スターバックス(Starbucks Corp / SBUX)の2021年決算書(10-K)が公表されたので、分析やニュースについて改めてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. Starbucks Corp(SBUX)について
1-1. 業種
サービス、レストラン(コーヒー、ファストフード)
1-2. 事業の概要
スターバックスは、言わずと知れた有名なコーヒーショップチェーン”STARBUCKS”を展開する企業です。
買収によって様々なブランドを獲得しており、紅茶やフレーバーティーを扱う”TEAVANA”やフルーツジュース・スムージーを手掛ける”Evolution Fresh”などはSTARBUCKSの商品ラインナップにも含まれています。
また、比較的安価なコーヒーブランドとして”Seattle’s Best Coffee”を展開しています。(なおシアトルズベストコーヒーの日本法人はJR九州グループ)
他にも、売上の一部で基金への寄付を行う”Ethos Water”というボトル入りの飲料水ブランドも持っています。
STARBUCKSの店舗は直営店とライセンス店があり、直営店が最も多いのはアメリカ(2021年10月3日時点で8,947店)です。
次点で直営店が多いのは中国(5,358店。一年前と比較し600店以上増加)、その次に日本(1,546店)、カナダ(908店。200点以上の減少)と続きます。
直営店は、交通量が多く視認性の高い場所を選んで出店しています。
また、ライセンス店はアメリカの6,497店が飛びぬけて多く、他に1,000店舗を超えているのは韓国の1,611店のみです。
以前は約80%が顧客の「外出中」の利用でしたが、コロナ感染拡大を受け、一部店舗の閉鎖やアプリでの事前注文・決済が可能な商品ピックアップ型店舗の導入が進んでいます。
また、中国で導入されているモバイルオーダー・決済専用店舗”Starbucks Now”もあります。
1-4. チャート
スターバックスの株価チャートはこのようになっています。2020年2月頃のコロナ感染拡大によって一時株価は下落したものの程なく上昇に転じ、8月末頃にはコロナ前の水準に戻りました。
しかし7月下旬から徐々に下がり始め、現在もその傾向が続いています。(2021年12月6日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- ひとまずの資金繰りは問題なし
- 債務超過状態
- キャッシュフローや各種数値は改善傾向
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

(単位:百万ドル)
昨年に続き、貸借バランスの形が崩れている債務超過状態です。
主な要因は2018年から多額の社債を発行していることで、コロナによる経営難から起きたものではありません。
なおこうして調達した現金の事業以外での使い道として、自社株買いが挙げられます。
2018年、2019年は自社株買いの金額が特に大きく、2019年は102億ドルにも達していました。(なお2017年は20億ドル、2020年は17億ドル)
アメリカでは債務超過であっても日本ほど気にされないということもあり(特にスターバックスは非常に大きな企業で信用もあると考えられる)投資家にも受け入れられているようです。
流動比率は約120%、当座比率は約95%と若干比率が低いですが、ひとまずの資金繰りに問題はありません。
また、昨年よりも上昇しています。
2-1-2. 資本の比率
債務超過状態のため、自己資本比率はマイナスです。
なおマイナス値は年々小さくなっています。
2-1-3. キャッシュフロー
2021年9月期は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。
コロナ感染拡大による打撃から回復して再び大きく利益を出せるようになり、営業活動によるキャッシュフローはプラス収支(昨年比約275%増加)です。
投資活動は昨年同様、プラントや設備への資金投入の他、投資用の有価証券などの購入を行ってマイナス収支となっています。
財務活動は債務の返済や配当金の支払いを行ったためマイナス収支です。
なお、2021年9月期は自社株買いを行いませんでした。
2-1-4. 項目まとめ
債務超過の状態は健全とは言えませんが、ひとまず問題はなさそうです。
また、各種数値は改善してきています。
2-2. 収益性
- 2020年9月期は不調だった
- 2021年9月期は再び平均以上の収益性
2-2-1. ROE(自己資本利益率)

2018年は自社株買いによる資本の減少と、多額の社債発行による負債増加で自己資本比率が低下(約5%だった)し、ROEが非常に高く出ています。
2019年、2020年、2021年は債務超過状態のため割愛します。
ちなみに、この表にない2016年は48%、2015年は47%と、いずれも米国平均の約3倍の数値を出していました。
2-2-2. ROA(総資産利益率)

2019年までのROAは米国平均の約2~3倍ありましたが、2020年に一気に低下しています。
この低下は、コロナによる不調、会計基準変更によってリース資産・負債が一気に計上され総資産が膨れ上がったことによるものです。
2021年9月期(10月3日締め)は再び米国平均を超える数値に戻っています。
2-2-3. 項目まとめ
2021年9月期を見ると、コロナ前同様、平均以上の収益性に戻っています。
昨年のリース資産・負債の計上があるので、それ以前の数値まで戻ることはないかもしれませんが、それでも米国平均値の1.5~2倍のROAです。
2-3. 経営の効率
- 総資本回転率は許容ライン
- 2021年9月期は売上が増加し回転率上昇
2-3-1. 各回転率

2021年9月期は売上が再び増加に転じたこともあり、各種回転率は上昇しています。
また、総資本回転率も1回に近く、許容範囲と言えるでしょう。
2-3-2. 項目まとめ
リース資産によって固定資産回転率が少々低くなっていますが、昨年比では上昇していますし全体的に問題のない数値です。
2-4. 成長している・していく企業か
- 2020年9月期は不調
- 2019年9月期までは売上増加が続いていた
- 2021年9月期は2019年9月期を超える結果
2-4-1. 売上高と営業利益

売上は年々増加していましたが、2020年9月期はコロナ感染拡大の悪影響などで減少しました。
しかし2021年9月期は、コロナ前の2019年9月期を上回る売上を達成しています。

今期は営業利益も大きく増加しています。
なお、事業外の利益として、韓国の合弁事業の売却による865百万ドルが発生しています。
2-4-2. 項目まとめ
2020年9月期の不調を経て、今期はコロナ前の売上を更に超える結果となりました。
社会需要に合わせて新形態の店舗も導入を進めており、成長の余地はまだありそうです。
最近話題となっている新しい変異株(オミクロン株)が今後の社会活動にどのような影響を及ぼすかはまだわかりませんが、デルタ株の脅威もあった今年一年間の結果を見る限り、最初の感染拡大のような大きな問題が起きなければ、そこまで打撃を受けずに事業を続けられそうです。
3. まとめ
クロとしては、スターバックス(SBUX)は今後の売上拡大は見込めそうだが、今は様子見をしたい銘柄です。
債務超過の点は改善傾向にありますし、売上がコロナ前の2019年を上回ったという点からは更なる成長が見込めるのではないかと考えています。
ただ、中国への出店が非常に多いため、未だ増えていく情勢不安のニュースを見ると、わざわざ”今”リスクを取って保有する必要はないと判断しました。
今回の記事はStarbucks Corpの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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