インテリア・セラピューティクス(Intellia Therapeutics Inc /NTLA)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. Intellia Therapeutics Inc(NTLA)について
1-1. 業種
バイオテクノロジー、ゲノム、遺伝子編集、メディカル
1-2. 事業の概要
インテリア・セラピューティクスは、ゲノム編集による治療法を開発している企業です。
CRISPRセラピューティクス(CRSP)と同様、”CRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン)”と呼ばれる、従来のものより優れたゲノム編集テクノロジー・プラットフォームを利用しています。
遺伝物質を直接患者の静脈内へ投与するin vivo治療、患者の体外で細胞を操作するex vivo治療の両方の開発を進めており、どちらも初期の臨床段階まで進んでいる製品候補があります。
臨床段階にある製品候補は現在4種類あり(記事作成時点)、in vivo治療では、トランスサイレチン・アミロイドーシス、遺伝性血管性浮腫の2つの病気に対するもの、ex vivo治療では、鎌状赤血球症、急性骨髄性白血病の2つの病気に対するものが該当します。
このうち、トランスサイレチン・アミロイドーシスのプログラムはリジェネロン(REGN)、鎌状赤血球症のプログラムはノバルティス(NOVN)とのコラボレーション事業です。
また、治験薬の申請であるIND申請まで到達しているプログラムには、α1アンチトリプシン欠乏症(肝臓・肺の疾患に焦点を当てる)、血友病B、リンパ腫などがあります。
1-3. チャート
インテリア・セラピューティクスの株価チャートはこのようになっています。
10ドル~20ドルだった株価は、2020年11月頃から勢い良く上昇し、しばらくの間は60ドル~80ドルの間で上下していました。
その後2021年6月末に株式公募価格が145ドルとされたことで一気に急上昇したものの、程なく下落に転じ、それ以降は現在に至るまで下降傾向が続いています。(2022年5月31日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- ひとまずの資金繰りは問題なし
- 自己資本比率は80%
- 株式発行による資金調達アリ
- 事業が赤字でキャッシュフローは良くない
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

(単位:百万ドル)
貸借バランスは”安定タイプ”です。
流動比率、当座比率どちらも600%前後あり、ひとまずの資金繰りには問題ありません。
固定比率も50%と問題のない数値です。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は約80%とかなり高いです。
ただ、これは度々株式発行を行っている影響が大きく、事業からまだ利益を生み出せていません。
2-1-3. キャッシュフロー
営業活動がマイナス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。
事業が赤字で、営業活動によるキャッシュフローもマイナス収支です。
投資活動では、満期・売買目的の有価証券の購入に大きな資金を投じています。
財務活動では株式発行による資金調達を行っているため、プラス収支となっています。
2-1-4. 項目まとめ
株式発行によって資金を調達しているため、自己資本は大きく、資産の流動性もひとまず確保されています。
まだ販売できる製品がないため事業は赤字となっており、いずれは再び資金調達の必要性が出てくる可能性も高いです。
2-2. 収益性
- 赤字のためROE・ROAはマイナス
- 損失・資産ともに増加中
2-2-1. ROE(自己資本利益率)

ROEのマイナスが小さくなってきていますが、これは主に自己資本が増えているためです。
純損失額は年々増加傾向にあり、特に2021年度は純損失、自己資本共に前年の約2倍になりました。
2-2-2. ROA(総資産利益率)

ROAもROE同様の推移をしています。
2-2-3. 項目まとめ
販売できる製品は無く(コラボレーション収益のみ上がっている)、事業は赤字続きのため、収益性はまだありません。
純損失・資産ともに増加傾向にあります。
2-3. 経営の効率
- 回転率は非常に低い
- 2021年度は売上減少・資産増加
2-3-1. 各回転率

回転率は非常に低い状態です。
販売できる製品がまだなく、売上はコラボレーション収益のみであるということ、そしてその収益が増えていない中で資産(資本)が増加の一途を辿っていることが主な要因です。
2-3-2. 項目まとめ
販売できる製品が無いこともあって、売上は小さく、回転率は非常に低いです。
特に2021年度は売上が減少し、資産が増加(前年比)したことによって、更に回転率が低下しました。
2-4. 成長している・していく企業か
- 2021年度は売上減少
- 売上は提携・契約からの収益のみ
- 研究開発費をはじめ費用は増加中
2-4-1. 売上高と営業利益

2021年度の売上は、前年比43%減少しました。
これは、2020年度の売上が大きかったためだとしています。
(2020年度の売上には、ライセンス移管に関する収益や、IND申請によって獲得したマイルストーンなどが含まれていた)
インテリア・セラピューティクスには販売する製品がまだ無いため、売上はコラボレーション収益しかありません。
このコラボレーション収益は、開発状況や条件達成の有無、契約内容の変更・調整などで比較的増減しやすいという面があります。

営業損失は年々増加しており、特に2021年度は前年比96%も増えています。
これは売上の減少、そして各種費用の増加によるものです。
特に臨床試験に際した費用や、人件費(株式報酬費用を含む)が大きく増加しています。
また、2022年度は開発チーム拡大、臨床試験の実施・推進のため、研究開発費が更に増加することが見込まれています。
2-4-2. 研究開発費
売上高は約33.05百万ドル、研究開発費は約229.81百万ドルだったので、売上高研究開発費率は695%となります。
これは売上の約7倍の研究開発費がかかっているという計算です。
本来はあり得ない数値ですが、ゲノム、バイオテクノロジーという最先端のセクターに挑んでおり、まだ販売する製品を開発中の段階であるため、このような結果になっています。
2-4-3. 項目まとめ
今後成長できるかどうかは開発中の製品にかかっている状況です。
研究開発費用は今年度も増加が見込まれているので、損失の拡大もあるかもしれません。
3. まとめ
クロとしては、インテリア・セラピューティクス(NTLA)の購入は一旦見送ります。
非常に先進的な分野なので今後も臨床試験の進捗などを追っていきたいと思いますが、現状はギャンブル性が高い状況(今後の成長は研究開発がうまくいくかどうかにかかっている)ということもあり、保有は控えるつもりです。
また、似た状況にあるCRISPRセラピューティクス(CRSP)も併せてチェックしておきたいです。
今回の記事はIntellia Therapeutics Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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