インビティ【NVTA】銘柄分析_ガンなど様々な遺伝子検査を提供

米国株の年次決算書・銘柄分析
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インビティ(インビテ / Invitae Corporation / NVTA)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

1. Invitae Corporation(NVTA)について

1-1. 業種

バイオテクノロジー、医療用品、健康&メディカル、ゲノム

1-2. 事業の概要

インビティは、将来の発病リスクや遺伝性疾患のリスク(子孫への遺伝を含む)を調べる遺伝子検査を提供する企業です。
以前取り上げたミリアド・ジェネティクス(MYGN)と似た事業だと言えるでしょう。

医療機関や消費者に対して、遺伝性のがん、その他遺伝に関する疾患、妊娠・出産に関するもの、小児障害、遺伝子から見た投薬への反応など様々な検査を提供し、検査によって得られるゲノムデータの管理、また、科学と医学の進歩のためのゲノムネットワーク構築の推進にも注力しています。
そういったこともあってか、事業の成長ステージとして、価格や所要時間など検査自体へのアクセスしやすさの向上も挙げられます。

なお、遺伝子検査を受けて遺伝的にリスクの高い病気を知ることは予防や早期治療に繋がり、医療費の削減にもつながると期待されています。

また、遺伝子にはあまり変化が起きないので、遺伝子検査を一人のユーザーが何度も受けることはなく、市場の拡大に限界があるとする見方がありますが、将来的には新しい利用方法が生まれてくる可能性もあります。

たとえば、より多くの人々の受検に繋がると考えられる健康診断への項目追加や、遺伝子治療が実現した場合の治療経過確認なども、期待できる用途です。
遺伝子・ゲノムは未だに未知の部分が大きい分野のため、市場の発展次第では取り組みの拡大も可能と言えます。

1-3. チャート

インビティの株価チャートはこのようになっています。
2020年6月、IPOを計画していたゲノム解析企業”ArcherDX”の買収を発表し、株価は大きく上昇しました。
その後も上下しつつ株価は上がり続け一時は60ドルを超えていましたが、2021年1月後半から下落をはじめ、現在は約3ドルです。(2022年5月25日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 資産の流動性は問題なし
  • 株式発行を行い自己資本比率は高い
  • 赤字続きでキャッシュフローは良くない

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

NVTA貸借バランス_2021

(単位:百万ドル)

貸借バランスは”おおむね安心タイプ”です。

流動比率、当座比率は800%前後あります。
これは高すぎる程の数値なので、ひとまずの資金繰りには問題なさそうです。

固定比率が100%を超えていますが、純資産と固定負債で十分まかなえているため、こちらも許容範囲内です。

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は約61%とかなり高い数値です。
転換社債発行で負債が増えていますが、株式公募や買収に伴う株式発行で自己資本も大きくなりました。

2-1-3. キャッシュフロー

営業活動がマイナス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。

事業は赤字続きで、営業活動によるキャッシュフローもマイナス収支が続いています。

また直近2年間の投資活動では、事業買収に関する支出が大きいです。
他にも、売買や満期保有目的の有価証券の購入、売却・満期による収入が大きな割合を占めています。

財務活動では株式や転換社債発行による資金調達を行い、プラス収支となりました。

2-1-4. 項目まとめ

自己資本比率は高く、現金も多く保有しているため、ひとまずの資金繰りは心配なさそうです。
しかし赤字続きのためキャッシュフローはマイナス収支が続いています。
今後もこの状況が続けば、今は潤沢にある資金もいずれ底をつき、新たな資金調達が必要になります。

2-2. 収益性

  • 赤字続きでROE・ROAもマイナス
  • 自己資本・総資産の増加が顕著
  • 2021年度は損失額削減

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

NVTAのROE(自己資本利益率)推移_2021

ROEのマイナスは小さくなってきていますが、損失額は2020年度まで増加していました。
このROEの数値の変化は自己資本の増加によるものです。

なお、2021年度は赤字自体が小さくなっています。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

NVTAのROA(総資産利益率)推移_2021

ROAもROEと同様の推移をしています。
総資産が年々大きく増えているため、ROAのマイナスが小さくなってきています。

2-2-3. 項目まとめ

赤字続きのため、収益性はまだほとんどない状態です。
2021年度は赤字額が削減されたので、この傾向が続くことに期待したいです。

2-3. 経営の効率

  • 総資本回転率は低い
  • 買収も影響し資産が増加

2-3-1. 各回転率

NVTAの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率_2021

総資本が急激に増加しているため、総資本回転率は低下傾向にあります。
2021年度は売上が大きく伸びたため前年より0.01回上昇しましたが、この指標の最低ラインは1回程度とされており、総資産の大きさに対して売上が非常に小さい状況が表れています。

また買収を繰り返した影響で、固定資産回転率も低いです。
のれんは総資産の半分近くを占めています。

2-3-2. 項目まとめ

総資本の大きさと比較すると売上は全然足りていません。
近年は買収も多かったので、これらが事業拡大にどこまで貢献できるのか注意したい内容です。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 2021年度は前年比65%の売上成長
  • 2021年度は営業損失が削減された
  • 売上高研究開発費率は90%
  • 2022年度第1Qは売上成長19%・損失増加

2-4-1. 売上高と営業利益

NVTAの売上高推移_2021

2021年度の売上は、前年比65%増加しました。
これは2020年度の新型コロナ感染拡大による不調の影響もあったとしています。

また、一部の顧客への価格引き下げや販売製品ミックスの変化によって、1ユニットあたりの平均収益が前年度の413ドルから380ドルに低下しました。

なお、2022年度第1Q(記事作成時点の最新決算)は前年同期比19%の売上増加となっています。

NVTAの営業利益(損失)推移_2021

営業損失は増加傾向にありましたが、2021年度は削減されました。

前年度は29%あった粗利率が24%に低下しましたが、売上の増加が大きかったこと、一般管理費が削減されたことがプラスに働きました。
なおこの一般管理費の削減には、前年度のArcherDX買収に関する一時的な費用がなくなったことも影響しています。

また、事業の拡大や新たな買収などによって、一般管理費以外の営業費用は増加しています。

2-4-2. 研究開発費

売上高は約460.45百万ドル、研究開発費は約416.09百万ドルだったので、売上高研究開発費率は90.4%となります。
これは非常に高い数値です。

ちなみに科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は5.2%とされています。

※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019

2-4-3. 項目まとめ

2021年度は売上が大きく増加し、損失が削減されました。
また、売上の90%程度を研究開発費に費やしているという点については正直費用をかけ過ぎだと感じますが、まだ発展途上のセクターなので、今後に期待できると受け取ることもできます。

ただ、記事作成時点の最新決算である2022年度第1Qを見ると、売上の成長は19%に落ち着いています。
また、2021年度に削減された損失についても、2022年度第1Qでは再び増加(前年同期比)しており、継続的な改善は難しいかもしれません。

3. まとめ

クロとしては、インビティ(NVTA)は一旦様子を見たい銘柄です。

事業の長期的な成長には期待していますが、金利上昇かつ不安定な市場局面のため、今投資したい銘柄ではないと判断しました。

2021年度の決算は成長を感じましたが、2022年度第1Qでは再び成長が鈍化しているように見えるので、引き続き推移を見守っていきたいと思います。

今回の記事はInvitae Corporationの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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