センチネルワン【S】銘柄分析_AIを活用した自律型サイバーセキュリティー企業

米国株の年次決算書・銘柄分析
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センチネルワン(SentinelOne Inc / S)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

1. SentinelOne Inc(S)について

1-1. 業種

電子テクノロジー、AI、サイバーセキュリティソフトウェア

1-2. 事業の概要

センチネルワンは、AIを活用したクラウドベースのXDR自律型プラットフォーム”Singularity”を提供する企業です。

XDRとは、X Detection and Response(Xは変数を表す)の略で、EDR(Eは”エンドポイント”=”PCなどの末端機器”を表す。末端機器での検知・対応)やNDR(Nはネットワークを表す。不審な通信の検知・対応)が発展した”次世代型エンドポイントセキュリティ”です。
エンドポイントだけでなく、ネットワークやクラウドまでの全てを監視対象とするのが特徴で、今まで見えなかった攻撃を可視化することができ、それらの検出・対応が可能となります。

センチネルワンはこのプラットフォームをサブスクリプションで提供し、収益を得ています。

巧妙に進化していくサイバー攻撃に対し、AIを用いた”素早く”、”スケールが大きく”、”高精度”な自律的防御を目指し、拡大を続ける無数のソースからリアルタイムでデータを取り込み処理するプラットフォームを開発したセンチネルワンですが、その事業形態はクラウドストライクとかなり近く、競合しています。
大きな差別化ポイントは今のところありませんが、センチネルワンは”AIを活用したXDR”プラットフォームを強く押し出しています。

なお、センチネルワンは各種OSやパブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドなど、様々な環境に導入が可能としており、顧客満足度は97%と高く(センチネルワンのIPO目論見書より)、顧客一覧には、政府や自動車の有名ブランドであるアストン・マーティン、食品流通企業のシスコなどが名を連ねています。

1-3. チャート

センチネルワンの株価チャートはこのようになっています。IPO後はしばらく45~50ドルで推移していましたが、8月下旬頃から大きく上昇しました。
現在は一旦停滞気味です。(2021年9月10日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 債務超過状態だったがIPOで改善
  • 事業は赤字・フリーキャッシュフローもマイナス

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2021年決算書におけるS貸借バランス

(単位:百万ドル)

2021年1月時点では債務超過状態(負債の特徴を併せ持つ償還可能株式が6億2,000万ドルあったため、これを自己資本から除いて計算した場合)でしたが、この後のIPOによって改善されています。

なお、流動比率は約360%、当座比率は約340%で、IPO後は更にその比率が高まっています。

2-1-2. 資本の比率

2021年1月時点では債務超過状態ですが、記事作成時点の最新決算となる第2Qでは自己資本比率87%と非常に高い数値となっています。
これはIPOで株式を発行したためです。

2-1-3. キャッシュフロー

2020年は営業活動がマイナス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。

事業が赤字のため営業活動がマイナス収支、償還可能株式発行による資金調達で財務活動がプラス収支でした。

2-1-4. 項目まとめ

IPOで資金調達を行い、2021年7月末時点では、ひとまず手元資金は十分となりました。
キャッシュフローについてはまだまだ改善の必要があります。

2-2. 収益性

  • 赤字続き
  • 2020年は損失増加、資産も増加

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

債務超過のため割愛

2-2-2. ROA(総資産利益率)

SのROA(総資産利益率)推移【2021年】

赤字のため、ROAはマイナスです。
なお赤字額は増加しており、ROAのマイナス値の減少は、総資産の増加によるものです。

2-2-3. 項目まとめ

売上を大きく拡大していますが、現時点では赤字続きで収益性はほとんどありません。

2-3. 経営の効率

  • 総資本回転率は低い
  • 棚卸資産はない

2-3-1. 各回転率

Sの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率【2021年】

総資本回転率は0.2回と最低ラインに全く届いていません。

固定資産回転率は約1.7回で、棚卸資産はありません。

2-3-2. 項目まとめ

総資産から見た売上はまだまだ足りません。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上高は前年比100%増加
  • 顧客増加、従業員増加で原価や費用も増加
  • 2021年上半期(記事作成時点の最新決算は第2Q)も売上が大きく成長
  • 売上高研究開発費率は平均の15倍

2-4-1. 売上高と営業利益

Sの売上高推移【2021年】

2021年1月締めの1年間で売上は大きく伸び、前年比(YoY)100%を達成しました。

Sの営業利益(損失)推移【2021年】

一方で原価や各種費用も大きく増加し、事業からの損失、最終的な純損失も増加しています。

顧客の増加によってデータ使用量が増えてインフラ費用が増加したこと、人件費の増加(株式報酬費用含む)などが主な要因です。

なお、この記事作成時点で最新の決算となる第2Qでも売上と損失の増加は続いています。

2-4-2. 研究開発費

2020年の売上高は約93.06百万ドル、研究開発費は約62.44百万ドルだったので、売上高研究開発費率は67.1%となり平均の約15倍です。(科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は4.4%とされている)

※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019

2-4-3. 項目まとめ

売上の伸びがかなり驚異的で、それが記事作成時点(2021年第2Q)まで続いています。
同時に費用の増加も大きく損失が増えていますが、まさに今、顧客を拡大中のテクノロジー企業なので、多少は許容範囲だと考えます。

これからの成長にも期待したい内容です。

3. まとめ

クロとしては、センチネルワン(SentinelOne Inc)は比率を抑えつつ保有したい銘柄です。

更なる売上の伸びに期待しているのと、サイバーセキュリティはコロナ社会が終わった後も継続的に需要があると考えるからです。
また、いたちごっこを続けてきたサイバー攻撃の脅威にAIで高速に対応することは今後ますます必要になりそうですし、顧客満足度が高いという点も強みです。

一方で、驚異的ともいえる現状の売上の伸びがずっと続くことは無いと考えられるので、成長が鈍化した際に株価が影響を受ける可能性もあると考えています。
また、損失の拡大がかなり大きいという点や、競合となるクラウドストライクが既にかなりの顧客を掴んでいる点も不安点です。

ちなみに2022年1月締めの通年ガイダンス(2021年9月10日時点)では、売上1億8,800万ドル~1億9,000万ドルの予想となっており、もし達成されれば再び前年比100%の成長となります。

今回の記事はSentinelOne Incの決算書・目論見書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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