ノースロップグラマン【NOC】銘柄分析_国防大手&アポロ計画にも参加実績あり

米国株の年次決算書・銘柄分析
スポンサーリンク

今回はノースロップ・グラマン(Northrop Grumman Corporation / NOC)の決算書(10-K)やニュースについて分析しました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

1. ノースロップ・グラマン(NOC)について

1-1. 業種

航空宇宙、防衛、電子テクノロジー

1-2. 事業の概要

ノースロップ・グラマンは、航空、防衛、ミッション、宇宙の4つの部門に関する製品やサービスを提供している、国防の大手企業です。
サイバーセキュリティシステムやレーダー、自律システム、航空機、戦闘車両、防衛機器など、幅広く製品やサービスを提供しています。
また、一番大きな顧客は米国政府で、売上の80%以上を占めています

宇宙事業においては、人類が初めて月に到達した”宇宙船アポロ”の月面着陸船を製造した実績もあります。

1-3. チャート

ノースロップ・グラマンの株価チャートはこのようになっています。
コロナ前の株価にはまだ戻れていない状況です。(2021年3月11日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 流動比率・当座比率は安心
  • 固定比率・自己資本比率は少し不安
  • キャッシュフローは安定タイプ

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2020年決算書におけるNOC貸借バランス

(単位:百万ドル)

貸借バランスは”ギリギリ運用タイプ”です。
(貸借バランスのタイプ判断については、こちら↓の記事にて紹介しています)

2020年の決算書では流動比率が約160%当座比率も約120%あるので、短期の資金繰りは安心です。

2020年はシニア債発行(コロナ感染拡大への備えとして)で現金が一時的に増えているようですが、2018年と2019年の時点でも当座比率が90%超えとなっているため、あまり心配は要りません

ただ、固定比率は約275%と高く、少々不安のある値です。
現金化されにくい固定資産の多くを、負債でまかなっている状況です。

(貸借貸借表の各比率については、こちら↓の記事で詳しく紹介しています)

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は約23%です。固定比率が高いことからもうかがえますが、自己資本はやや少ない状況です。

2-1-3. キャッシュフロー

営業がプラス、投資がマイナス、財務がマイナスという組み合わせの「安定タイプ」です。

2018年に投資活動の額がかなり大きくなっていますが、これはOrbitalATKを買収したためです。
(キャッシュフロー計算書を見る際のポイントや判断基準はこちら↓の記事で詳しく紹介しています)

2-1-4. 項目まとめ

全体的にはわりと安定した内容です。

ただ、自己資本比率が少々低いのが気になります。
しかし自己資本自体は増加しており、ここ数年を見ると比率も少しずつ改善してきているので、このまま傾向が維持されることを期待したいです。

2-2. 収益性

  • ROEはかなり高い数値だが過信は禁物
  • ROAは平均程度
  • 米国平均程度の収益性を維持

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

NOCのROE(自己資本利益率)推移

ROEは米国平均16~18%を大きく上回る高い数値ですが、自己資本が小さいと高い結果になりやすい指標なので過信はできません

また、2019年は純利益が前年より約980百万ドル減少しました。
これは退職給付関連の費用が増加したためで、営業利益自体は前年より増加していました。

2020年では純利益額も持ち直しましたが、それでも2018年より約40百万ドル少なく、かつ自己資本の額は増加しているため、ROEは30%程度にとどまりました。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

NOCのROA(総資産利益率)推移

2019年を除き、ROAは米国の平均程度の数値です。
ROE同様上下しています。

2-2-3. 項目まとめ

ROEが平均の2倍近い値となっていますが、自己資本が小さいことを考えるとそのまま鵜呑みにはできません。
仮に自己資本比率が50%程度あったとして(50%あれば”良い~かなり良好”の部類)計算してみると、2020年は約14%程度となります。
これらを考慮すると、総合的な収益性は米国の平均程度と推察できます。

また、売上の80%以上を占める米国政府との契約に関しては部品や原料の供給源にも承認が必要となるなど、安定した受注の代わりに利益率を制限されているようです。

2-3. 経営の効率

  • 総資本回転率はセーフ
  • 棚卸資産回転率は非常に高い

2-3-1. 各回転率

NOCの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率

総資本回転率は、約0.8回です。
少々低い気もしますが、そこまで気にしなくても問題のない数値です。

固定資産回転率は約1.2回です。
固定資産が大きいため、少々効率が落ちています

棚卸資産回転率は約48.5回です。
これは非常に高い数値で、在庫が少なく抑えられていることを表しています
米国政府が売上の80%以上を占める取引先であること、入札からの請負・納品、受注生産が多いことなどから、在庫を持つ必要が無いと考えられます。

2-3-2. 項目まとめ

固定資産は少々大きいですが、在庫リスクがかなり低い事業形態であり、どちらかというと効率性は良い部類です。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上高は年々増加
  • 営業利益も増加しているが緩やか
  • 営業利益率を上昇させるのは難しい

2-4-1. 売上高と営業利益

NOCの売上高推移

売上高は2015年からずっと上昇しています。
しかし、伸び率でみると少々鈍化してきています。

NOCの営業利益推移

営業利益も売上高同様に上昇し続けていますが、伸び率の鈍化は売上高より顕著に表れています。
特に製品に関するコストが上昇してきており、利益を圧迫する形となりました。
収益性の項目でも触れましたが、米国政府との取引上、利益の増加を追求するのは難しいのでしょう。
営業利益率自体は11~12%で推移しています。

2-4-2. 研究開発費

2020年、売上高は約36,799百万ドル、研究開発費は約1,100百万ドルだったので、売上高研究開発費率は約3%となります。
かなり従業員数も多く規模の大きな企業ですが(米国では規模の大きな会社の方が売上高研究開発費率が低い傾向にある)、比率としてはやや低い値です。

2-4-3. 項目まとめ

伸び率の鈍化が気になりますが、今後も米国政府から安定して受注できる可能性が高く、増収増益を続けていけると思われます。
コロナ感染拡大の影響も、現時点ではさほど大きくないようです。

2-5. 補足:宇宙事業について・事業売却

2-5-1. 宇宙事業について

ノースロップ・グラマンは、宇宙事業でも売上と利益を出している企業です。
衛星の稼働寿命を延ばす宇宙船の打ち上げ、ドッキングにも成功しています。

2020年の宇宙システム事業の売上は8,744百万ドルとなり、全体の売上高の約24%を占めました
この宇宙システム事業の顧客は90%以上が米国政府です。

また、2018年に買収したOrbital ATKも人工衛星の製造・打ち上げなどを行っていた企業で、これにより更に宇宙事業への補強がなされました。

NASAが再び月を目指す”アルテミス計画”を打ち出していますが、ノースロップ・グラマンもこのプロジェクトに参画しています。
2020年はこのプロジェクトから売上増加の影響もあり、今後の発展を期待したいところです。

2-5-2. ミッションサポート事業売却

2021年前半中に「IT及びミッションサポート事業」の売却を行う予定です。
売却価格は34憶ドル(3,400百万ドル)です。
なお、2020年のこの事業における総資産は約16.35億ドル(1,635百万ドル)、税引前利益は247百万ドルでした。(2020年純利益の約7.7%)

この売却代金は債務返済や自社株の買戻しなどに充てられる予定となっています。

3. まとめ

ここまで見てきた結果、クロとしてはノースロップ・グラマン(NOC)は「増収増益で比較的安心できる、かつ宇宙事業での期待の高まりにかけるなら購入はアリ」な銘柄だと考えます。
安定した黒字決算を続けていますし、米国政府から安定した受注が見込めるため、総合的に安定性は高い企業だと言えます。

その一方で、今以上に利益率を上昇させるのはかなり厳しい状況でもあります。
宇宙事業に関しても大半が米国政府との取引だと考えると、利益幅は今後も制限される可能性が高いです。
ただ、NASAの新しい取り組みにも参加しており、既に宇宙事業で利益を出している数少ない企業なので、今後注目が集まるという期待はできるのではないかと考えます。

また、直近10年間を確認したところ、年間配当は増配を続けており、今後も自社株の買戻しをおこなうと明言されています。

ちなみに現在(2021年3月11日)の宇宙関連事業に対する期待が高まっています。
これは主にキャシー・ウッド氏がCEOを務めるARK社の新規ETF告知とその組入れ銘柄予測に影響を受けたものです。
いまだどの銘柄が選ばれるのかはわかりませんが、動向を注視しておきたいところです。
(ARK社”宇宙関連ETF ARKX”について、こちら↓の記事で詳しく紹介しています)

今回の記事はNorthrop Grumman Corporationの決算書、コーポレートサイトなどを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました