ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic / SPCE)の6月締め四半期決算(2021年第2Q)について、アナリスト予想とも比較しつつその内容をまとめていきます。
■ヴァージン・ギャラクティックの事業内容や年次決算について紹介した記事はこちらにあります。
1. アナリスト予想との比較(EPS)
EPSはアナリスト予想をほぼ下回っています。
次は、実際の売上高と利益額がどのように推移しているのかを見ていきます。
2. 四半期ごとの売上高と純利益(損失)の推移
これは、四半期ごとの売上高と純利益をまとめた表です。
(単位:百万ドル)
2021年第2Qは、久しぶりに売上が発生していますが、約9,000万ドルの赤字(純損失)です。
なお、この売上はペイロード(貨物)飛行によるものです。
前年同期と比較すると、給与・報酬等の増加によって販売費や管理費が増加している他、ワラントの公正価値の変動による損失も大きい結果となりました。
3. その他の補足
3-1. 次回フライト予定
FAAから商業飛行の認可を取得し、2021年7月11日に創業者であるリチャード・ブランソン氏も搭乗してのテスト飛行を成功させた”宇宙船VSS Unity”ですが、次回のフライトは9月下旬を予定しています。
また、このフライトはイタリア空軍との収益を目的とするフライトだとしています。
また、この他にももう1回テスト飛行が行われると見られており、現段階では、本格的な商業飛行が実現するのは2022年後半の予定です。
3-2. 7月の株価急落
2021年7月11日のテスト飛行は成功したものの、その後すぐに株価は急落しました。
この主な原因には、突然の新株発行による増資(約5億ドル)が行われたこと、投資家の期待を煽る材料が出尽くしてしまったこと、いまだにフライトで収益を得られていないことが挙げられます。
ちなみに競合であるBlue Origin(未上場)は、チケット代金の発生する乗客を乗せたフライトをすでに成功させており、その点でヴァージン・ギャラクティックは一歩リードされてしまっています。
9月のフライトでの収益がどの程度かはわかりませんが、ヴァージン・ギャラクティックも収益を得られると証明してくれるのを期待したいです。
他にも、”ヴァージン・ギャラクティックが宇宙とする高度は少々低い”、”ロケットではなく飛行機で飛んでいる”などの意見が出ていますが、これらは随分前から言われていたことで、今回の下落の要因としては、あまり影響がないと考えます。
3-2. チケット販売開始
8月5日に、新たなチケット販売開始の発表がありました。
今回のチケットは1座席45万ドルで、以前販売していた25万ドルから大きく値上げされており、貸し切りなどのオプションもあります。
宇宙船の定員が8名から6名に変更されて収益性が少々不安になっていましたが、価格の改定によって少し安心できました。
ただBlue Originなどの競合が、より安価なチケットの販売を始めた場合は、マイナスの影響が出てきそうです。
なお、座席の提供は過去に予約していた顧客が優先されます。
ちなみにこの発表の影響もあって、8月6日から数日間、ヴァージン・ギャラクティックの株価は値上げ傾向でしたが、現在再び株価は下がってしまっています。(2021年8月11日時点)
4. まとめ
ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)の第2Qは、売上がごくわずかである一方で、大きな損失を出しています。
しかし、長く売上ゼロの期間があったこともあり、この点については織り込んでいた投資家も多いでしょう。
テストフライト成功直後の突然の増資は残念でしたが、売上による収入がなかったため、増資するのは仕方ないともいえます。
ただ、かなり反感を買うやり方での増資をしたので投資家にも警戒されており、しばらくは大きな値上げはしづらいと考えます。
現時点で大幅な買い増しをする気はありませんが、チケット販売の再開や、9月のフライトで収益が得られる可能性などのプラス要素もあるので、商業飛行の実現には引き続き期待したいです。
(ヴァージン・ギャラクティックの事業内容や年度末の決算書分析を行った記事もこちら↓にあります)
今回の記事は2020~2021年のVirgin Galacticの決算書及び四半期レポート、コーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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