パランティア・テクノロジーズ(Palantir Technologies Inc. / PLTR)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
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1. Palantir Technologies Inc.(PLTR)について
1-1. 業種
電子・情報テクノロジー、ソフトウェア、AI
1-2. 事業の概要
パランティア・テクノロジーズは、ビッグデータ分析のソフトウェア、プラットフォームを提供する企業です。
パランティアの商品には、パターンの識別に特化した、主に防衛・諜報機関向けの”Gotham”、データの統合・分析に特化した、主に民間向けの”Foundry”の2つのプラットフォームがあり、写真やレポートなどの膨大で不揃いなデータを統合・解析し、パターンや傾向を見つけることができます。
また、”データ収集や販売は行っておらず、顧客の既に持っているデータを統合し分析するプラットフォームを提供する”と宣言している点、”パランティアのソフトウェアはアメリカ、ヨーロッパ及び同盟国のために使用される”としており、敵対国への提供は行わないと明言している点も特徴です。
その顧客は政府や非営利団体、大企業で構成されており、1社の契約金額も大きく、2020年の1社あたり平均収益額は790万ドルでした。
また、パランティアの商品は現在も国防・国家安全保障において活用されていますが、初めての顧客はCIAで、ウサマ・ビンラディン氏の所在地を突き止めたのはパランティアだとも言われています。(ウサマ・ビンラディン氏をパランティアが見つけたという証拠はなく、あくまで噂)
次第にアメリカの各地の警察や司法機関にもパランティアの商品は広まり、データ分析によって、再犯率の高い人物の推測や重点的に警備すべきエリアの特定が行われるようになりました。
営利企業・団体の顧客でも、石油企業のコスト削減、製造工場の品質管理向上・効率化などの実績を上げていますが、費用対効果が悪いと判断したのか、一部の顧客(コカ・コーラやナスダックなど)はパランティアの使用をやめています。
パランティアは”個人のプライバシーを保ちつつ、テロを防ぎ命を救えるソフトウェアを作る”といった趣旨で生まれた企業ですが、現在もCIAと取引があることや、様々な個人情報を扱う事業の性質上、一部の人々は不信感を持っており、度々それらが報道されることがあります。
1-3. チャート
パランティア・テクノロジーズの株価チャートはこのようになっています。2020年10月のIPOから1ヶ月程経過すると株価が上昇しはじめ、一時は30ドルを超えていました。
現在も大きな暴落は起きておらず、20~25ドルあたりで推移しています。(2021年8月31日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 短期の資金繰りは問題なし
- IPOしたばかりで自己資本比率は高め
- キャッシュフローは良くない
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

(単位:百万ドル)
貸借バランスは”安定タイプ”です。
流動比率は約370%、当座比率は約360%で、短期の資金繰りに問題はありません。
固定比率も約30%と優秀な数値です。
2-1-2. 資本の比率
IPOしたばかりの財務状態ということもあり、自己資本比率は57%と高めの数値です。
2-1-3. キャッシュフロー
2020年は営業活動がマイナス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。
事業の赤字が増加しており、営業活動はマイナスです。
投資活動では、不動産・設備を購入しています。
また、2020年はIPOによる資金調達によって、財務活動が大きなプラス収支となっています。
2-1-4. 項目まとめ
ひとまずの資金繰りは問題ありませんが、キャッシュフローはまだ良くない状態です。
2-2. 収益性
- 赤字のため、ROE・ROAともにマイナス
- 赤字額、資産どちらも増加
2-2-1. ROE(自己資本利益率)

ROEは大きなマイナスです。
2019年のマイナス値増加は赤字によって自己資本が減少したためです。(今回は転換優先株式を自己資本に含めて計算。それを省くと債務超過)
また、2020年のマイナス値の減少は、IPOでの自己資本の増加によるものです。
2-2-2. ROA(総資産利益率)

総資産は増加の一途を辿っているので、ROAのマイナス値は減少気味です。
しかし、2020年の損失額は前年の約2倍となったため、ROAのマイナス値も増加しています。
2-2-3. 項目まとめ
損失が増加し続けていて、現在の収益性はほぼありません。
2-3. 経営の効率
- 総資本回転率は低い
- 棚卸資産はなし
2-3-1. 各回転率

総資本回転率は0.41回と低いです。
固定資産回転率は2.5回あります。
棚卸資産はありません。
2-3-2. 項目まとめ
売上は増加を続けていますが、総資産から見るとまだ足りない状況です。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上高は順調に増加
- 2020年は事業からの損失額が売上以上
- 売上高研究開発費率は平均の約10倍
2-4-1. 売上高と営業利益

売上は大きく増加しています。
また、この記事作成時点での最新四半期決算となる第2Qも売上を大きく伸ばしており、上半期で見ると前年同期比49%の増加となっています。

営業損失も大きく増加しており、特に2020年は売上以上の額となっています。
一部IPOに伴うものもありますが、営業費用全体の増加が著しく(総営業費用は前年比78%の増加)、その主な要因は人件費の増加だとしています。
2-4-2. 研究開発費
2020年の売上高は約1092.67百万ドル、研究開発費は約560.66百万ドルだったので、売上高研究開発費率は51.3%で、平均の約10倍です。(科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は5.2%とされている)
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
売上の強い増加が続いていることから、売上の成長は継続されそうです。
ただ、損失額の増加も大きい点が気になります。2021年上半期で見ると売上の伸びより営業費用の伸びの方が大きい状態です。
売上原価があまり大きく増えないので損失はある程度相殺できそうですが、利益率を高める取り組みに期待したいです。
また、売上高研究開発費率は非常に高く、IPOしたばかりで発展途上段階と見るしかありませんが、過去のインタビューでは”2017年までに黒字化する予想”を出していたこともあるだけに残念です。
3. まとめ
クロとしては、パランティア・テクノロジーズ(Palantir Technologies Inc.)は少量保有しておきたい銘柄です。
売上が大きく伸び続けている点が魅力的なことと、企業理念(個人のプライバシーを保ちつつ、テロを防ぎ命を救えるソフトウェアを作るという目標)が今後の社会にマッチすると考えるからです。
一方で、損失が拡大している点、そして売上の半分以上は政府機関からで、2021年上半期(記事作成時点での最新決算が第2Q)では更にその傾向が強まっている点は頭に入れておきたいです。
国防の観点では重要なポジションにいるパランティアですが、個人的には、民間企業へのAIプラットフォームとなると一部競合もあると考えているので、あまり多く保有するつもりはありません。
また、2021年の第1~2Q決算では営業活動のキャッシュフローがプラス収支となっています。
これは主に株式報酬の戻入れが大きいことによるものなので、一概に”良い”と言えない部分もありますが、一つの転機となるかもしれません。
今回の記事はPalantir Technologies Inc.の決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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