2021年も残すところあと2日となりました。
今回は、この一年間での米国株・市場の成長(まだ終了していないので見込みだが)と、2021年第4Q、そして2022年に控えているイベント、経済の成長予測をまとめていきます。
1. 2021年の市場振り返り
1-1. ナスダック・ダウ指数
以下のチャートは、ダウ指数とナスダック指数の2021年一年間での推移です。(記事作成時点の12月30日まで)
2021年年始を基準として、ローソクチャートがダウ指数、オレンジ色のラインがナスダック指数の変動率を表しています。
どちらも上昇はしていますが、ナスダック指数の方が金利上昇などの影響を強く受け、何度か大きく下落しているのがわかります。
それに対してダウ指数のチャートは緩やかです。
しかしその一方で、年始と年末(ただし12月30日)を比較した上昇率は、ナスダック指数の方が高い結果となりました。
1-2. S&P500
次は時価総額が大きく(採用基準には他にも流動性や浮動株などがある)優良な企業の集まったS&P500を見ていきたいと思います。
2021年年始を基準として、ローソクチャートがS&P500指数、オレンジ色のラインがナスダック指数、水色のラインがダウ指数の変動率を表しています。
ナスダック指数よりも安定しており、かつダウ指数よりも上昇幅は大きい結果です。
また、ここから先の見込み・予測については、2021年12年17日に発表されたFACTSETレポートをご紹介しながらまとめていきます。
このレポートは、金融業界向けに独自のデータ・分析ツールを提供するファクトセット・リサーチ・システムズ(FDS)が毎週発表しているものです。
S&P500採用銘柄の2021年売上成長率は15.8%、利益成長率は45.1%となる予測です。
過去10年の平均がそれぞれ3.5%、5%とされているので、2021年は非常に大きな成長があったことがわかります。
ただ、2020年は新型コロナ感染拡大による経済的打撃があったため、これも成長率を高める要因となっています。
また、全体の純利益率は12.6%となる予測で、これは2019年の11.1%、2020年の10%を上回ります。
1-3. セクター別
2021年の売上成長率を大きく牽引したのはエネルギーセクターで、その成長率は59.1%と見込まれています。
続いてマテリアル(素材・材料)セクターが26.1%、コミュニケーションサービスセクター(通信サービス)が18.9%となります。
一方利益成長率を見ると、エネルギーセクターは利益が出ておらず、最も高い数値を出したのはインダストリアル(製造・物流)セクターで97.8%です。
続いてマテリアルセクターが85.4%、一般消費財セクターが69.4%、金融セクターが59.7%となっています。
半導体不足による一部企業の急激な業績の伸びも反映されていると考えられます。
2. 2021年第4Q予測
2-1. S&P500銘柄全体
S&P500採用企業全体の2021年第4Qの推定売上成長率は12.8%、推定利益成長率は21.3%とされています。
また、推定純利益率は11.8%で、これは過去5年間の平均11%を上回る数値です。
なお、EPSガイダンスを出した95社のうち、ポジティブなガイダンスを出した企業は38社、ネガティブなガイダンスを出した企業は57社でした。
2-2. セクター別
セクター別の売上成長率では、やはりエネルギーセクターが高い見込みです。
続いてマテリアルセクター、不動産セクターがS&P500全体の12.8%を超える成長率となると予測されています。
利益成長率はインダストリアルセクターが最も高くなる見込みですが、9月末時点の130%という予測から下方修正され、今回のレポートでは107.5%の予測となっています。
これにはサプライチェーン問題や、オミクロン株の出現などが影響しているのではないかと思います。
なお、このインダストリアルセクターとマテリアルセクターが、S&P500全体の21.3%を超える成長となる予測です。
3. 2022年予測
3-1. S&P500銘柄全体
S&P500採用銘柄の2022年売上成長率は7.5%、利益成長率は9.2%となる予測です。
2021年からはかなり下がりますが、予測通りであれば、2020年までの過去10年の平均値(それぞれ3.5%、5%)を超える成長になります。
また、S&P500の推定純利益率は12.8%とされており、これは2021年を0.2%上回る予測です。
こういった点を見ると、2021年の急激な勢いは衰えるものの、堅実な経済成長は今後も続いていきそうです。
3-2. セクター別
2022年のセクター別売上成長率の予測を見ると、一般消費財セクターが14.2%で最も高くなっています。
次点はインダストリアルセクターで11.4%、続いて不動産セクター9.3%、他にもコミュニケーションサービスセクター、情報技術セクターがS&P500全体の7.5%という数値を上回ると予測されています。
一方利益成長率はインダストリアルセクターが35.5%で最も高い予測です。
他にも一般消費財セクター32.4%、エネルギーセクター28.2%は、かなり高い成長率を予測されています。
また、情報技術セクターは9.9%ですが、S&P500全体の9.2%を上回るだろうと予想されています。
コロナ禍を経て人々の消費意欲が高まっていることや、引き続き半導体不足、自動車関連の強い需要があることを見込んでいると考えられます。
エネルギーセクターに関しては現状の利益が小さいため、成長率は高い予測ですが、金額にするとそこまで大きくならないかもしれません。
3-3. 金融イベント
2022年はテーパリングが完了し、政策金利の引き上げやFRBのバランスシート縮小(量的緩和によって膨れ上がった債券等の資産=財務状態・バランスシートを、通常の状態へ戻すために必要)の議論が行われる見込みです。
これらはいずれも株式市場へマイナスの影響(下方圧力)を与えるため、2022年の株価の上昇は厳しいのではないかと言われています。
実際、2018年に今回のような金利引き上げ・バランスシート縮小があった際には、売上や利益の成長があったものの、S&P500指数がマイナスで終わる(年始より低い数値で年末を迎えた)結果となっています。
4. まとめ
2022年は2021年ほどの勢いはないと予想されますが、経済成長は続きそうです。
ただ、2018年頃の例を見ても、そういった成長が株価に必ずしも反映されるとは限らないので、積極的な購入は控えてキャッシュを多めに保有するなど、リスクの軽減を計っておきたいです。
ただ、もうじき出てくる2021年第4QについてはFACTSETの予想成長率もかなり高く、セクターによっては良好な決算も多くありそうです。
随時確認しつつ、ホールドする銘柄と売却する銘柄を区別していこうと思います。
記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
なお今回は以下のFACTSETを参考にさせていただきました。(2021年12月30日閲覧)
https://www.factset.com/hubfs/Website/Resources%20Section/Research%20Desk/Earnings%20Insight/EarningsInsight_121721A.pdf
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