ロブロックス(Roblox Corp / RBLX)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
■2022年度第1Qはこちら
1. Roblox Corp(RBLX)について
1-1. 業種
ソフトウェア、メタバース
1-2. 事業の概要
ロブロックスは、仮想空間・共同体験プラットフォームを提供しており、メタバース企業の代表の一つとしてよく挙げられます。
ロブロックスが提供している3Dの仮想空間プラットフォームはVRに限定したものではなく、現状はスマートフォンからのアクセスが主流です。(2021年度の実績はモバイルが75%、デスクトップが23%)
2021年末時点ではユーザーが180ヶ国以上、開発者も170ヶ国以上にいるとされ、幅広い地域をカバーしています。
ユーザーは自分の分身となるアバターを作成し、プラットフォーム内で他のユーザーと交流し、様々なゲームを一緒に楽しむことができます。
また、ロブロックスはゲームコンテンツを作成するための”Roblox Studio”という無料ツールも提供しており、ユーザー自身がロブロックス・プラットフォームでゲームの制作・配信を行うことが可能です。
こういったゲームの一部アイテムやアバターなどのコンテンツは”Robux”という通貨(ユーザーは課金によって入手できる。また、コンテンツの開発者・クリエイターは現実の通貨に変換可能)によって獲得でき、開発者・クリエイターはコンテンツ提供で収益化を図ることができるため、プラットフォーム内での経済活性化、コンテンツの充実に繋がっています。
ちなみにゲーム内通貨Robuxは、一回限りの購入とサブスクリプションの両方に対応しています。
ユーザーの多くが小学生という点も特徴で、2021年度のユーザー内訳は、8歳以下が23%、9歳~12歳が26%(この時点でユーザー全体の49%を占める)、13歳~16歳が15%、17歳~24歳が19%、25歳以上は16%となっています。
また、アメリカ・カナダやヨーロッパのユーザーが多く、これらの国のユーザーは全体の61%を占めます。
なお今後の成長戦略として、ユーザーの年齢層拡大や、ブランドとのパートナーシップ(NIKEやGucciなどとの実績あり)、ミュージシャンによるバーチャルコンサートなどのプラットフォーム拡張、国際的なリーチ拡大、開発者支援やサブスクによるマネタイズを挙げています。
1-3. チャート
ロブロックスの株価チャートはこのようになっています。
2021年11月頃に市場の波に乗って急上昇しましたが、その後は下落傾向が続いています。(2022年5月19日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 資産の流動性はひとまず十分
- 自己資本比率は13%と低い
- 赤字だがフリーキャッシュフローはプラス続き
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは”ギリギリ運用タイプ”です。
流動比率は173%、当座比率は153%と十分な数値なので、資金繰りはひとまず大丈夫だと言えます。
固定比率が100%を超えていますが、純資産と固定負債で十分まかなえているので、こちらもひとまずは安心できます。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は約13%と低めの数値です。
これは2021年の上場の際にIPOではなく直接上場という形を取っており、他のIPO企業のような資金調達を行っていないためです。
2-1-3. キャッシュフロー
営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。
事業は赤字ですが、サブスク課金による収益の繰延などが増加しており、営業活動によるキャッシュフローはプラス収支が続いています。
また、2021年度は株式報酬の戻入れも大きくなっています。
投資活動では、サーバーや関連機器などの固定資産の購入、買収による企業統合に関する費用などが発生しており、マイナス収支となりました。
また、財務活動では社債発行などによる多額の資金調達(10億ドル)が行われたため、大きなプラス収支となっています。
2-1-4. 項目まとめ
現状、期限の近い負債に対応できるだけの資金力はあるようですが、自己資本比率が低いことが気になります。
ただ、営業活動によるキャッシュフローやフリーキャッシュフローのプラス収支が続いている点や、社債での資金調達を行った点を見ると、ひとまずは問題なさそうです。
2-2. 収益性
- 赤字続きで2020年度・2021年度は損失急増
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
2020年度、2021年度と損失が急激に増加していますが、2021年度はそれ以上に自己資本が大きくなったため、ROEのマイナスが小さくなっています。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
総資産も年々増加しているため、ROAはROEと近い動きをしています。
2-2-3. 項目まとめ
赤字続きで、特に直近の2年間は損失額が大きく増加しました。
なお、自己資本・総資産は年々増加しています。
2-3. 経営の効率
- 現金などを多く保有
- 総資本回転率は低め
2-3-1. 各回転率
総資本回転率は約0.4回で、最低ラインの半分以下の低い数値です。
ただ、2021年度末の資産の多くは現金・同等物のため、固定資産回転率は2回以上あります。
なお在庫が必要ないビジネスモデルのため、棚卸資産回転率はありません。
2-3-2. 項目まとめ
総資本の大きさから見た売上は、まだ物足りない状態です。
2-4. 成長している・していく企業か
- 2021年度は100%超えの売上成長
- 営業費用が増加し損失拡大
- DAUは増加中
- 売上高研究開発費率は平均の5倍以上
2-4-1. 売上高と営業利益
2021年度の売上は、前年度比108%増加と大きく成長しました。
この急成長には、新型コロナ感染拡大によるニーズの高まりも大きく影響しています。
DAU(デイリーアクティブユーザー)も増加の一途を辿っており、中でも特に2020年度第2Qの増加は著しいものでした。
なお2022年度第1Q(記事作成時点の最新決算)の売上は537百万ドルで前年同期比39%の成長を達成していますが、繰延などを調整する前の売上高”Bookings”は減少し始めています。
営業損失も年々増加しており、2021年度は前年度比94%の増加となりました。
粗利率は74%で前年通りですが、事業に関する費用は全体的に大きく増加しています。
上場のための人件費等やプラットフォーム強化など、様々な面で費用がかさむ一年となりました。
2-4-2. 研究開発費
売上高は約1,919.18百万ドル、研究開発費は約533.21百万ドルだったので、売上高研究開発費率は27.8%となります。
科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は5.2%とされているため、平均の5倍以上の数値です。
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
2021年度は費用も膨らんだものの、売上が非常に大きく成長しました。
しかし記事作成時点の最新決算である2022年度第1QはBookingsが減少し始めており、世界的なステイホームなどの後押しが弱まっているのが感じられます。
ただ、DAUは増加を維持しています。
3. まとめ
クロとしては、ロブロックス(RBLX)は、少量の保有を検討したい銘柄です。
ステイホームの特需が落ち着いてきており短期的には大きな成長を期待しづらいですが、まだまだユーザーを拡大する余地はありそうなので、長期的な成長に期待したいと思います。
ただ、赤字が拡大している点や、2020年の金融緩和によって急激に期待の高まった銘柄という点から、リスクは無視できません。
また、金融引き締め議論などによる不安定な相場が続くと考えられるので、購入タイミングは様子を見たいところです。
今回の記事はRoblox Corpの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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