サンパワー(SunPower Corp / SPWR)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
※構造改革への取り組みを評価
それでは見ていきましょう。
1. SunPower Corp(SPWR)について
1-1. 業種
再生可能エネルギー、ソフトウェア、電子機器
1-2. 事業の概要
サンパワーは太陽電池パネルの製造・販売を行っていた企業で、現在は発電・蓄電システムの販売やソフトウェアなどのサービス、管理業務に注力して運営されています。
サンパワーのソーラーパネルの発電効率は世界最高とも言われ、トヨタなど有名企業も使用しており、世界的に高い評価を得ています。しかし、2020年8月に、このパネル製造事業・販売事業をMaxeon Solar(MAXN)としてスピンオフ(企業分割。ただし一部の国を除いて、Maxeon Solarは今後もサンパワーブランドを継続して販売)しました。
スピンオフを経てもサンパワーが太陽光発電・エネルギーの第一人者であることは変わりなく、ハードウェアはもちろん、エネルギー管理を簡単に行えるソフトウェアに至るまで、施工場所や目的に沿った太陽光エネルギーのターンキーソリューション(EPCサービス)を提供しています。
ちなみに、マイクロインバーター(太陽光パネル1枚ごとに設置する電力の変換・取り出し機器)事業は、2018年にエンフェーズ・エナジーへ売却しています。
1-3. チャート
サンパワーの株価チャートはこのようになっています。他の再生可能エネルギー関連銘柄の多くと同様に、2020年9月末頃から急激な上昇を見せ、1月末頃から急下降しています。
その後じわじわと下がり続け、現在は20ドル前後で推移しています。(2021年6月7日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 短期の資金は少々少ないが許容範囲
- キャッシュフローは良くない
- 自己資本比率は改善傾向にある
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

(単位:百万ドル)
貸借バランスは”ギリギリ運用タイプ”です。
流動比率は約150%、当座比率は約90%で、短期の資金は少々心許ない状態ですが、許容範囲内といったところです。
固定比率も約210%と高めですが、過去の数値と比較すると改善してきています。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は約25%と低めですが、過去の数値より改善してきています。
2-1-3. キャッシュフロー
2020年は営業活動がマイナス、投資活動がプラス、財務活動がマイナスという不安タイプの組み合わせで、フリーキャッシュフローもマイナスです。
これには2018年にマイクロインバーター事業を売却した際に得た、エンフェーズ・エナジーの普通株式750万株が大きく影響しています。
この株式の公正価値変動(値上がり)で事業での赤字が相殺され黒字となりましたが、営業活動によるキャッシュフローでは、キャッシュを伴わない収益のため差し引かれることとなりました。
また、2020年に300万株を売却しており、この収入約2億5,000万ドルは投資活動をプラスにしています。
財務活動のマイナスは、転換社債の買戻しや負債の返済での支出が、収入を上回ったためでした。
2-1-4. 項目まとめ
手元資金が少々少ない点や、キャッシュフローのバランスが良くない点は気になりますが、すぐに問題が起きるような状態ではなさそうです。
2019年、2020年に黒字で決算を終えたことで、累積赤字を少々減らすことができました。
なお、2018年の事業売却や2020年のスピンオフの直後は資産が減少し、一時的な債務超過状態になっていましたが、現在は改善しています。
2-2. 収益性
- 2019年から黒字
- 2020年の利益は大きいが、保有する株式の値上がりによるもの
2-2-1. ROE(自己資本利益率)

ROEが非常に高くなっていますが、自己資本が比較的小さいため過信はできません。
2019年より2020年(決算は2021年1月に発表)の方が数値が低いですが、これは自己資本の増加によるものです。
2-2-2. ROA(総資産利益率)

事業売却やスピンオフを経て総資産がサイズダウンしたため、利益率は上昇しました。
2020年のROAは平均の約3倍以上と良好なのですが、今期の利益はエンフェーズ・エナジーの普通株式の公正価値変動によるものでした。
2-2-3. 項目まとめ
2020年の数値は良好ですが、事業そのものによる利益ではなく、事業による収益性はまだまだです。
利益を求めて大規模な構造改革(リストラクチャリング)に取り組んでいるため、今後の収益性向上に期待したいです。
2-3. 経営の効率
- 総資本回転率は最低ライン(1回)に届かず
- 総資本が小さくなり、回転率は上昇傾向ではある
- スピンオフを経ても棚卸資産は減少していない
2-3-1. 各回転率

総資本回転率は約0.7回で、少々物足りない数値です。しかし、事業売却やスピンオフで総資産(総資本)がサイズダウンしたため、回転率は上がってきています。
固定資産回転率は約1.3回、棚卸資産回転率は約5.3回です。どちらもあまり高い数値ではありません。
2-3-2. 項目まとめ
総資本が減少したことで、総資本回転率は低いながらも上昇してきています。固定資産回転率も近年上昇傾向にあります。
ただ、棚卸資産はスピンオフを経ても減少しておらず、この回転率を向上させるには更なる売上高の増加が望まれます。
2-4. 成長している・していく企業か
- スピンオフで売上高が減少
- 直近の2019年と2020年を比較すると、売上高は微増
- 複数の事業売却なども影響しているが、営業損失は減少
- 売上高研究開発費率は平均以下
2-4-1. 売上高と営業利益

2018年に売上高が大きく減少しているのは、Maxeon Solarスピンオフによって売上の連結を解消したためです。(スピンオフは2020年だが、2018年までさかのぼって修正された。2018年の連結解消前の売上は1,726百万ドル)
なお、2019年と2020年を比較すると、売上高は若干増加しています。

営業損失もスピンオフによって減少しています。また、2017年~2018年は住宅リース資産の売却損や減損が大きくありました。
リストラに関する費用も2018~2019年でほぼ完結している他、構造改革・人員削減によって研究開発費や管理費が削減されており、直近の営業費用は減少してきています。
また、2018年のマイクロインバーター事業以外にも、2019年には稼働中の太陽光発電プロジェクトのリース権を、2020年にはオペレーション&メンテナンス事業を売却し、売却益を得ています。
2-4-2. 研究開発費
2020年の売上高は約1,125百万ドル、研究開発費は約22百万ドルだったので、売上高研究開発費率は2%となります。
科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は5.2%とされており、サンパワーの研究開発費率は平均の半分以下となります。
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
売上高や利益が大きく増加しているわけではありませんが、事業再編や人員削減によって利益構造に大きくメスを入れています。事業売却益や過去の減損費用にも影響されているとはいえ、営業損失を減らせたことは大きな一歩です。
売上高研究開発費率は低いですが、事業を分割することでサンパワー自身がやるべき研究開発に絞って活動できるようになったとも取れます。
ただ、直近の純利益(最終的な利益)はエンフェーズ・エナジーの普通株式の価値変動によるところが大きく、2021年末の結果に過度な期待はできません。
3. まとめ
クロとしては、サンパワー(SPWR)は構造改革による利益効率アップに期待したい銘柄です。
サンパワーというブランド力はまだ衰えていないこと、営業損失が減少してきていることと、事業や人員の再編を積極的に行っていることから、利益を生める事業体質に改善されることを期待します。
ただ、テーパリングや金利政策による影響が懸念されている状況で、エンフェーズ・エナジーの株式価値変動の影響を受ける可能性があること(ただし保有数は750万株から350万株へ減少)はリスクでもあると考えます。
したがって、このまま右肩上がりの決算が出続ける可能性は低いことを念頭に置きつつ、クロとしては、値下がりしたタイミングで少量ずつ保有したいと思います。
今回の記事はSunPower Corpの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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