次世代太陽電池「ペロブスカイト」の特徴・投資先まとめ

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次世代太陽電池の最有力候補と言われる”ペロブスカイト”の特徴や最近の動向、市場予測、投資可能な企業、そして将来の投資先を生む可能性のある未解決の太陽電池の問題点などをまとめました。

  • 低コスト・モジュール次第で折り曲げ加工も可能
  • 変換効率も従来に匹敵
  • メインプレイヤーとなりそうな海外企業が未上場
  • 日本企業も多数開発中
  • EOL廃棄の問題はまだ解決していない

1. ペロブスカイト太陽電池とは

1-1. 概要とメリット

ペロブスカイト(perovskite)は結晶構造の一つで、立方体のような構造をしています。

この独自の結晶構造を持った材料”ペロブスカイト”は人工的に低コストで製造することが可能で、しかも膜を塗布する形で作製できるため様々な加工が容易という特徴もあります。
様々な形に加工できれば、設置可能な場所は非常に幅広くなるため、より多くの場所で発電可能になると期待されています。

1-2. 従来の問題点

従来の太陽電池のほとんどを占めるシリコン系太陽電池は、資源を採掘し加工する手間やコストがかかり、かなり高価でした。
また、生産には多くの電力が必要となるため、その点も問題視されています。

折り曲げが不可能・重量が大きいという特徴もあり、設置場所の制約も大きい製品でした。(頑丈な建物の屋根などに限られる)

更に近年はポリシリコンの主要生産地であるウイグル自治区の強制労働問題などもあり、原料の安定供給という面が気になっていましたが、ペロブスカイトであればこういった問題を解決できる可能性があります。

1-3. 変換効率

光を電気に変換する変換効率についても、ペロブスカイトは従来の性能に引けを取りません。

シリコン系太陽電池の一般的な変換効率は15%~20%で、高くても25%程度だとされます。
ペロブスカイト太陽電池でも同等の変換効率があると言われており、2021年9月には株式会社東芝(6502)が”世界最高効率15.1%を実現したフィルム型ペロブスカイト太陽電池を開発した”と発表※1するなど、既に従来に匹敵する効率が実現されています。

※1 株式会社東芝ホームページより(2022年3月24日閲覧)
https://www.global.toshiba/jp/technology/corporate/rdc/rd/topics/21/2109-01.html

2. ペロブスカイト太陽電池の市場予測

世界的な脱炭素の取り組みに後押しされ、ペロブスカイト太陽電池の市場は成長していくことが予測されます。

2021年7月8日にPrudourPrivate Limitedが発表したレポート※2では、今後10年間のCAGR(年平均成長率)は13.9%と予想されています。
金額では、2020年の318百万ドルから2030年に1,046.2百万ドルになる予測です。

更にAllied Market Researchによるレポート※3では、同じく10年間のCAGRが32.4%と予測されており、金額では2020年の400百万ドルから2030年には6,600百万ドル(66億ドル)にまで成長すると見込まれています。

※2 Web東奥にて2022年3月24日閲覧
https://www.toonippo.co.jp/articles/-/582798
※3 Yahoo!financeにて2022年3月24日閲覧
https://finance.yahoo.com/news/perovskite-solar-cell-market-reach-131000806.html

3. 取り組み企業

ペロブスカイト太陽電池の開発に取り組んでいる企業は世界各地にありますが、実はペロブスカイト太陽電池を発明したのは日本の大学教授です。
しかし、海外での特許出願手続きには多額の費用がかかることなどから、海外での特許を取得しておらず、特許使用料が必要ない海外企業の方が先行しているとも言われています。

こういった点を踏まえ投資可能な米国株・海外企業を調べましたが、記事作成時点では取引所を介して購入でき、メインプレイヤーとなりそうな銘柄は見当たりませんでした。
そのため、日本企業をメインに紹介していきます。

3-1. 投資可能な企業

3-1-1. 株式会社東芝(6502)

先ほど少々触れましたが、東芝は2021年9月に世界最高の変換効率(15.1%)のフィルム型ペロブスカイト太陽電池を開発しました。
過去には2018年6月にはペロブスカイト太陽電池として世界最大サイズ(703平方cm)の開発に成功した実績もあり、今回はこの世界最大サイズを維持しながら変換効率の向上を成功させたものです。
また、フィルム型のため、軽量かつ薄型で、折り曲げることも可能です。

この15.1%のフィルム型ペロブスカイト太陽電池を「東京都23区内の建物の屋上および壁面の一部に設置した場合、原子力発電所2基分」※4の発電が見込めるとしています。

2025年までに変換効率20%以上、面積900平方cmのペロブスカイト太陽電池の実用化を目指しており、最終的なプロジェクト目標は”2030年に発電コスト7円/kWhの実現”です。

※4 株式会社東芝ホームページより引用(2022年3月24日閲覧)
https://www.global.toshiba/jp/technology/corporate/rdc/rd/topics/21/2109-01.html

3-1-2. パナソニック株式会社(6752)

パナソニックは、2020年1月に大面積モジュールで世界最高効率16.09%を達成したと発表※5しています。
ガラスと基板とし、インクジェット技術などを用いたこのモジュールは、30平方cmの面積(厚さは2mm)です。

その素材から折り曲げは不可能でしょうが、インクジェットの採用による製造コスト低減、軽量化を実現しており、従来は設置できなかったビルの壁面などにも設置可能だとしています。

プロジェクトの最終目標は、”モジュール生産コスト15円/W”です。

※4 パナソニック株式会社ホームページより(2022年3月24日閲覧)
https://news.panasonic.com/jp/press/data/2020/01/jn200120-1/jn200120-1.html

3-1-3. 三菱マテリアル株式会社(5711)

三菱マテリアルは京都大学発のスタートアップ、エネコートテクノロジーズへ出資しています。

エネコートテクノロジーズは、高い発電効率と耐久性を併せ持つペロブスカイト太陽電池の開発に取り組むだけでなく、鉛を代替材料に置き換えた”鉛フリー”の太陽電池の開発も行っている企業です。

鉛は発電効率を高めるものの、毒性があり、環境負荷などの面でも懸念されています。

3-1-4. フジプレアム株式会社(4237)

フジプレアムはディスプレイやロボット・機械システム、そして太陽光発電を手掛ける企業です。
京都大学と共同でペロブスカイトの研究を進めています。

3-1-5. ホシデン(6804)

ホシデンは電子機器や部品などを製造する企業で、2021年4月にペロブスカイト太陽電池開発に参入することを発表しました。

関係会社であるホシデンエフディのタッチパネル製造ラインがペロブスカイト太陽電池の生産に有効活用できるとしており、2021年度のサンプル展開、2022年の量産機導入、2023年中の量産開始を目指しています。

また、月10万個の生産が計画されています。

3-1-6. ニチコン(6996)

ニチコンはコンデンサ(蓄電・放出を行う電子回路の部品)などを製造する企業です。

2021年6月、前述した京都大学スタートアップのエネコートテクノロジーズ、リコー電子デバイス株式会社と共に、世界初となるフィルム型ペロブスカイト太陽電池を利用したメンテナンスフリーの電子棚札システムの開発に成功しました。

電子棚札とはスーパーなどにある電子の値札表示で、POSシステムと連動させることで、価格の変更や在庫情報などを簡単に行うことができます。

今回開発された電子棚札システムでは、室内照明でも充電可能な(変換効率の高い)フィルム型ペロブスカイト太陽電池、そして長寿命の二次電池と低消費の電源回路を組み合わせています。

3-2. その他

イギリスのオックスフォード大学発スピンオフOxford Photovoltaics Limitedは、従来のシリコンベースとペロブスカイトの膜を組み合わせた”タンデム”コンセプトで、変換効率を大きく向上させる研究を行っており、2022年内に販売開始するとも言われています。
ペロブスカイト太陽電池のキープレイヤーを目指す企業の一つですが、現在は非上場です。

また、OTC(取引所を介さない相対取引)銘柄ではAixtron、Korver Corpなどがペロブスカイト太陽電池に取り組んでいる他、ポーランドのSaule TechnologyはNewConnectに上場予定となっています。

いずれも気になる銘柄ですが、投資するハードルはかなり高いです。

4. 太陽電池の問題点

太陽光発電、太陽電池の未解決の問題として、EOL(End Of Life)廃棄があります。
使用済み太陽電池・パネルを適切に処理しなければ、化学物質による汚染などの被害が出ると危惧されています。

メリットの多いペロブスカイト太陽電池であっても、時間経過で劣化するという点は変わりません。

そんな中、イスラエルの研究者が”劣化したペロブスカイト部分を除去・交換することで長く使用する”方法を開発したという報道がありました。
現状はまだ耐久性などに問題があるようですが、太陽光発電が急ピッチで推し進められている中、こういった発明・開発は必要になると考えられます。

5. まとめ

現状(記事作成時点)は、簡単に投資できる米国株銘柄がありませんでしたが、ペロブスカイト太陽電池の開発には、日本企業も積極的に取り組んでいます。

日本株はその割安感から度々注目を集める市場で、一部のペロブスカイト太陽電池開発事業は経済産業省のグリーンイノベーション基金の対象にもなっているので、投資先として検討する価値も十分あると考えます。

また、ペロブスカイト太陽電池の研究開発は加速しているので、今後新たに投資可能な銘柄が増えるかもしれません。
EOL廃棄の問題も含め、動向をチェックしておきたい分野です。

記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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