ロク(Roku Inc / ROKU)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. Roku Inc(ROKU)について
1-1. 業種
ストリーミング配信、広告、家電製品
1-2. 事業の概要
ロクは、テレビ(TV)向けのコンテンツストリーミング配信プラットフォームを提供する企業です。
コンテンツ配信はもちろん、そのための関連機器(プレーヤーやストリーミング・スティック、始めからRoku OSが組み込まれたRoku TVといった家電製品・デバイス)の提供、そしてコンテンツを無料で楽しむユーザー向けの広告の販売を行っています。
無料で様々な番組を配信する代わりに広告を入れることで、事業の収益化を図っているのです。
また、NetflixやAmazonプライムビデオなどの会員であれば、それらのコンテンツを楽しむこともできます。
他の配信プラットフォームとは異なり、自社の顧客の囲い込みのために他社コンテンツを除外するといったしがらみが無いため、非常に幅広いエンターテインメントを提供することが可能です。
数年前から増えたとされるケーブルテレビの解約(コード・カッティングと呼ばれる)、そして新型コロナ感染拡大による巣ごもり需要が追い風となり、ユーザーと広告主を多く取り込み急成長を遂げました。
特に広告においてはテレビと異なり、広告主はユーザーをターゲティングし、広告効果を様々なデータから分析することが可能となっています。(ロクは広告主に広告データを提供している)
また、ロクのストリーミング配信にアクセスするためのデバイスは比較的安価だとされており、ユーザーの導入ハードルを下げるのに一役買っています。
1-3. チャート
ロクの株価チャートはこのようになっています。
2020年2月頃から新型コロナ感染拡大によって一時下落しましたが、その後は非常に強く上昇し、500ドル近い株価に到達していました。
その後一度大きな上下を見せた後、2021年7月下旬以降は下落が続いています。(2022年6月5日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 資金繰りは問題ない
- 自己資本比率は高め
- キャッシュフローは比較的安定
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは”安定タイプ”です。
当座比率は400%近くあり、短期の資金繰りは問題ありません。
固定比率も37%と優秀です。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は68%とかなり高めです。
ただ、この数値には株式発行を行ったことが大きく影響しています。
2-1-3. キャッシュフロー
営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。
事業が黒字となったのは2021年度ですが、それ以前から営業活動によるキャッシュフローはプラス収支が続いています。
これには、株式報酬の戻入れの影響も大きいです。
また、財務活動では、株式発行による資金調達が行われています。
2-1-4. 項目まとめ
ひとまず資金繰りに困ることはなさそうです。
営業活動によるキャッシュフローはプラス収支が続いており、更に2021年度に黒字となったことも良い傾向です。
2-2. 収益性
- 2021年度は黒字化しROE・ROAがプラス
- ROAは米国平均に近い数値
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
2021年度に黒字となったことで、ROEもプラスになりました。
しかしまだまだ米国平均の数値(16%~18%)には届きません。
なお、自己資本は年々増加しています。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
ROAもROE同様に、2021年度はプラスです。
また、こちらは米国平均にかなり近い数値が出ています。
総資産についても、年々大きく増加しています。
2-2-3. 項目まとめ
2021年度は黒字となりました。
ROEが低いものの、ROAは米国平均とほぼ同程度の数値です。
またROEの低さには、自己資本が大きいことも影響しています。
2-3. 経営の効率
- 総資本回転率が低下傾向
- ただし回転率は極端に低くはない
2-3-1. 各回転率
売上は年々増加しているものの、総資本の増加が非常に大きいため、総資本回転率は低下傾向にあります。
ただ、それでも0.7回程度はあるため、まだ許容範囲内もしくは少々低い程度です。
一方棚卸資産はあまり増加しておらず、こちらは売上の成長を反映して回転率が上昇しています。
2-3-2. 項目まとめ
総資本回転率はギリギリ許容範囲程度とも取れますが、低下傾向にあるのが気になります。
2-4. 成長している・していく企業か
- 2021年度の売上成長率は55%
- 2020年度は新型コロナで急成長
→その成長が落ち着きを見せている - 2021年度に黒字達成も、2022年第1Qは赤字
- 売上高研究開発費率は平均の3倍以上
2-4-1. 売上高と営業利益
売上は年々増加しており、2021年度は前年比55%の成長となりました。
しかしプレイヤー機器の売上は前年よりも6%減少しています。
これは、新型コロナ感染拡大による需要増加があった前年度と比べ、プレーヤー機器の販売数量減少や平均販売価格の低下などが起きたためです。
また、2022年度第1Q(記事作成時点の最新決算)では前年同期比28%の成長にとどまっています。
こちらの成長率低下も、新型コロナ感染拡大による急成長が落ち着いてきていることが理由となっています。
また、2022年度第1Qを前四半期(2021年度第4Q)と比較すると売上の減少も見られるのですが、こちらにはホリデーシーズンなどの季節性も大きく影響しています。
実際、2020年度第4Qと2021年度第1Qを比較した際も、ホリデーシーズンを含む2020年度第4Qの方が売上が大きい結果でした。
また、アクティブアカウントは2021年12月末時点で6,010万(前年比17%増加)、2022年3月末時点は6,130万(前年同期比12%増加)とされています。
2021年度は営業利益が発生しました。
これは主にプラットフォーム収益(サブスクリプションや広告からの収益)の成長によるものです。
一方、プレーヤー機器セグメントは原価が売上を超えてしまっており、赤字となりました。
これにはサプライチェーンの問題による製造コスト・運賃増加も大きく影響しています。
また、2022年度第1Qでは再び営業損失(23.5百万ドル)が発生しています。
これは引き続きプレーヤー機器セグメントが赤字であることに加え、コンテンツ料の増加などでプラットフォーム収益(サブスクリプションや広告からの収益)の粗利率が低下したことも要因となりました。
なお、サプライチェーンの問題は今後も続くと見込まれており、プレーヤー機器セグメントの赤字はまだ続きそうだとされています。
2-4-2. 研究開発費
売上高は約2,764.58百万ドル、研究開発費は約461.60百万ドルだったので、売上高研究開発費率は16.7%となります。
科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は5.2%とされているため、平均の約3倍以上という数値です。
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所 科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
売上は拡大しアクティブアカウントも増加を続けていますが、新型コロナ感染拡大による2020年度の成長の勢いは落ち着いてきています。
第1Qは季節的な要因としても伸び悩む時期なので次回決算次第という面はありますが、サプライチェーンの問題によるマイナス影響が今後も続く見込みとなっている点は気がかりです。
3. まとめ
クロとしては、ロク(ROKU)の購入は一旦見送ります。
2021年度の黒字化で勢いづくかと思いましたが、2022年度第1Qに再び赤字となったこと、前年同期比の成長率が2021年度と比較して半減したことが気になります。
しかしアクティブアカウント数はまだ増加を続けており、2022年第1Q決算時の通年ガイダンスでは35%の成長率を宣言しているので、次回決算で改めて検討したいと思います。
今回の記事はRoku Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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