高研究開発費率は平均の約2倍
2-4-1. 売上高と営業利益

2020年の102%に続き、2021年も86%と大きく売上を伸ばしました。(数値はいずれも前年比)
処理手数料、サブスク、ハードウェア、ビットコインの全ての収益が増加しており、中でもビットコインの売上は前年比119%の成長を達成し、約100億ドル(10,013百万ドル)となりました。
このビットコインの売上は、売上全体の57%を占める数値です。
ただ、このビットコインは利益率が低く、2021年の粗利率は約2%しかありません。(過去も同程度の粗利率)
ちなみに処理手数料収益の粗利率は43%、サブスクは82%となっており、またハードウェア収益に関しては赤字ですが、このハードウェア収益は売上全体の1%未満です。

2021年は過去と比較してかなり大きな営業利益が発生しました。
各種営業費用は増加し、全体の粗利率も29%から25%に低下していますが、売上の拡大が影響していると考えられます。
ただ、過去年よりは大きな営業利益を達成したとはいえ、この営業利益を売上と比較すると1%程度しかありません。
2-4-2. 研究開発費
売上高は約17,661.20百万ドル、研究開発費は約1,399.08百万ドルだったので、売上高研究開発費率は7.9%となります。
科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は4.1%とされており、研究開発費率は平均の2倍近い結果です。
研究開発費は増加しましたが、比率で見ると昨年の9.3%より1.4ポイント低下しました。
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
ビットコインの売上にけん引されている部分も大きいですが、売上の力強い伸びは続いています。
また、スクエア・エコシステムとCashAppの事業別売上も増加しており、特にCashAppは前年比106%の成長を見せました。
ただ、CashAppは昨年急激に需要が伸び(投資の過熱や失業給付金の受取口座となったことが影響した)成長率は前年比440%となっていたため、それと比較すると落ち着いたようにも見えます。
スクエア・エコシステムに関しては、売上が再び成長(前年比47%の増加)し、コロナ感染拡大による打撃からの回復が見られます。
今後も成長していきそうですが、ビットコインやブロックチェーン事業に更に投資していく可能性は高いので、利益がこのまま増加するのは難しいかもしれません。
3. まとめ
クロとしては、ブロック(SQ)は一旦購入を見送り、市場の様子とタイミングを計りたい銘柄です。
事業内容は魅力的ですし、売上は増加を続けそうですが、これからビットコインやブロックチェーンに関する費用が増加する可能性を考えると、利益面はまだまだ改善されないのではないかと考えます。
金利上昇の影響も気がかりですし、新たな取り組みによる期待などでボラティリティも高そうなので、購入タイミングは考えたいです。
今回の記事はBlock Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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