ペイパル・ホールディングス(PayPal Holdings Inc / PYPL)の決算書(10-K)・銘柄分析を、2021年最新決算を踏まえた内容に更新しました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
■2022年第1Q決算はこちら
1. PayPal Holdings Inc(PYPL)について
1-1. 業種
電子テクノロジー、ソフトウェア、インターネットサービス
1-2. 事業の概要
ペイパルは、インターネット上の決済サービスで圧倒的なシェアを持つフィンテック(金融テクノロジー)企業です。
PayPalアカウント間での送金やクレジットカード払い、口座振替など複数の支払い方法に対応し、プラットフォーム上ではペイパルが仲介役の働きをするため、クレジットカード番号や口座番号を相手に知られずに支払いを済ませることができます。
加盟店への消費者の支払い、個人間での送金のどちらにも対応しており、後払いのペイディ(Paidy)、消費者行動分析やECの価格比較・割引通知サービスを提供するHoney、Amazonに対応したVenmoなど、多くの関連企業を買収し、幅広くサービスを提供しています。
また、仮想通貨への対応やInstagramとの提携、オムニチャネル・コマース”PayPal Zettle”、銀行のような機能(決済、貯蓄、自動引き落としなど)を持つモバイルアプリなど、様々な取り組みを行っています。
こういった取り組みもあってアカウント数は増加し続けており、2021年末時点でのアクティブアカウント数は4億2600万に達しました。
ただ、”2025年までに7億5,000万アカウントを目指す”という目標は取り下げられています。
なお、株式参入を検討しているという報道がありましたが、記事作成時点ではまだ実現していません。
1-3. チャート
ペイパルの株価チャートはこのようになっています。
2020年2月頃に新型コロナ感染拡大で一時的に価格を下げた後、大きく上昇が続いていました。
しかし2021年7月頃をピークに、株価は下落し始め、先日の第4Qと年次決算発表を受け、更に下降が続いています。(2022年2月5日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- ひとまずの資金繰りは問題なし
- 自己資本比率はあまり高くない
- 自社株の買戻しを行っている
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

(単位:百万ドル)
貸借バランスは”ギリギリ運用タイプ”です。
流動比率は約122%、当座比率も約119%で、短期の資金繰りに問題はありません。
固定比率は約107%で、昨年より上昇してしまいましたが、純資産と固定負債でまかなえているので問題はありません。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は29%と少々低めの数値です。
2-1-3. キャッシュフロー
2021年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。
事業からは安定してキャッシュを生み出しています。
投資活動では、有価証券の売買・満期による支出と収入が大きいです。
自社株の買戻しにも資金を投じています。
2-1-4. 項目まとめ
全体的に特別良い点はありませんが、問題もない状態です。
2-2. 収益性
- 純利益が前年比1%の減少
- ROAは米国平均にぎりぎり届かない
2-2-1. ROE(自己資本利益率)

2020年は新型コロナ感染拡大によって好調かつ事業外の大きな収入(投資による)があったということもあり、2021年は純利益がわずかに(前年比1%未満)減少しました。
また、自己資本の増加も相まって、ROEは低下しています。
ただ、それでも米国平均以上の数値を維持しました。
2-2-2. ROA(総資産利益率)

ROAもROEと同様の推移です。
米国平均(6~8%)にぎりぎり届かない数値です。
2-2-3. 項目まとめ
2020年にコロナ社会となって大きく躍進した半面、2021年は利益が減少(前年比)してしまいました。(ただし事業外収益の影響も大きい)
ROE、ROA、ペイパルの事業(顧客預金などで資産が大きくなりやすい)を考えると、収益性としては米国平均程度です。
2-3. 経営の効率
- 総資本回転率は低いが、事業柄仕方ない
- 棚卸資産はなし
2-3-1. 各回転率

総資本回転率は昨年と変わらず低いです。
顧客口座の預金等が資産として計上されていることや、短期投資に多くの資金を投じていることが影響しています。
棚卸資産はありません。
2-3-2. 項目まとめ
回転率は低いですが、一部銀行のようなサービスを提供し、それに伴う資産が計上されているので、事業効率に特別な問題があるわけではないと考えられます。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上高は増加を続けるも伸びの鈍化が予想される
- 貸倒損失が減少し営業利益増加
- 売上高研究開発費率は平均の約3.5倍
2-4-1. 売上高と営業利益

コロナ社会の追い風を受けた2020年から、売上は更に18%増加しました。
また、2020年は前年比21%成長しており、2022年のガイダンスでは14%以上の成長を見込んでいます。
売上増加は続いていますが、伸びの鈍化は否めません。

営業利益は前年比30%増加しました。
売上増加に伴って費用も増えましたが、貸倒損失が減少したことが利益増加に影響しているようです。
売上高営業利益率は、昨年の15%から17%に上昇しました。
2-4-2. 研究開発費
2021年の売上高は約25,371百万ドル、研究開発費は約3,038百万ドルだったので、売上高研究開発費率は12%で、平均の約3.5倍です。(科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は3.5%とされている)
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
売上、利益は増加を続けていますが、目標の引き下げなどもあり、今後もこれまで通りの成長を維持していくのは厳しそうです。
3. まとめ
クロとしては、ペイパル・ホールディングス(PYPL)の購入は一旦見送りますが、いずれ市場が落ち着いたら改めて検討したい銘柄です。
eBayに関する売上が減少している中でも増収増益を続ける力がありますし、独自ステーブルコインやモバイルアプリの進化、株式市場への参入など、実現すれば大きなメリットとなる施策が報道されています。
これらの続報を待ちつつ、様子を見たいと思います。
また、ペイパルの株価急落理由やニュースなどをまとめた記事もこちらにあります↓
今回の記事はPayPal Holdings Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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