プラグパワー(Plug Power Inc. / PLUG)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
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1. Plug Power Inc.(PLUG)について
1-1. 業種
再生可能エネルギー、電子テクノロジー、サービス
1-2. 事業の概要
プラグパワーは主に水素に焦点を当てた燃料電池メーカーで、フォークリフトなど産業機器向けの燃料(Amazonやウォルマートの倉庫でも使用されている)や、発電装置用の燃料電池、一部天然ガスの発電装置などを開発・製造し、導入からアフターマーケットサービスまでの一貫したソリューションを提供しています。
また、原料となるグリーン水素の生成プラントを持っており、2024年の水素予測使用量80トン以上のうち、50%をグリーン水素にすると明言しています。
長期的には世界市場、オンロード車両市場も見据えており、2021年1月~2月に、フランスの自動車メーカー”ルノー”、韓国の大手企業である”SK Group”、スペインの”Acciona”とそれぞれ合弁会社を設立することを発表しました。
燃料電池は水素と酸素を反応させる発電方法で、二酸化炭素(CO2)などの有害な排出物がない”クリーンエネルギー”として注目されており、従来のガソリンエンジンより効率の良いエネルギーだと言われています。
また、鉛蓄電池と比較して稼働時間が長く、燃料補給も数分間で済みます。
1-2-1. グリーン水素とは
水素は生産過程によっていくつかの種類に分けられます。
グリーン水素とは、水を再生可能エネルギーから生まれた電力で電気分解することで水素と酸素に還元し、生産される水素を指します。グリーン水素は高コストという欠点を持っていますが、二酸化炭素の排出が無く、環境に負荷をかけない生産方法です。
”水素エネルギーはエコかもしれないが、水素の生産過程で結局二酸化炭素を排出している”という話を耳にしますが、これは天然ガスや石炭等を水素と二酸化炭素に改質・分解し、二酸化炭素の回収を行わない”グレー水素”の話です。現在、世界で使われている水素の大半がこのグレー水素です。
ちなみに、グレー水素と同様の過程で生産し二酸化炭素の回収が行われる場合はブルー水素、グリーン水素と同様の過程で生産し原子力発電を使用するものをイエロー水素と呼びます。
1-3. チャート
プラグパワーの株価チャートはこのようになっています。2021年1月6日にSK Groupとの提携、融資を受けることを発表したのを皮切りに、株価は急上昇しています。しかし株式市場のブームや過去の決算書の修正を発表したことが相まって株価は大きく下がりました。
現在はやや上昇し約30ドル前後で推移しています。(2021年5月31日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 2020年、株式公募による増資で自己資本が増加
- 短期の資金繰りは問題なし
- キャッシュフローの内容は良くない
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは”安定タイプ”です。
流動比率は約720%、当座比率は約610%で、短期の資金繰りは問題ありません。
固定比率も約44%で問題のない値です。2019年は250%を超えていましたが、2020年に株式公募による増資を行ったため、大きく改善しました。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は約65%と良い数値で、固定比率同様に増資の影響で一気に良くなっています。
2-1-3. キャッシュフロー
2020年は営業活動がマイナス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせでフリーキャッシュフローはマイナスです。
事業がまだ黒字化に至っていないこと(特に2020年の赤字は大きい)、毎年燃料関連機器や固定資産の購入が行われていること、毎年社債発行や借入によって資金調達を行っていることが影響しています。
これに加えて2020年は、液体水素メーカーUnited Hydrogen、電解水素発生装置の開発企業Giner ELXの買収や株式公募による増資も行いました。
2-1-4. 項目まとめ
増資によって自己資本が増加し、資金繰りは向上しました。ただ、赤字続きなこともあり、キャッシュフローは良くありません。
2-2. 収益性
- ROE、ROAともにマイナス
- 2020年は損失額が急増
…ワラント行使分の相殺で売上高がマイナス
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
赤字続きなので、ROEもマイナスです。損失額よりも、自己資本の増減の方が大きく影響しています。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
ROAもROEと同様にマイナスですが、総資産は年々増えているので、ROAのマイナスは小さくなってきていました。
しかし、2020年は増資による総資産の急増を上回るほど損失額が増加し、マイナスが大きくなってしまっています。(2020年総資産は2019年の約3.4倍、同様の損失額は約7倍)
2-2-3. 項目まとめ
収益性はまだほとんどない状態です。また、2020年は前代未聞の売上高が赤字という事態となり、損失額も急増しました。
ただこの売上高のマイナスは返品などがあったわけではなく、顧客もであるAmazonが、2017年に契約していたワラントの未確定分を行使した結果(詳細は後述する売上高の項目にて)です。燃料電池システム”GenDrive”の契約数が増加するなど、成長が見られる面もあります。
2-3. 経営の効率
- 2020年は売上高が相殺でマイナスのため、判断が不可能
- 2019年までの数値では、どの回転率も低い数値
(総資本、固定資産、棚卸資産の回転率) - まだ事業は発展途上の段階
2-4. 成長している・していく企業か
- 2020年は顧客のワラント行使で費用増加
→売上が相殺されマイナスに - 損失額も非常に大きく増加
- 売上高研究開発費率は平均以上と推測
- 2019年までは売上増加、損失減少を続けていた
2-4-1. 売上高と営業利益
売上高は増加を続けていましたが、2020年、通常はあり得ないマイナス数値となりました。
このマイナスは返品などではなく、顧客もであるAmazonがワラント(2017年、55,286,696株までの契約締結。Amazon流通センターへの燃料電池技術提供に関連するオファーであった模様)未確定分(20,368,784株)を行使したためです。
当初は未確定分を更に8分割して権利を確定させる予定でしたが、2020年12月31日、プラグパワーはこの条件を放棄することになったため、全てが直ちに権利確定され、準備していた引当金でも間に合わない事態となりました。
現在は、Amazonのワラントは完全に権利が確定しており、今後は影響を受けないとしています。ただ、ウォルマートへも同様のワラント(最大55,286,696株)を発行しており、13,094,217株が権利確定済みですが、まだ未確定分として42,162,479株が残っています。
2020年はワラントに関する費用との相殺によって売上高はマイナスですが、フォークリフトや無人配送車の燃料電池システム”GenDrive”の販売数が約36%増加するなど、成長は続いています。
営業損失は減少傾向でしたが、2020年の売上高マイナスや費用の増加の影響が大きく、損失額は急増しました。
2-4-2. 研究開発費
2020年は売上がマイナスのため数値が参考になりませんが、2019年は6.5%、2018年は7.4%でした。
これらを踏まえ、2020年の研究開発費は約28百万ドルで前年比約85%増加していること、科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は5.2%とされていることから、平均以上の数値であると推測できます。
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
2020年は売上がマイナスという事態になりましたが、事業内容や2019年以前の数値の推移から成長性はあると考えます。
ただ、まだまだ赤字続きの状況で、累積赤字は20億ドル近くあります。
3. まとめ
クロとしては、プラグパワー(PLUG)は今後重要視されるであろうグリーン水素事業にも率先して取り組んでおり、事業内容に期待したい銘柄です。
生産過程で二酸化炭素を排出するグレー水素は、より環境問題が重要視されていく今後の社会では衰退せざるを得ないと考えます。一方グリーン水素はコストが高いと言われていますが、様々な国家での水素戦略にも盛り込まれ始めており、注目されてきています。
これらの世界の流れや、2019年までの売上高・損失額の推移からプラグパワーの将来性はあると考えていますが、今回、過去の決算において複数個所の修正(修正はリース負債や一部資産の減損、一部費用の振り替えなど。不正行為は無かったとされている。なお、今回の記事では修正後の決算書を使用)が必要になり、2021年1~3月期(第1Q)の四半期決算が遅れるという事態が起きました。
2021年6月14日までには提出予定とされているので、念のため、それまで購入判断は待ちたいと思います。
また、赤字続きで累積赤字も膨らんでいるため、リスクの高い銘柄でもあります。
今回の記事はPlug Power Inc.の決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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