ニコラ【NKLA】銘柄分析_不正問題を乗り越えEV初納入を完了

米国株の年次決算書・銘柄分析
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ニコラ(Nikola Corp / NKLA)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性※まだ車両販売なしのため
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

1. Nikola Corp(NKLA)について

1-1. 業種

自動車製造(EVトラック)、耐久消費財

1-2. 事業の概要

ニコラ(Nikola Corp / NKLA)は新興EVメーカーの一つです。
2020年6月にSPAC IPOを利用してナスダックへ上場しました。

アメリカとEUの温室効果ガス(GHG)のうち推定25%~30%を排出するとされる(ニコラ決算書より)運輸業界に着目し、ゼロエミッションのトラック車両開発と、その燃料(水素)供給ネットワークの構築を目指しています。

ゼロエミッションとは、廃棄物(エミッション)を出さない、または再利用して循環させることで、人間の活動からの廃棄物ゼロを目指す活動・社会システムを指す言葉です。

通常のEV(BEV。Battery Electric Vehicle)だけでなく、FCVやFCEV(Fuel Cell Vehicle / Fuel Cell Electric Vehicle)と呼ばれる、水素燃料電池電気自動車の開発も行っています。

FCVは自ら発電することができるので充電が不要となり、BEVよりも長距離の走行が可能になると言われています。
実際、トヨタのFCV”ミライ(MIRAI)”は一度の充填で1,000kmを超える走行距離を達成しました。

また、エネルギー事業としてはパイプラインを構築するための各社との提携を進めており、2021年6月には大規模な水素プラント(正しくは、休止中の石炭火力発電所を、固形廃棄物から水素を分離する”水素工場”へ改修するプロジェクト。2022年に建設開始予定)を買収によって確保しています。

なお、以前はニコラモーター・カンパニー(Nikola Motor Company)という社名でしたが、SPACであるVectoIQとの合併によって現在はニコラ(Nikola Corp)となっています。

1-2-1. 虚偽説明・不正問題

ニコラには、投資家へ虚偽説明を行って資金をだまし取ったとする問題がありました。

最も有名なのはFCVトラック”Nikola One”が走行する様子を撮影したPR動画です。
動画ではモーターの力で走っているように見えたトラックが、実は坂道を惰性で下っていただけだったという事実は多くの人々にショックを与えました。

その他にも、自社開発だとしていた部品や技術が外部から調達したものだった、格安で水素を供給できるという発言・予約数に関する発言が虚偽のものだった、開発したという画期的なバッテリーシステムは存在しなかったなど、様々な疑惑・虚偽が発覚しました。

最初の虚偽説明のレポートが発表された数週間後に創業者兼会長であったトレヴァー・ミルトン氏は会長を辞任し、更にその数か月後、ニコラとの資本提携を発表していたGM(ゼネラル・モーターズ)は、その提携を縮小しています。

その後2021年7月にトレヴァー・ミルトン氏は詐欺容疑で起訴(ミルトン氏は無罪を主張。その後保釈金を支払って保釈となっている)され、ニコラは起訴こそされなかったものの、12月21日、制裁金として1億2,500万ドルを支払うことでSECと和解する結果となりました。

1-3. チャート

ニコラの株価チャートはこのようになっています。
一時はかなり急騰していましたが、虚偽説明・不正報道の影響もあってどんどん下降しました。
直近の12月23日頃から急激に上昇しているのは、主に初めての納車が話題となったためです。(2021年12月28日時点)

この株価の急上昇について、より詳しくまとめた記事はこちらにあります。

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • ひとまずの資金繰りは問題なし
  • SPAC IPOしたばかりで資金は潤沢
  • まだ車両の販売がなく大赤字

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2020年決算書におけるNKLA貸借バランス

(単位:百万ドル)

IPOで資金を集めたばかりなので、この時点の貸借バランスは”安定タイプ”です。

2021年第3Q(記事作成時点の最新決算)では、2020年末よりも現金が減少し流動負債が増加していますが、まだ資金繰りに問題が発生する内容にはなっていません。

2-1-2. キャッシュフロー

2020年は営業活動がマイナス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。

まだ車両の販売が無い段階のため事業が赤字で(2020年はわずかに太陽光関連の収入があった)、営業活動はマイナス収支となっています。
なお多くのベンチャー企業同様、株式報酬の戻入れの金額は大きいです。

投資活動は生産設備に関する投資が大きく、マイナス収支となりました。

財務活動では、SPAC IPOを行ったことでプラス収支です。

2-1-3. 項目まとめ

IPOしてからあまり期間が空いていないので、ひとまずの資金繰りには問題ありません。

また、キャッシュフローの傾向は2021年第3Qでもあまり変わっていませんでした。

2-2. 収益性

  • 2021年第3Qまで車両の販売はなし
  • 2021年12月にBEV2台を初納車

2021年12月に2台の納車があったものの、まだ決算には反映されていません。

2-3. 成長している・していく企業か

  • 2021年第3Qまで車両の販売はなし
  • 2021年12月に2台のBEVを初めて納入
  • FCEVはまだ納入なし
  • 今後も納入予定はあり

2021年12月18日、ニコラはTotal Transportation Services社へ初の顧客納品を行いました。
またテスト期間を経て条件を満たした場合、今後数年をかけて100台を納入する予定となっています。

更に先日、運送会社Heniff Transportation Systems社へ、トラック10台を2022年前半に納入する予定であると発表しました。
この契約も、テストを経た後になりますが90台の追加納入ができる予定です。

他にもAnheuser Busch社との最大800台のFCEVリース契約などがあり、ニコラのトラック開発・納入を待つ顧客はまだまだいるようです。

2-3-1. 研究開発費

2020年一年間の研究開発費は185.62百万ドル、2021年第3Qまでの9ヶ月間では201.79百万ドルです。(記事作成時点の最新決算は第3Q)

2-4-2. 項目まとめ

決算にはまだ反映されていませんが、初回納入を完了したことは大きな前進です。

ただ、ニコラが注目される要因の一つであるFCEVはまだ納入に至っておらず、現在の材料だけではまだ安心できません。
また、水素や燃料電池は現状利益化が難しい技術でもあるので、開発が成功した後も利益の確保が懸念されます。

3. まとめ

クロとしては、ニコラ(NKLA)はまだまだリスクが高く、保有は見送りたい銘柄です。

過去の虚偽説明や不正といった問題も気になりますが、FCEVの開発がまだ成功していないこと、そして開発が成功しても利益の確保はしばらく厳しそうだと考えているからです。

今回の記事はNikola Corpの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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