スクエア【SQ】銘柄分析_POSシステムや簡易銀行に匹敵するアプリで躍進

米国株の年次決算書・銘柄分析
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スクエア(Square Inc / SQ)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

2021年度更新版はこちら

1. Square Inc(SQ)について

1-1. 業種

情報テクノロジー、サービス、ソフトウェア、金融

1-2. 事業の概要

スクエアは、小売店などの販売者向けにクラウドベースのソフトウェアソリューション、ハードウェアを提供するセラー事業、個人のユーザーへ簡易銀行機能や投資機能を提供するキャッシュアプリ事業の2つを軸に事業を展開している、ソフトウェア企業です。

セラー事業には、POSシステム(Point of saleの略。商品の販売・支払が成立した時点で、その商品情報や売上情報などを記録し、売上・在庫管理を行うシステム)、クレジットカードなどのキャッシュレス決済のハードウェア及びサービスの提供などが含まれています。

セラー事業では手数料やプレミアム機能でのサブスクリプション収益がある他、POSシステム利用を通じて得た顧客の売上データなどから、その内容に応じたファイナンス業務も行っています。

キャッシュアプリ事業では”Cash App”というP2P(個人間取引)送金アプリを中心に、まるで銀行のようなサービスを提供しています。

個人間送金のできるアプリというと日本ではLINE Payが最も普及していますが、Cash Appのこれらの機能は更に充実しており、給与受取が可能(固有の口座番号がある)、キャッシュカード・デビットカードの利用が可能、株式やETF、ビットコインの購入が可能などの特徴があります。

また、2020年第1Qには、アメリカ・イギリス間でのリアルタイムかつ手数料なしの送金が可能となりました。

更に2020年第4QにはCredit Karma Tax社買収を行い、個人向けの税務申告製品を追加するなど、更なる機能・サービスの拡張が進んでいます。

1-3. チャート

スクエアの株価チャートはこのようになっています。
2020年2月のコロナ感染拡大によって一時下落しましたが、その後は1年間もの間、大きな上昇を続けました。
2021年2月頃からは伸び悩んでいますが、200ドル~280ドルの間を行き来しており、値動きの大きい状態です。(2021年8月18日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 資金繰りは問題なし
  • 営業活動のキャッシュフローはプラスを継続
  • 自己資本比率は27%

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2020年決算書におけるSQ貸借バランス

(単位:百万ドル)

貸借バランスは”安定タイプ”です。

流動比率は約190%、当座比率は約120%で、短期の資金繰りは問題ありません。

固定比率は約78%です。

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は約27%とあまり高くありません。

2-1-3. キャッシュフロー

2020年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。

投資活動のマイナスは売買目的で多くの有価証券を購入したためで、財務活動では転換社債で資金調達を行いプラス収支となっています。

2-1-4. 項目まとめ

営業活動によるキャッシュフローもプラスとなっており、安定性にはひとまず問題なさそうです。

2-2. 収益性

  • 2019年から黒字に転換
  • 2020年はビットコインの仕入コスト増加で利益が相殺

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

SQのROE(自己資本利益率)推移【2020年】

事業が黒字化した2019年から、ROEもプラスに転じました。

2020年に大きく低下していますが、これにはビットコインの仕入に非常に大きなコストがかかって利益が減少したことが影響しています。
2019年は約5億ドルだったのに対し、2020年は約45億ドルかかっており、保有株式の再評価がなければ2020年は赤字でした。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

SQのROA(総資産利益率)推移【2020年】

ROAもROEと同様で、2019年から黒字になっています。

利用の増加で顧客資産などが増加したため、ROE以上に低下しています。

2-2-3. 項目まとめ

2020年はビットコインの仕入によるコストで利益が相殺され、収益性が低い結果となりました。
ちなみに2019年は事業自体黒字で利益を出していますが、事業売却による収入もあり、利益が大きい年でした。

2-3. 経営の効率

  • 総資本に対する売上ラインをクリア

2-3-1. 各回転率

SQの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率【2020年】

総資本回転率はほぼ1回に近く、資産に対する売上の最低ラインは達成されています。
固定資産回転率は4.5回です。

在庫は非常に少なく、棚卸資産回転率は155回となっています。

2-3-2. 項目まとめ

ビジネスモデルの影響もあって、回転率は問題のない数値です。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上は増加中で、2020年は前年の2倍
  • ビットコインの売上が9倍近く増加したものの粗利率が低い
  • 2020年は営業損失が発生
  • 売上高研究開発費率は平均の2倍以上

2-4-1. 売上高と営業利益

SQの売上高推移【2020年】

売上高は増加を続けていましたが、2020年は更に大きく伸びました。

処理手数料(トランザクションベース収益)、サブスク、ハードウェアという収益のカテゴリ全てで売上が増加しており好調ですが、ビットコインの収益が516百万ドル(2019年)から4,572百万ドルに増加しています。

ただ、このビットコインは仕入に4,475百万ドルかかっており、単体で見た場合の利益率は低いです。(過去3年間1~2%程度の粗利)

また、2020年はコロナ感染拡大の影響でセラー事業が一時不調となり、売上は前年比2%アップに止まりました。
しかし、キャッシュアプリ事業はビットコイン関連に加え、失業給付金の入金口座となったこともあり、前年比440%増加という売上成長を記録しています。

なお、2020年の粗利率はセラー事業43%、キャッシュアプリ事業21%です。

SQの営業利益(損失)推移【2020年】

2020年は粗利の少ないビットコインが売上の半分近くを占め、事業全体の利益率が低下したこともあり、営業損失(事業からの赤字)が発生しました。

また、人員増加による人件費、Cash Appを中心としたマーケティング費用、コロナ感染拡大によるセラー事業の取引損失(顧客の事業減速による貸倒・その引当金の増加)など各種コストも増加しています。

2-4-2. 研究開発費

2020年の売上高は約9,498百万ドル、研究開発費は約882百万ドルだったので、売上高研究開発費率は9.3%となります。
科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は4.1%とされており、研究開発費率は平均の2倍以上という結果です。

※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019

2-4-3. 項目まとめ

成長性はありそうですが、粗利率が低い収益もあるので、今後の利益率の推移には注意したいです。

また、キャッシュアプリ事業の成長が著しいですが、2020年はビットコインや株式投資が急激に加熱した年であることや、失業給付金の受取口座となっていたこともあるので、今後も同じような成長を続けるのは難しいかもしれません。
その一方で、実在店舗に導入するセラー事業は回復が見込めます。

2-5. Afterpay社買収

2021年8月2日、スクエアはAfterpayの買収を発表しました。
Afterpayは、期限内に支払えば利息・手数料なしで分割払いを利用できるサービスで、Afterpayを導入している企業からの手数料と、支払期限を過ぎたユーザーからの利息を収益源としています。

買収額は290億ドルと非常に高額で、スクエアの総資産(2020年末時点)の約30倍の価格です。
一気に総資産が増えることになりますが、2社の事業のシナジーが期待されており、高すぎるという意見もありつつ、比較的前向きに受け止められています。

Afterpayは加盟者10万以上、ユーザーは1600万人以上と言われており、スクエアは新しいユーザーへアプローチできるようになる利点もあります。

この買収は全額株式交換で行われ、2022年第1Qに完了する予定です。

2-6. ビットコインでのDeFi技術開発

CEOであるジャック・ドーシー氏はビットコインを支持していることでも有名ですが、2021年7月15日、ビットコインを利用したDeFi技術開発を行うことを発表しました。

DeFiとはDecentralized financeの略語で、分散型金融と訳されます。
銀行や証券会社などの管理者を介さない金融取引サービスのことを指し、時間や金銭的コストを削減できる(リアルタイムでの取引、手数料のカットなど)と期待されて2020年に一大ブームとなりました。

このDeFiは、管理者・仲介者を置かずに”ブロックチェーンによってユーザー同士が管理しあう”ことになるのですが、今まではスマートコントラクト(自動で契約処理する機能)を実装しやすいイーサリアムが使用されてきました。

このDeFiをビットコインで実現し、どのようなサービスを打ち出してくるのかはまだわかりませんが、非常に注目が集まっています。

ちなみに現在(記事作成時点)、イーサリアムでのDeFi取引が増えることで、処理速度の低下やコストの高騰が懸念されており、ビットコインでのDeFi実現がこの問題に転機をもたらす可能性もあります。

3. まとめ

クロとしては、スクエア(Square Inc)は買い場が来れば買いたい銘柄です
(PBR:45.59、PER:557.3、PSR:12.69 ※楽天証券のPBR、PER(実)数値、時価総額120,500.6百万ドルと2020年売上から算出。2021年8月30日閲覧し追記)

事業の成長性はありそうですが、売上の多くをビットコインが占めており、粗利率が下がってきている点が気になります。
それによって純利益で算出するPERはかなり高く、一方で時価総額を売上で割るPSRは低めの値です。
なお、直近の2021年第2Qの決算でも売上を牽引しているのはビットコインです。(ただし第2Qは黒字)

事業拡大につながる買収やDeFi開発は魅力的でもあるので、買い場が来れば購入を検討しますが、今の市場の状態では一旦様子を見たいです。

今回の記事はSquare Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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