ペイパル・ホールディングス(PayPal Holdings Inc / PYPL)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
■2021年更新版はこちら
1. PayPal Holdings Inc(PYPL)について
1-1. 業種
電子テクノロジー、ソフトウェア、インターネットサービス
1-2. 事業の概要
ペイパルは、インターネット上の決済サービスを提供するフィンテック(金融テクノロジー)企業です。
PayPalアカウント間での送金やクレジットカード払い、口座振替など複数の支払い方法に対応し、プラットフォーム上ではペイパルが仲介役の働きをするため、クレジットカード番号や口座番号を相手に知られずに支払いを済ませることができます。
加盟店と消費者をつなぐだけでなく、個人間での送金、また、Honey(消費者行動分析や、割引通知などの購買補助ソフトウェアの提供を行う企業。ペイパルが買収し子会社となっている)での消費者の購買行動の情報収集も行っています。
ペイパルは世界的に取り入れられており、2020年末時点でPayPalは200以上の市場・100以上の通貨で使用され、有効なアカウント数は3億7,700万となりました。(2021年6月末時点では4億300万アカウント)
一部通貨では、銀行口座への引き出しやPayPalアカウント内での残高保有に対応している他、Venmo(個人間送金アプリ)やXoom(国際送金サービス)なども子会社としており、多様な支払い・送金ニーズに応えています。
加盟店側から見ても、ペイパルのプラットフォームを使用すればPayPalに限らず、クレジットカード、Apple Pay、Google Payなどの支払いも受け入れられるようになるため利便性が高く、場合によっては短期融資を受けることも可能です。
また、仮想通貨の売買や、仮想通貨を支払いに充てるサービス、Instagramとの提携(ショッピングタグが付いた投稿から直接購入できる※PayPalでの支払い)、オムニチャネル・コマース”PayPal Zettle”など、様々な取り組みを見せています。
1-3. チャート
ペイパルの株価チャートはこのようになっています。数年前からじわじわ上がってはいたものの、2020年2月頃にコロナ感染拡大で一時的に価格を下げた後、大きく上昇を始めました。
2021年2月中旬に上昇が一旦止まり、上下を繰り返しつつ、最近は260ドル~300ドルで推移しています。(2021年9月7日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- ひとまずの資金繰りは問題なし
- 自己資本比率は低め
- 事業は黒字だが、投資に多額の資金を使用しているため
フリーキャッシュフローがマイナス
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは”安定タイプ”です。
流動比率は約130%、当座比率も約130%で、短期の資金繰りに問題はありません。
固定比率は約97%です。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は28%と少々低めの数値ですが、問題はありません。
2-1-3. キャッシュフロー
2020年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。
フリーキャッシュフローがマイナスとなったのは、主に投資商品を購入するために415億ドルを投じたためです。
財務活動では、借入を行ったことと、顧客への支払額が変動したことによって、プラス収支となりました。
また、16億ドルの自社株買いも行っています。
2-1-4. 項目まとめ
特別良い内容ではありませんが、大きな問題はありません。
フリーキャッシュフローがマイナスの年が多いですが、近年は投資に注力していることが大きな要因となっています。
自社株買いも継続して行われています。
2-2. 収益性
- 売上・利益拡大が2020年のコロナ社会で加速
- 2020年はROEが米国平均を上回る
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
売上と共に純利益も増加しており、ROEにもそれが表れています。
2020年は、コロナ感染拡大によってオンライン販売・購入が加速したことが後押しとなり、特に大きな伸びが見られました。
2020年のROEは米国平均を上回っています。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
ROAもROEと同様の推移です。
米国平均(6~8%)と比較するとぎりぎり届かない数値です。
2-2-3. 項目まとめ
2020年はコロナ社会という外的要因もあって、非常に大きく成長した一年でした。
2021年は第2Qの売上がアナリスト予想を下回ったりもしていますが、前年同期は超えています。(記事作成時点最新決算より)
2-3. 経営の効率
- 総資本回転率は低いが、事業柄仕方ない
- 棚卸資産はなし
2-3-1. 各回転率
総資本回転率は0.3回と低いです。
これには、顧客口座の預金等が資産として計上されていることや、短期投資に多くの資金を投じていることが影響しています。
固定資産回転率は1.1回で、棚卸資産はありません。
2-3-2. 項目まとめ
回転率は低いですが、一部銀行のようなサービスを提供し、それに伴う資産が計上されているので、事業効率に特別な問題があるわけではないと考えられます。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上高は順調に増加
- 営業利益も増加
- 売上高研究開発費率は平均の約3.5倍
2-4-1. 売上高と営業利益
売上は順調に増加しており、コロナ社会の追い風を受けた2020年は前年同期比21%の売上増加となりました。
営業利益も増加しています。
マーケティング費用や管理費、研究開発費などの費用は増加していますが、売上も大きく伸びていることを表しています。
2019年、2020年共に売上高に占める営業利益率は15%ほどです。
2-4-2. 研究開発費
2020年の売上高は約21,454百万ドル、研究開発費は約2,642百万ドルだったので、売上高研究開発費率は12.3%で、平均の約3.5倍です。(科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は3.5%とされている)
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
売上高と営業利益の継続的な成長が見られ、今後にも期待したい内容です。
2020年末時点で約26,500人の従業員を抱える規模になっていますが、研究開発(技術開発)には意欲的な姿勢が維持されています。
3. まとめ
クロとしては、ペイパル・ホールディングス(PayPal Holdings Inc)は成長に期待したい銘柄です。
売上と利益を継続的に伸ばしており、売上高営業利益率も安定して15%前後を維持している点が魅力的です。
また、株式売買への参入のニュースもあり、今後ますますユーザーを囲い込めるのではないかと考えます。
気になるのはコロナによるオンライン特需が収まった後の成長鈍化ですが、2021年上半期では(記事作成時点の最新決算が第2Q)売上は伸び続けています。
第2Qの純利益が前年同期比で減少しましたが、これは2020年の投資による収益(=事業外収益)が大きかったためで、営業利益は増加しています。
2021年第2Qは前年同期比で有効アカウント数、決済処理数も増加しており、eBayからの収益減少という要因はありつつも、イベント・旅行分野の回復の恩恵も受けました。
ただ、アナリスト予想の売上を下回り、株価にマイナスの影響が出た実績もあるので、購入タイミングは気を付けておきたいです。
今回の記事はPayPal Holdings Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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