クラウドフレア(CloudFlare Inc / NET)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. CloudFlare In(NET)について
1-1. 業種
電子・情報テクノロジー、サービス、ネットワーク&通信
1-2. 事業の概要
クラウドフレアは、CDN(Content Delivery Network)を主軸とし、DNS(ドメイン名とIPアドレスを相互互換する仕組み、管理するシステムのこと)やセキュリティ強化などのネットワークサービスも提供する企業です。
クラウドフレアは過去に史上最大規模のDDoS攻撃(複数の機器を踏み台にして、攻撃対象に過剰なパケットや通信負荷を与えるサイバー攻撃)の被害を緩和した実績がいくつもあります。
90Tbps以上の容量を備えており(ちなみにファストリーは容量145Tbpsとしている)、”The ForresterWave”の”DDoS軽減ソリューション 2021年第1Q”では”リーダー”として選ばれました。
また、2020年10月にはクラウドベースの”Cloudflare One”という統合ソリューションの提供を始めました。
”Cloudflare One”は企業向けのNaaS(ネットワークaaS)で、リモートの従業員、会社のオフィス、データセンターの安全な相互接続を可能にします。
クラウドフレアのエッジを利用したこのソリューションによって、従業員はどこからアクセスしてもオフィス内と同様のセキュリティ保護を受けることができるようになるのです。
また、オクタなどのID管理プラットフォームとも連携しています。
なお、収益源としては従量課金と契約による収益の2パターンがありますが、従量課金に注力するようです。
1-3. チャート
クラウドフレアの株価チャートはこのようになっています。2019年のIPO後はあまり変動が無く、大きく上昇したのは2020年の10月頃からです。
その後、2020年12月頃から2021年5月頃まではしばらく値上がりできずに上下を繰り返していましたが、6月から再び上昇に転じて、現在は過去最高値の水準にあります。(2021年8月26日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 短期の資金繰りは問題なし
- 自己資本比率は高い
- キャッシュフローは良くない
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

(単位:百万ドル)
貸借バランスは”安定タイプ”です。
流動比率は約800%、当座比率は約780%で、高すぎるくらいの数値ですが、短期の資金繰りに問題はありません。
固定比率も約30%と優秀な数値です。
2-1-2. 資本の比率
IPOからあまり時間が経っていないこともあり、自己資本比率は59%と高めの数値です。
2-1-3. キャッシュフロー
2020年は営業活動がマイナス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。
事業の赤字が少しずつ増加しており、営業活動はマイナスです。
また、有価証券の購入に12.7億ドルを使用したため、投資活動は大きなマイナス収支です。
財務活動は、転換社債発行による資金調達をおこなったことにより、プラス収支となっています。
2-1-4. 項目まとめ
ひとまずの資金繰りは問題ありませんが、キャッシュフローはまだ良くない状態です。
2-2. 収益性
- 赤字のため、ROE・ROAともにマイナス
- 赤字額、資産どちらも増加
- 損失より売上の方が大きく伸びている
2-2-1. ROE(自己資本利益率)

ROEは大きなマイナスです。
2019年にマイナス値が大きく減少しましたが、これはIPOでの自己資本の増加によるものです。
2020年は自己資本、損失がどちらも増えたため、ROEはあまり変動しませんでした。
2-2-2. ROA(総資産利益率)

ROAもROE同様の上下をしています。
2020年のマイナス値減少は、転換社債発行で負債が増加(それによって総資産が増加)したためです。
2-2-3. 項目まとめ
資産・損失のどちらも増加しています。
売上と損失の割合を比較すると、損失の比率は減少してきていますが、現状での収益性はまだほとんどありません。
2-3. 経営の効率
- 総資本回転率は低い
- 総資産の7割近くが短期投資
- 棚卸資産はなし
2-3-1. 各回転率

総資本回転率は0.31回と低いです。
ただ、現時点では総資産の7割近くが売買目的の有価証券なので、その影響もあります。
また、固定資産はあまり大きくないため、既に1.7回もの数値があります。
棚卸資産はありません。
2-3-2. 項目まとめ
総資産から見ると売上はまだまだ足りませんが、固定資産があまり大きくないため、その部分の数値は既に1回を超えています。
IPOなどで資金を得て投資目的の資産が大きくある状態ですが、このまま赤字が続けばこれは減っていくでしょう。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上高は順調に増加
- 事業にかかる費用以上の売上の伸びがある
- 売上高研究開発費率は29.5%
2-4-1. 売上高と営業利益

売上は大きく増加しています。

営業損失も大きいですが、2020年は微減となりました。
人員の増加や報酬費用の増加といった人件費を中心に販売費、管理費、研究開発費が増加していますが、それ以上に売上が増加しました。
2-4-2. 研究開発費
2020年の売上高は約431.06百万ドル、研究開発費は約127.14百万ドルだったので、売上高研究開発費率は29.5%で、平均の約5.6倍です。(科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は5.2%とされている)
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
事業にかかる費用以上に売上が伸びており、今後の成長に期待が持てます。
2021年上半期も前年同期の1.5倍程度の売上を上げており、まだ成長は続きそうです。(記事作成時点で第2Qまで発表済み)
また、新商品を積極的に開発していることもあってか研究開発費率が高いですが、現状はまだIPOして2年程度なので、今後の更なる発展のためにも問題ない投資だと考えます。
2-5. 顧客について
2020年末時点で、170ヶ国以上に11万1,000以上の有料顧客を抱えているとしています。
顧客の産業は多岐にわたり、テクノロジー、ヘルスケア、金融サービス、小売、非営利、政府などが挙げられています。
年間10万ドル以上の売上がある大口顧客は、2020年末時点で828社です。
また、2018年~2020年の期間で、収益の10%を超える顧客はいないとしているので、特定の1社に大きく依存している状況ではないということでしょう。
3. まとめ
クロとしては、クラウドフレア(CloudFlare Inc)は割高なので購入タイミングには気を付けたいが成長に期待する銘柄です。
(PBR:45.28、PSR:89.89 ※楽天証券のPBR(実)数値、時価総額38,747.61百万ドルと2020年売上から算出。2021年8月26日閲覧)
事業費用の増加割合を上回る継続的な売上の伸びと、積極的な新商品の展開が魅力的と考えます。
また、この記事を書いている時点での最新となる第2Q決算では、株式報酬の戻し入れの影響も有りますが、営業活動キャッシュフローがプラスに転じました。
ただ、赤字もじわじわと増えています。
債務の割引の未償却分も残っていますし、まだ赤字決算は続きそうです。(第2Q決算時点では累積赤字が約5億ドル)
CDN企業を調べた結果、エッジコンピューティングという点ではファストリーの技術の方が高いような印象ですが、クラウドフレアはより一般企業向けにサービスを展開しているように感じました。
今回の記事はCloudFlare Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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