スナップ(Snap Inc / SNAP)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. Snap Inc(SNAP)について
1-1. 業種
ソフトウェア、SNS(Snapchat)、電子テクノロジー
1-2. 事業の概要
スナップは、若者の支持を集めるSNS”Snapchat(スナップチャット)”を運営し、広告収入を得る企業です。
スナップチャットは、カメラ・写真・動画の共有に重点を置いており、投稿が時間経過で消えるという特徴を持っています。
他のSNSのようにメッセージや投稿が後に残らないため、気軽に使えるのが魅力です。(ちなみにInstagramのストーリーはスナップチャットを真似たと言われています)
また、アプリのデフォルト画面はカメラアプリとなっており、多数のAR(拡張現実)フィルターが用意されています。
そのため、ユーザーはユニークな写真を簡単に撮影・共有できるのです。
こういった特徴を生かし、スナップは一般的な広告だけでなく、”AR広告”も提供しています。
ユーザーは広告主の商品(メガネのClearlyやスニーカーのNIKE、他にもGucci、ジャガーなど、様々な企業が利用している)をAR技術とカメラ機能で簡単に試着することができ、購入画面に誘導されます。
10代から強い支持を得ており、Instagramからスナップチャット(とTicTok)への若いユーザーの流出も報じられています。
1-3. チャート
スナップの株価チャートはこのようになっています。
2020年10月頃から上昇し、右肩上がりの成長を続けていましたが、2021年10月の第3Q決算(iOSのユーザーデータ収集制限などで打撃を受けた)を受け急落しました。
しかし2022年2月、第4Q決算で初の黒字となり、株価は一日で約59%上昇しています。(2022年2月7日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- ひとまずの資金繰りは問題なし
- 自己資本比率は50%
- キャッシュフローは良くないが
2021年は営業活動がプラスに
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは”安定タイプ”です。
流動比率は約570%、当座比率は約559%あり、十分すぎる程の流動資産を確保しています。
固定比率は71%で全く問題ありません。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は50%と高い数値です。
2-1-3. キャッシュフロー
営業活動がプラス、投資活動がプラス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。
通年決算ではまだ事業が赤字です。
しかし、株式報酬を多用しているためこの戻入れ額が非常に大きく、営業活動はプラス収支となっています。
また、損失(赤字)額の大きさや、株式報酬額が小さかった(2021年と比較して)ことから、2020年まではマイナス収支でした。
投資活動では、売買・満期保有目的の有価証券購入に毎年多額の資金を投じています。
そのため、売却や満期から得られるキャッシュも大きく、今年はプラス収支となりました。
財務活動では、毎年転換社債を発行して資金を調達しているため、プラス収支が続いています。
2-1-4. 項目まとめ
ひとまずの資金繰りに困ることはなさそうです。
また、株式報酬の大きさが影響しているとはいえ、2021年は営業活動のキャッシュフローを黒字化できました。
ただ、毎年債務を増加させて資金調達を行っています。
2-2. 収益性
- 赤字続きだが損失を削減中
- 2021年第4Qに初の純利益発生
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
赤字続きでROEもマイナスですが、損失額が減少し続けていることもあって、段々とマイナス値は小さくなっています。
特に2021年は、損失額を前年の約半分にまで削減することができました。
それ以上にROEのマイナス値が小さくなっているのは、株式報酬(ストックオプションなど)や転換社債用の株式発行によって自己資本が増加したためです。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
ROAもROE同様にマイナス値を年々小さくしています。
また、ROA計算の分母となる総資産は年々増加しています。
2-2-3. 項目まとめ
赤字続きで収益性はほぼありませんが、段々と損失を削減しており、2021年第4Qに初の純利益を生み出しました。
2-3. 経営の効率
- 総資本回転率・固定資産回転率は低い
- 棚卸資産の保有はなし
2-3-1. 各回転率
総資本回転率は最低ラインの1回よりかなり低く、固定資産回転率もあまり高くありません。
過去の買収によって”のれん”資産が大きくなっていることや、現金・短期投資用の有価証券を多く保有していることが影響しています。
なお、棚卸資産の保有はありません。
2-3-2. 項目まとめ
回転率は低く、資産の大きさから見る効率性は高くありません。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上は増加を続け、2021年は前年比64%の成長
- 赤字続きだが損失額は減少傾向
- 売上高研究開発費率は平均の9倍超え
2-4-1. 売上高と営業利益
売上は増加を続けており、特に2021年は前年比64%もの成長を見せました。
DAU(デイリーアクティブユーザー)は増加の一途をたどっており、2021年第4Qでは319百万人(3億1,900万人)に達しています。
これは一年前の2020年第4Qと比較して20%の成長です。
また、ユーザーあたりの平均収益額も、季節要因による上下(第4Qは高く、第1Qに下がる)は見られますが、継続して増加傾向にあります。
赤字続きですが、営業損失は毎年減少しています。
人員の増加によって人件費も増えていますが、売上が大きく成長しているため、損失額は小さくなってきています。
2-4-2. 研究開発費
2021年1月期の売上高は約4,117百万ドル、研究開発費は約1,565百万ドルだったので、売上高研究開発費率は38%で、平均の約9倍という数値です。(科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は4.1%とされている)
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
売上の増加、損失の減少、非常に高い研究開発費率と、成長しそうな要素が揃っています。
アクティブユーザーも増加していますし、このままいけば安定した黒字化も夢ではありません。
気がかりなのはiOSのアップデートをはじめとした、ユーザーデータ収集への制限、個人情報保護の世界的風潮です。
2021年第3Qには、このiOSの制限によって”予想以上の打撃”を受けたとしていたスナップなので、第4Qが好調だったとはいえ、今後同じような個人情報・プライバシーデータの制限が増え続けた場合、業績に悪影響が出ることも考えられます。
なお、2021年第4Qの業績・ガイダンスはこちらにまとめてあります。
3. まとめ
スナップ(SNAP)の業績の変化(売上・ユーザーの増加、損失の削減)と成長は魅力的ですが、クロとしては一旦様子を見たいと思います。
前述した、世界的なユーザーデータの収集制限の傾向が気がかりですし、新しいものを積極的に取り込む若いユーザーがメインターゲットとなると、流行サイクルも短い可能性があると考えるからです。
ただその一方で、スナップはAR広告という独自の強みを持っています。
ユーザーの行動から興味関心を分析しクリックされそうな広告を掲載する従来の広告とは違う形の製品なので、ユーザーデータに制限がかかる中でも成長を続けられるかもしれません。
いずれにしても、金融引き締めで不安定な状況が続く現株式市場では購入しづらいので、それらの落ち着きを待ちつつ、スナップの今後の業績を見て、改めて判断したいと思います。
今回の記事はSnap Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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