エバースピン【MRAM】銘柄分析_21年度決算更新版

米国株の年次決算書・銘柄分析
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エバースピン・テクノロジー(Everspin Technologies,Inc. / MRAM)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性※収益性の維持には懸念有
  • 経営の効率
  • 成長への期待※市場への期待込み

それでは見ていきましょう。

1. Everspin Technologies,Inc.(MRAM)について

1-1. 業種

半導体、電子テクノロジー

1-2. 事業の概要

エバースピン・テクノロジーは、MRAM(磁気抵抗メモリ)を主力として開発・製造を行う企業です。

MRAMは2006年にフリースケール・セミコンダクタが初めて商用化したとされており、その後同社からMRAM事業をスピンアウトして生まれたのがエバースピン・テクノロジーです。
スピンアウト後も新世代技術の開発を行い、MRAMの市場を牽引し続けています。

半導体ファウンドリから購入したウェーハ(半導体の材料。シリコンを薄い円板に切り出したもので、様々な加工を施された後にチップ状に切り離される)に加工・処理を施すことで、各市場に適したMRAMを提供しており、その過程ではサードパーティに頼る部分も大きいです。

また、顧客のニーズに合わせて設計を行うことが多く、販売サイクルには3ヶ月~18ヶ月かかる場合もあります。

なお、航空宇宙分野におけるMRAMの耐放射線基本設計技術ライセンスも取得しています。

MRAMの特徴期待される点・将来性についてはこちらで詳しく紹介しています。

1-3. チャート

エバースピン・テクノロジーの株価チャートはこのようになっています。
2021年11月11日の四半期決算発表を期に急上昇した後、下降傾向が続いています。(2022年3月22日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • ひとまずの資金繰りは問題なし
  • 自己資本比率は69%と高い
  • 2021年は黒字となりキャッシュフロー改善

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2021年決算書におけるMRAM貸借バランス

(単位:百万ドル)

貸借バランスは”安定タイプ”です。

流動比率は約356%、当座比率は約287%と短期的な資金繰りには全く問題ありません。
固定比率は10%に抑えられており良好です。

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は69%で、2020年から15ポイント上昇しました。
かなり高い数値です。

2-1-3. キャッシュフロー

営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。

2021年は事業が黒字となり、営業活動によるキャッシュフローもプラス収支となりました。
また、このプラス収支には、株式報酬戻入れの大きさも影響しています。

投資活動では不動産や設備の購入を、財務活動では債務の返済やストックオプションによる株式発行などを行っています。

2-1-4. 項目まとめ

自己資本比率が高く、現金などを多く保有しているため、ひとまずの資金繰りは問題ありません。
2021年はキャッシュフローも改善しており、安定性は十分です。

2-2. 収益性

  • 2020年までは赤字続きだが、2021年は黒字
  • 2021年のROE・ROAは米国平均と同程度~それ以上
  • 2021年は恒常的でない売上・利益が含まれる

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

MRAMのROE(自己資本利益率)推移_2021

2020年までは赤字続きで、ROEもマイナスです。

しかし2021年は黒字となり、ROEがプラスになりました。
また、原価を抑えながら売上を増加させたこともあり、米国平均程度の数値を達成しています。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

MRAMのROA(総資産利益率)推移_2021

ROAもROE同様に推移しています。
また、ROAに関しては米国平均とされる6%~8%を超えました。

2-2-3. 項目まとめ

損失額の減少が続いた後、2021年には黒字となりました。
また、売上原価が2020年より減少したこともあり、ROE・ROAは米国平均と同程度~それ以上の数値を達成しています。

ただ、2021年の売上には特許の販売などによる”恒常的ではない売上が含まれて”おり、しかもこの売上は利益率の高いものでした。
今後も同程度の数値を維持するのは少々難しいかもしれません。

2-3. 経営の効率

  • 回転率は問題なし
  • 資産があまり増えないので回転率上昇傾向

2-3-1. 各回転率

MRAMの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率_2021

総資本回転率は最低ラインの1回を十分超えています。

また、減価償却などによって固定資産が減少したため、固定資産回転率が大きく上昇しました。

全体的に見ても、多少の上下はあるものの、回転率は上昇傾向にあります。
これには直近の売上増加はもちろん、資産が増減を繰り返しており、継続的に増えていない(例えば2018年~2021年の4年間で総資産が最も大きかったのは2018年)ことが影響しています。

2-3-2. 項目まとめ

資産を効率的に活用し、売上をあげていると言えます。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 直近2年間は売上増加
  • 2021年は特にライセンス収益が増加
  • ただしライセンス収益の維持は期待薄
  • 2021年は営業利益が発生
  • 売上高研究開発費率は平均の3倍

2-4-1. 売上高と営業利益

MRAMの売上高推移_2021

売上は上下していますが、直近2年間は増加しています。
特に2021年は前年比31%の成長を見せました。

製品売上が増加した2020年に対し、2021年の売上増加を牽引したのはライセンス収益でした。
製品売上が前年比10%の成長だったのに対し、ライセンス収益は414%という成長率を記録しています。
なお金額にすると、製品売上は約44百万ドル、ライセンス収益は約11百万ドルです。

ただ、このライセンス収益は恒常的な売上ではありません。
特に2021年は特許5つを売却した収益5.3百万ドルも含まれているため、次年度以降も同様の売上が発生するかという点には疑問が残ります。

しかし、売上の大部分を占める製品売上も増加している点は良い傾向です。

なお、2019年の売上減少は一部顧客を失ったためだとされています。

MRAMの営業利益(損失)推移_2021

営業損失は年々減少し、2021年には黒字となりました。

2021年は売上が増加した一方で、原価率の低いライセンス収益の増加、製品製造での歩留まり率(投入原料の量に対する良品の割合)改善などによって、原価が減少しました。
そのため、粗利率は2020年の43%から60%へ上昇しています。

事業に関する費用も増加しているものの、その増加幅はあまり大きくありません。
金額的に最も大きく増えた費目であっても1.7百万ドル程度でした。(研究開発費。前年比16%増加)

2019年に行った人員削減の効果もあると考えられます。

2-4-2. 研究開発費

売上高は約55.15百万ドル、研究開発費は約12.63百万ドルだったので、売上高研究開発費率は22.9%で、平均の約3倍です。(科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は7.8%とされている)

比率としては昨年から3ポイント低下しましたが、それでも大きい数値です。

※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019

2-4-3. 項目まとめ

近年、MRAMの市場規模が急伸する見込みであるという予測が複数のメディアに掲載されています。
この市場拡大の波に乗れれば、成長の可能性は大いにあると考えます。
ただ”半導体不足が業績に大きな影響を及ぼしている”としており、今後の市場や供給の行方が気になります。

また、ライセンス収益は今後減少する可能性があるため、特に製品販売の伸びが重要になってきます。

2022年第1Qのガイダンス・見込みを見ると、少なくとも第1Qは少々苦戦しそうな気配を感じられるので、短期的な急成長は難しいかもしれません。

3. まとめ

クロとしては、エバースピン・テクノロジー(MRAM)は、MRAMの今後の市場拡大に期待して、中長期目線での保有を続けたい銘柄です。

ライセンス収益や半導体不足など、気になる点もありますが、MRAMの今後の需要増加に期待したいと思います。

今回の記事はEverspin Technologies,Inc.の決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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