エヌビディア(NVIDIA Corp / NVDA)の決算書・銘柄分析について、2022年度決算を踏まえた内容に更新しました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
■2023年度第1Qトピックはこちら
1. NVIDIA Corp(NVDA)について
1-1. 業種
半導体、電子テクノロジー、製品
1-2. 事業の概要
エヌビディアは、半導体プロセッサ”GPU”の大手開発企業(製造は委託)です。
PC向けのGPU(Graphics Processing Unitの略で主に画像処理を行う半導体チップ。PCのグラフィックボード、グラボと呼ばれる部品に設置する)”GeForce”などが有名ですが、最近はこの高速な計算処理能力を他に転用するGPUPU(詳しくはこちら)に注力しています。
現在、エヌビディアのGPUはグラフィックだけでなく、AI(人工知能)のディープラーニング・計算スピードの向上や自動車の自動運転技術、また仮想通貨(暗号資産)のマイニングなどにも使用されています。
こういった用途拡大に対応し、GPUPU専用の製品やプラットフォームも提供するようになりました。
また、ゲーム市場においてもその地位は揺らいでいません。
任天堂との”任天堂switch”共同開発や、eスポーツ向けの史上最速ゲーミングディスプレイ発表など、様々な取り組みを行っています。
最近話題となっているメタバース(仮想空間)においても、VRのための高性能GPUや、VR・ARの3D共同作業プラットフォーム”NVIDIA Omniverse(オムニバース)”の提供など、積極的な展開を見せています。
このOmniverseでは、エリクソンと共に都市のデジタルツインを構築し、電波伝搬のシミュレーションを実現する取り組みなども進んでおり、今後も様々な活用方法が生まれていきそうです。
1-3. チャート
エヌビディアの株価チャートはこのようになっています。
世界的にコロナ感染拡大が起きた2020年2月頃以降は、2021年11月頃まで上昇傾向にありました。
その後は大きく下落し、上下を繰り返しています。(2022年4月18日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 資金繰りは問題なし
- 自己資本比率は60%
- 有価証券購入に多くの現金を投入
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは”安定タイプ”です。
流動比率、当座比率共に600%前後あり、短期的な資金繰りには全く問題ありません。
固定比率も58%で安心できる数値です。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は60%と良好な数値です。
昨年から1ポイント上昇しました。
2-1-3. キャッシュフロー
営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。
事業が黒字で営業活動はプラス収支です。
投資活動では、満期保有・売買目的の有価証券の購入による支出、満期や売却による収入が大きく、最終的にはマイナス収支となりました。
財務活動は昨年に続き、新たな債務を発行したことでプラス収支となっています。
2-1-4. 項目まとめ
現金などは十分あり、自己資本比率は60%と良好な数値です。
フリーキャッシュフローがマイナスではありますが、ひとまず現状は安心して問題ないと考えられます。
2-2. 収益性
- ROE・ROAともに平均を大きく超える
- 2021年度、2022年度は連続して増収増益
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
2022年度(1月締め)は、利益、自己資本共に大きく増加しました。
米国平均は16%~18%とされている中で、その2倍の数値を達成しています。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
ROAもROEに近い変動をしています。
なお、2021年度に前年より数値が下がっているのは、買収によって総資産が大きく増加したためです。
こちらは米国平均とされる6~8%の2倍以上(3倍近い)の数値です。
2-2-3. 項目まとめ
2020年度は一度売上・利益が減少していますが、その後は続けて増収増益となっています。
また、自己資本・総資産が増加している中でもROE・ROA共に米国平均を大きく上回っており、収益性は高いです。
2-3. 経営の効率
- 総資本回転率はあまり高くない
- ただし有価証券を省けば最低ラインは達成
- 回転率は昨年より上昇
2-3-1. 各回転率
全体的に回転率は昨年より上昇しています。
しかしそれでも、総資本回転率は最低ラインの1回よりかなり低い数値です。
この主な要因には、事業に直接関係しない有価証券を多く保有している(総資産44百万ドルのうち、19百万ドルはこういった有価証券)ことが挙げられ、この有価証券を省いて計算すると、総資本回転率は1回を超えます。
また、製造は委託しているものの、在庫として計上される資産はあります。
エヌビディアの棚卸資産回転率は、製造業の平均的な数値です。
2-3-2. 項目まとめ
回転率はあまり高くありませんが、有価証券を除いて計算すれば十分許容範囲内の数値となります。
また、2022年度は売上が大きく伸びたこともあり、回転率は上昇しました。
2-4. 成長している・していく企業か
- 2年連続で売上が大きく増加
- 営業利益は前年度比125%の成長
- 売上高研究開発費率は平均の5倍以上
- 最近目標株価引き下げニュース有り
2022年度同様の成長は難しいか
2-4-1. 売上高と営業利益
2022年度は売上が大きく増加し、前年度比61%の成長率を達成しました。
売上は全体的に好調で、製品に対する強い需要があったとしています。
また、84%が米国外の顧客への売上となっており、グローバルに展開していることがわかります。
なお、2020年度の売上減少は、ゲーム用GPUの売上不調によるものです。
営業利益は前年度比125%の成長を達成しました。
粗利率は65%で、昨年の62%から上昇していますが、これはメラノックスの買収に関連する費用が減少したことが主な要因となっています。
また、粗利益はグラフィックスセグメントで増加していますが、コンピューティング&ネットワーキングセグメントでは自動車ソリューションからの利益減少、製品ミックスの変化による利益減少がありました。
営業費用を見ると、報酬費用やインフラ費用が増加しています。
2-4-2. 研究開発費
売上高は約26,914百万ドル、研究開発費は約5,268百万ドルだったので、売上高研究開発費率は19.6%で、平均の約5.6倍です。(科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は3.5%とされている)
昨年と比較すると4ポイント近く低下しましたが、それでもかなり高い比率であることは変わりありません。
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
2022年度の売上・営業利益は非常に大きく増加しており、今後のGPUやソリューションの需要も考えると、成長に期待したい内容だと言えます。
ただ、ハイエンドGPUの需要が弱まっているのではないかという見方が出てきており、一部アナリストからは目標株価を引き下げられました。
メタバースや更なるマイニングの推進を考えると、盛り返すこともあるのではないかと考えますが、今回の好決算は半導体不足などの特殊な状況下で出てきたものであることは頭に入れておきたいです。
3. まとめ
クロとしては、エヌビディア(NVDA)は今後も期待したい銘柄です。
決算内容は良好ですし、事業内容についても将来性があると考えます。
ただ、市場の期待が高まっていることや、今回の好決算は少々特殊な状況下でのものだという点は念頭に置いておきたいです。
記事作成時点では、世界情勢などによるハイエンドGPUの需要の弱まりや、EUの経済が不調に向かうという見方が強くなってきており、アナリストから目標株価を引き下げられている状況ですが、クロとしては長期目線で保有を続けたいと思います。
現状は需要が低下しているかもしれませんが、今後メタバースが更に加速する上では高性能なGPUが必要になるのではないかと考えているからです。
今回の記事はNVIDIA Corpの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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