スポティファイ【SPOT】銘柄分析_21年度決算更新版

米国株の年次決算書・銘柄分析
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スポティファイ・テクノロジー(Spotify Technology SA / SPOT)の決算書・銘柄分析を2021年度決算を踏まえた内容に更新しました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待※ただし報道・次決算に注意したい

それでは見ていきましょう。

※今回の記事内の売上等の単位は”ユーロ”です。

1. Spotify Technology SA(SPOT)について

1-1. 業種

ソフトウェア、ストリーミングサービス

1-2. 事業の概要

スポティファイ・テクノロジーは、レコードレーベル関連各社とライセンス契約を結び、音楽ストリーミング配信サービス”Spotify”を提供するルクセンブルクの企業です。

そのユーザー数は増加を続けており、2021年末時点での月間アクティブユーザーは4億600万人、有料会員は1億8,000万人です。
なお2020年12月末時点では月間アクティブユーザー3億4,500万人、有料会員は1億5,500万人でした。

有料会員のサブスクリプションと広告の2つが主な収益源となっており、2021年の売上の約88%がサブスクリプションによる収益でした。
広告に邪魔をされることなく、無制限でのストリーミングアクセスが可能となるサブスクリプションには、標準プラン、ファミリープラン、学生プランなど複数の料金プランがあります。

2021年2月にロスレス(圧縮が少なく元の音源データを再現できる形式)の高音質配信”Spotify HiFi”を発表し、2021年内に配信する予定となっていましたが、その予定は遅れています。
スポティファイは”具体的な予定は発表できないものの、配信予定であることは変わらない”というスタンスを取っていますが、一部のメディアでは配信が中止されるのではないかという報道も出ています。
ちなみに競合の一つであるAppleMusicは、ロスレス配信を既に実現しています。

また、直近では人気ポッドキャスト番組のワクチン誤情報を放置(詳しくは後述)しているとして、一部で問題視されています。

1-3. チャート

スポティファイ・テクノロジーの株価チャートはこのようになっています。
2020年2月頃の新型コロナ感染拡大の後上昇をはじめ、何度か停滞しつつも一時は380ドルを超えました。

2021年2月下旬からは下降に転じ、しばらく220ドル~300ドルの間を何度も上下していましたが、人気ポッドキャスト番組での反ワクチン発言に対し、医師ら270人が指摘・対応要請の公開書簡を送った1月12日をきっかけに、更に下落しました。
この後も注意喚起を行うのみで現在も該当番組を継続しているスポティファイの姿勢に抗議が集まっており、一部のミュージシャンが自身の楽曲のスポティファイからの削除を要請したり、ユーザーの中でも一連の騒動を理由にした解約が発生するなどの事態となっています。(2022年2月14日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 資産の流動性は改善、問題なし
  • 自己資本比率は低下し30%に
  • 事業は赤字だが営業活動のキャッシュフローはプラス

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

(単位:百万ドル)

貸借バランスは”ギリギリ運用タイプ”です。

流動比率は約136%、当座比率は約128%で、昨年より改善しました。
これだけの流動性があれば資金繰りに問題は無いでしょう。

固定比率は132%と少々高いですが、全体のバランスから見ると許容範囲内です。

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は30%で特別低くはないものの、昨年より低下しました。
保有している、テンセント傘下のTMEの株価下落が影響しているようです。

2-1-3. キャッシュフロー

2020年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。

事業の赤字が小さくなり、キャッシュの支出を伴わないものを調整した結果、営業活動は昨年よりも大きなプラス収支となりました。

また、財務活動においては、債券発行による資金調達で大きなプラス収支となっています。

2-1-4. 項目まとめ

ひとまずの資金繰りは問題ありません。
また、赤字ながらも、営業活動はプラス収支となる年が続いています。

2-2. 収益性

  • 赤字続き
  • 2021年は赤字削減

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

年々赤字が増えていたため、2021年までのROEはどんどんマイナス値が増加していました。
しかし2021年は自己資本が増加し、損失額を削減することができたため、マイナス値は減少しています。

2021年は黒字の四半期、赤字の四半期があり、通年では最終的に赤字となりましたが、営業利益は発生していました。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

ROAもROE同様に上下しています。

総資産は年々増加しています。

2-2-3. 項目まとめ

2021年は赤字が減少し資産が増加したため、マイナスをかなり小さくすることができました。
この傾向が維持されれば通年黒字も近そうです。

ただ、ワクチン誤情報の件がかなり話題となっているので、第1Qの業績にどのような影響が出てくるのか注意しておきたいです。

2-3. 経営の効率

  • 総資本回転率は最低ラインクリア
  • 棚卸資産の保有はなし

2-3-1. 各回転率

総資本回転率は最低ライン1回をクリアしています。
2021年は売上が増加したことで、わずかに回転率が上昇しました。

また長期投資資産が減少したため、固定資産回転率は更に上昇しています。

なお、棚卸資産の保有はありません。

2-3-2. 項目まとめ

回転率は問題ありません。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上は増加中
  • 2021年は営業利益が発生
  • 広告収益が大きく伸びている
  • 決算外の要因で気になる点アリ

2-4-1. 売上高と営業利益

売上は年々増加しています。
2020年は前年比17%増加、2021年は前年比23%増加となっており、その勢いは衰えていません。

年単位で見るとユーザー一人当たりの平均収益が減少してきていますが、現状はサブスクリプションの加入者増加などのプラス要因の影響が上回っているようです。
実際、サブスクリプション収益は前年比19%増加しています。

また広告収入を見ると、2020年は前年比10%の成長でしたが、2021年は62%増加しました。
2020年は新型コロナ感染拡大による悪影響があったようですが、それでも2021年はかなり大きく伸びたと言えるでしょう。
ただ、この広告収入は粗利率が低いので、利益の確保にはサブスクの成長が欠かせません。

営業損失が増加し続けていましたが、2021年は営業利益が発生しました。

なお、人件費や広告費など全体的に費用は増加していますが、その増加幅は2020年よりも小さく、売上の成長と相まって利益に繋がったようです。

2-4-2. 研究開発費

売上高は約9,668百万ユーロ、研究開発費は912百万ユーロだったので、売上高研究開発費率は9.4%です。

スポティファイは米国企業ではありませんが、一つの目安として米国平均と比較すると、平均の約2.3倍となります。(科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の米国平均は4.1%とされている。)

※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019

2-4-3. 項目まとめ

売上が増加し、2021年は営業利益も発生しました。
営業利益は事業自体からの利益(事業外の利息や為替などの影響を受けない)なので、これは良い傾向です。

ユーザー一人当たりの平均収益が減少しているものの、サブスクの加入者数やMAU(月間アクティブユーザー)は増加しているため、成長に期待したくなります。

ただ、決算外の要因として、ワクチン誤情報の件がかなり話題となっていること、ロスレス配信が遅れていることは気がかりです。

3. まとめ

クロとしては、スポティファイ・テクノロジー(SPOT)は事業の収益化実現に期待したいが、一旦様子を見たい銘柄です。

近い将来黒字となる期待をしていましたが、ロスレス配信対応が遅れており続報が無いこと(競合他社は同等サービスを配信開始済み)、更にこのタイミングでワクチンの誤情報発信番組を放置していること(注意喚起は行ったが)は気になります。

株式市場の様子も見つつ、スポティファイの業績が現在の成長を維持できるのか、次の四半期決算を待ちたいと思います。

今回の記事はSpotify Technology SAの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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