スノーフレーク(Snowflake Inc / SNOW)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待※売上はまだ伸びそう
それでは見ていきましょう。
■2023年度第1Qトピックはこちら
1. Snowflake Inc(SNOW)について
1-1. 業種
電子テクノロジー、情報テクノロジー、データウェアハウス、ソフトウェア
1-2. 事業の概要
スノーフレークは、柔軟性の高いクラウド型のデータウェアハウスと、そのデータを共有・活用・分析するプラットフォームを従量課金制で提供する企業です。
データウェアハウスとは、企業の業務上で発生したあらゆるデータを分類し、時系列で整理して保管する倉庫のようなものです。
この膨大なデータを分析することで、企業の意思決定(商品開発や経営方針など)、マーケティングなどに役立てることができます。
このようなデータの活用は”BI(ビジネスインテリジェンス)”と呼ばれます。
スノーフレークの提供するサービスはAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure(Azure)、Google Cloud Platform(GCP)といった主要なパブリッククラウドに対応しており、2021年1月時点で世界の23の地域に展開しています。
これらのクラウド、地域をまたがっての管理・分析といった処理をシームレスに行うことができるのが特徴で、データがバラバラに保管してあったとしても移動させる必要がありません。
また、データを保管する”ストレージ”、分析などの処理を実行する”コンピュート”のリソースが分離されているため、複数のユーザーが同時に利用してもパフォーマンスが低下したり、データの整合性を損なったりすることがありません。
もう一つの特徴は、サードパーティのツールやデータ提供のサービスを行っていることです。
利用できるツールは、分析データの可視化やAI・機械学習の導入など多岐にわたります。
提供データも幅広く、S&Pマーケットに関するものや小売webサイトのデータを集計したもの、コロナ(COVID-19)に関するものまであります。
また、このデータマーケットプレイスでデータを公開・提供することで、収益化することも可能です。
1-3. チャート
スノーフレークの株価チャートはこのようになっています。2020年9月にIPOした後、11月中旬~12月中旬にかけて上昇し、一時は400ドルを超えていました。
その後は値下がりしたものの、2021年5月の厳しい地合いを抜けた後再び上昇しています。
ただ、直近は市場の波もあってか、少々値下がりしています。(2021年10月6日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- IPOで資金は潤沢にある
- 同様に自己資本比率はとても高い
- キャッシュフローは良くない
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
IPOからあまり時間が経っていないこともあり、貸借バランスは”安定タイプ”です。
流動比率は約550%、当座比率も約530%で、短期の資金繰りに問題はありません。
固定比率も約33%と良い数値です。
2-1-2. 資本の比率
IPOして数か月後の数値なので、自己資本比率は83%とかなり高くなっています。
2-1-3. キャッシュフロー
2021年1月期は営業活動がマイナス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローもマイナスです。
事業の赤字が大きく営業活動がマイナス収支で、投資活動は投資(有価証券など)を大量に購入したことによる大きなマイナス収支となっています。
一方、財務活動はIPOによる資金調達によって大きなプラス収支です。
2-1-4. 項目まとめ
IPOによって資金は潤沢にある状態です。
ただ、事業は赤字で、キャッシュフローも良くない状態と言えます。
2-2. 収益性
- 赤字のためROE・ROAともにマイナス
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
赤字が続いているため、ROEはマイナスです。
また、IPO前の2020年1月期までは、償還可能株式を除くと債務超過となる状態でした。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
ROAもROEと同様にマイナスです。
2021年1月にマイナス値が小さくなっていますが、これはIPOによって多額の現金(その後投資に回している)を調達したためです。
純損失額は年々増加しています。
2-2-3. 項目まとめ
事業は赤字続きで、現状の収益性はほぼない状態です。
2-3. 経営の効率
- 回転率は低い
- IPOによって資産が増加したことが影響
2-3-1. 各回転率
総資本回転率は0.1回、固定資産回転率は約0.4回とどちらも低いです。
IPOで得た資金を長期・短期の投資に回しているため、売上に対して資産はかなり大きい状態です。
また、棚卸資産(在庫)はありません。
2-3-2. 項目まとめ
IPOで得た資金による投資資産が非常に大きく、現時点では回転率は低いです。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上は2年連続YoY100%超え
- 営業損失も増加したが、粗利率は上昇
- 売上高研究開発費率は平均の約8倍
2-4-1. 売上高と営業利益
売上は年々増加しています。
2020年1月期の売上は前年比174%増加、2021年1月期は前年比124%増加となっています。
従量課金のビジネスモデルを取っているため、既存の顧客による利用が増加し、売上増加につながりました。
製品利用が100万ドルを超える顧客が2020年1月期は41社だったのに対し、2021年1月期は77社に増えています。
また、値引き販売の統制を強化し、販売価格も約8%引き上げることができました。
一方、営業損失も増加を続けています。
製品原価となるパブリッククラウドへのインフラ費用の支払い額が増加した(原価には一部人件費等も含む)他、従業員が増えたことによって人件費も増加しています。
ただ、原価の金額自体は増加していますが、2021年1月期の粗利率は59%となり、前年の56%から上昇しました。
2-4-2. 研究開発費
2021年1月期の売上高は約592.05百万ドル、研究開発費は約237.95百万ドルだったので、売上高研究開発費率は40.2%となり、平均の約8倍です。(科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は5.2%とされている)
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
年間での売上の伸びが大きく、研究開発にも積極的な内容です。
2022年1月期の上半期(記事作成時点の最新決算は第2Q)を見ると売上は前年同期比107%の増加となっており、若干伸び率は落ちてきているものの、まだまだ大きな成長を見せています。
ただ、営業損失の拡大も続きそうで、同様の上半期でも前年同期比133%増加してしまっています。
3. まとめ
クロとしては、スノーフレーク(SNOW)は売上の拡大は続きそうだが、その先が気になる銘柄です。
従量課金モデルと提供サービスがマッチした魅力的な事業を行っていると感じましたが、データウェアハウスサービスを提供するライバルでもあるAmazonなどへ手数料(クラウドインフラ費用)を支払っている点が気になりました。
2021年1月期の結果を見ると、売上だけでなくこの費用も増加しているため、こちらも使えば使うだけコストが増える従量課金型ではないか(多少割安になる可能性もあるが)と考えられます。
まだまだ売上は伸びそうですが、この手数料の存在を考えると、このまま売上を拡大し続けても黒字化するのが難しいのではないかと少々不安です。
今回の記事はSnowflake Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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