PacBio【PACB】銘柄分析_イルミナとは違うアプローチでゲノムを解析

米国株の年次決算書・銘柄分析
スポンサーリンク

今回はパシフィック・バイオサイエンシズ・オブ・カリフォルニア(Pacific Biosciences of California, Inc. 略称PacBio / PACB)の決算書(10-K)やニュースについて分析しました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

1. PacBio(PACB)について

1-1. 業種

バイオテクノロジー、先端医療機器

1-2. 事業の概要

PacBioは、遺伝子の解析・問題解決のためのゲノム解析プラットフォーム(クラウド対応のハードウェアや分析ソフトウェア、様々な消耗品などがある)を提供しています。
長い遺伝子情報を読み取れ(ロングリード。ちなみにイルミナの技術はDNAの断片を読み取って再構築するものなので、それとは異なったアプローチといえる)、ゲノム変異の発見や、混合物の中から近しいものを特定することが可能です。

また、生体分子をリアルタイムで分析する”単一分子リアルタイム(SMRT)技術”のプラットフォームを開発しました。

これらの技術は人間の健康、医学はもちろん、昆虫生物(害虫駆除)、作物の改良、動物の健康・繁殖など幅広い場所で役立っており、顧客も多岐にわたります。(研究機関、政府、学術機関、製薬会社、農業会社、他)

また、コロナ(COVID-19)感染拡大に伴い、政府、学術機関、商業施設でのコロナウイルス(SARS-CoV-2)監視の取り組みを行っています

1-2-1. イルミナ(illumina / ILMN)からの買収(未達成)

2018年11月1日、イルミナがPacBioを12億ドルで買収することを発表しました。
この買収は2019年の第4四半期に完了する予定でしたが、”買収によって将来の競争を大幅に減らす可能性がある”ことを懸念した連邦取引委員会からの訴えによって、完了することなく終わりました。

2020年1月2日にこの買収契約の終了が発表され、イルミナはPacBioに対し契約終了手数料98百万ドルや、取引延長に対して28百万ドルを支払うことに合意しました。

1-3. チャート

PacBioの株価チャートはこのようになっています。
イルミナからの買収が報じられた際に一時的に株価が上昇しています。
また、2020年12月頃から大きく上昇し始め、最高値はソフトバンクからの出資が報じられた2021年2月でした。
その後一旦下降していますが、上下しつつ値上がり前よりも高い水準を維持しています。(2021年4月8日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 短期の資金繰りは問題なし
  • 自己資本比率は高い
  • 2020年はイルミナから得た資金で累積赤字を微減
  • キャッシュフローはまだ不安な内容

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2020年決算書におけるPACB貸借バランス

(単位:百万ドル)

流動資産が非常に多く、貸借バランスは“安定タイプ”です。
(貸借バランスのポイントについては、こちら↓の記事で紹介しています)

2020年の流動比率は900%を超え、当座比率も約870%あるため、短期の資金繰りは問題ないでしょう。
イルミナから得た手数料や増資の影響で、現金同等物・短期投資(主にコマーシャルペーパー政府機関証券)が増えたことが影響しています。

また、固定比率は約17%と低く優秀な値です。
これもイルミナからの手数料で累積赤字を減少させ、増資で資金を得たことで改善しました。
なお2019年は約120%という高い数値でしたが、これは主に規定変更によってリース資産を計上する必要が出たためです。これによる固定資産の増加、累積赤字増加による自己資本の減少が重なり、一時的に高い数値となっていました。
なおそれ以前の2017年は約50%、2018年は約33%と、いずれも問題ない数値でした。
(貸借貸借表の各比率については、こちら↓の記事で詳しく紹介しています)

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は81%と、非常に高く良好な数値です。
固定比率同様2019年は一時的に悪化しましたが(それでも37%と比較的良い数値)それ以前は60~65%程度でした。

2-1-3. キャッシュフロー

キャッシュフローは、営業活動プラス、投資活動マイナス、財務活動プラスという”投資&資金調達タイプ”の組み合わせです。

過去5年分を確認しましたが、事業が赤字で営業活動がマイナスということもあり、フリーキャッシュフローはずっとマイナスです。
また、毎年増資を行っているため、財務活動はプラスが続いています

2020年の営業活動はプラスで着地しましたが、イルミナから得た資金の影響が大きいため、まだ健全なキャッシュフローとは言えません。
安定したバランスにするには、まず事業で利益を出す必要があります。

2-1-4. 項目まとめ

資産や負債のバランスは良好(ただし累積赤字は積み上がっている)ですが、2020年はイルミナから得た資金が一時的に数値を底上げしていました。
ただ、それ以前も特別悪い内容ではないので、すぐに短期の資金繰りに問題が出ることはなさそうです。

キャッシュフローはまだまだこれからといったところで、現時点では安心できる内容ではありません

2-2. 収益性

  • 2020年は黒字だが一時的な要因によるもの
  • ROAも同様で、まだまだ収益性は低い

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

PACBのROE(自己資本利益率)推移

2020年のROEは約9%ですが、それ以前の数値は累積赤字や自己資本の影響で乱高下しています。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

PACBのROA(総資産利益率)推移

累積赤字や自己資本の大きさが影響しているため、総資産で見るROAはROEとは違う上下の動きをしています。
2017年~2019年にかけてROAがじわじわ改善しているようにも見えますが、2019年にもイルミナから18百万ドルの資金を得ており、それを省いて考えるとむしろ2019年の数値は前年より悪化しています。

2-2-3. 項目まとめ

2020年の黒字も一時的な要因のためであり(イルミナから得た資金。それが無ければ赤字)、それ以前は大きなマイナスなので、現時点での収益性はほぼありません

2-3. 経営の効率

  • 全体的に低めで、特に総資本回転率が低い
  • 棚卸資産回転率は他の回転率に比べて良い兆し
  • 他の指標と同様、今後の売上拡大にかかっている

2-3-1. 各回転率

PACBの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率

総資本回転率は、約0.2回です。
これはかなり低い数値で、総資産から見た売上高は、まだまだ足りていないと言えます。
なお、過去数年は0.5~0.6回程あり、2020年の数値悪化は資産の急激な増加が原因です。

固定資産回転率は約1.4回です。
リース資産を計上するようになった2019年から数値が下がっています。

棚卸資産回転率は約5.5回です。
棚卸資産は少しずつ減らされてきており、効率が良くなってきています。
また、内訳の多くは材料と仕掛品です。事業の性質上、仕上がり製品を多く保管しておく必要が無いと考えられます。

2-3-2. 項目まとめ

総資本回転率の低さが気になる結果となりました。
全体的に物足りない数値なので、これから売上を拡大していく中での数値改善に期待したいです。
なお、棚卸資産の回転率は良い方向に向かっています。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上・利益(損失)が安定していない
  • 2018年は新機種の発売を見越した購入延期で売上減少
  • 2020年はコロナの影響で売上減少
  • 売上高に近い額を研究開発に投資
    →今はまだ将来の事業本格化までの準備期間と見る

2-4-1. 売上高と営業利益

PACBの売上高推移

2018年、2020年に売上が減少しています。
2018年の売上減少は主に、新機種が翌年発売されるのを見越した購入の延期によるものです。
また、2020年の売上減少にはコロナ感染拡大による顧客の操業停止や機器の稼働率低下が影響しています。

PACBの営業利益(損失)推移

営業利益(損失)も売上高に近い増減をしています。(この営業利益には、イルミナから得た買収契約に関する資金が加味されていない)
売上が伸び悩んでいる影響を受けるとともに、新機種を発売すると旧型の在庫分引当金などの製品移行費用が発生し、利益を圧迫してしまいます。
また、後述する研究開発費も大きく、損失の原因となっています。

2-4-2. 研究開発費

2020年の売上高は約79百万ドル、研究開発費は約64百万ドルだったので、売上高研究開発費率は約81%と非常に高い数値です。

ただ、ゲノムや遺伝子関連の分野はまだまだ研究・開発段階の企業が多く、中には売上高を超える研究開発費用を投じている(まだ事業が本格的にスタートできていない)企業もあるため、PacBioのこの数値は現在の収益を求めているのではなく、未来のための投資であると考えることができます。

2-4-3. 項目まとめ

売上高と営業利益を見ると、黒字化するにはまだ時間がかかりそうです。
しかし、研究開発に多くの資金を投入していること、ゲノムというセクター自体がまだ発展途上であることを考えると、今は将来の売上・利益拡大の準備をしている期間と取ることもできます。

2-5. 補足:Invitae Corporationとの共同開発

インビティ(Invitae Corporation / NVTA)は、遺伝子診断サービスを提供している企業です。
医療機関に向けた遺伝性ガンの診断検査サービスや、消費者向けの遺伝子検査キットの開発・製造・販売を行っています。

PacBioはこのインビティから資金提供を受けつつ開発プログラムを遂行し、将来的にはインビティの全ゲノム検査機能を拡張することを目指しています。
期間は約60ヶ月を予定しており、開発が成功し商業化できた場合には、優先価格設定などの扱いが取り決められています。

3. まとめ

クロとしては、PacBio(Pacific Biosciences of California, Inc.)は「活動内容から将来に期待したいが、現状はまだ決算書の数値が悪くリスクが高い」銘柄だと判断します。

遺伝子配列解析の最大手とも言えるイルミナが一度は買収しようとし、しかしそれが”将来の競争を減少させる”ことを理由に連邦取引委員会から訴えられたという経緯から、ある程度の技術力を持っていると考えられます。

ただ、決算書の数値上はまだまだ今後の売上・利益拡大の兆しは無く、期待できるポイントとしては研究開発に力を入れていることくらいです。
また、イルミナから得た資金があるため、この資金をどのように利用していくのかに注目したいところではあります。

PacBio株の購入を考える場合は、リスクが高い銘柄であること、発展途上のジャンルであることなど、懸念点も含めて検討することが必要です。

今回の記事はPacific Biosciences of California, Inc.の決算書及びコーポレートサイトなどを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました