マーシュ・アンド・マクレナン(Marsh & McLennan Companies, Inc. / MMC)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
金融業も行っていますが、一般的な決算書フォーマットで提出されているので、通常通り様々な視点で見ていきます。
また、前回テーパリング実施時やその前後の業績の大まかな変化もまとめました。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. Marsh & McLennan Companies, Inc.(MMC)について
1-1. 業種
保険ブローカー、金融、サービス
1-2. 事業の概要
マーシュ・アンド・マクレナンは、リスク、戦略、人材の分野において、顧客へアドバイスやサービスを提供するグループで、保険ブローカーである”マーシュ”や人事コンサルティングの”マーサー”など、複数の企業で構成されています。
リスク・保険サービス事業とコンサルティング事業の2つを柱とし、具体的には、人材やブランドなどの専門的なコンサルティング、リスク管理サービス、保険や再保険(保険者側が、責任の一部~全部を別の保険者に移転=更に保険をかけること)の仲介、資産運用などの事業を行っており、130ヶ国以上で展開しています。
コンサルティング分野は、保険会社のコンサルや経営コンサル、投資コンサルなど多岐にわたります。
また、顧客用のアナリティクス・プラットフォーム、保険を提供するための仲介プラットフォームなどデジタル・ITによるサービスも提供しています。
1-3. チャート
マーシュ・アンド・マクレナンの株価チャートはこのようになっています。2020年2月のコロナ感染拡大で一時的に下落していますが、程なく持ち直してコロナ前の株価まで戻りました。
2021年3月終盤から上昇しはじめ、現在は過去最高値の水準です。なお、長期で見ると2009年あたりから右肩上がりに成長しています。(2021年7月8日)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 資金繰りは問題なし
- 自己資本比率は高くないが問題はなし
- 全体的に安定している
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは”ギリギリ運用タイプ”です。
流動比率は約120%、当座比率は約110%で、短期の資金繰りは問題ありません。
固定比率は約270%ですが、純資産と固定負債でカバーできています。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は約28%と少々低いですが、問題ない数値です。
2-1-3. キャッシュフロー
2020年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスという”安定タイプ”の組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。
2020年は財務活動での債務の返済が大きな額になっています。
また、2019年はJLT買収のために投資活動のマイナスが大きい一年でした。
2-1-4. 項目まとめ
自己資本比率が低めの数値ですが問題があるほどではなく、全体的に安定しています。
2-2. 収益性
- 純利益が増加中
- 平均程度の収益性はある
- 買収によって効率低下(まだ買収前の数値に戻っていない)
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
ROEは安定して米国平均をやや超えています。
ただ、自己資本が小さめなので過信はできません。
2020年も利益は増加しましたが、その分が留保所得として自己資本を増やしたことで、ROEは若干低下となりました。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
ROAは、米国平均程度の数値です。
買収で総資産が増えたことにより、2019年に低下しています。
2-2-3. 項目まとめ
純利益は増加を続けており、米国平均程度の収益性はあります。
ただ、現在は買収の影響で若干効率が下がっています。
2-3. 経営の効率
- 2019年から、買収による資産増加で回転率が低下
- それ以前にも買収を繰り返しており回転率は低め
2-3-1. 各回転率
総資本回転率は約0.5回で、最低ラインの半分程度です。
2019年の買収による資産増加で回転率が低下しましたが、それ以前にも買収を繰り返しており、回転率はあまり高くありません。
固定資産回転率は約0.7回で、こちらも買収の影響を受けています。
特にのれんが膨らんでおり、固定資産の60%以上を占めています。
棚卸資産はありません。
2-3-2. 項目まとめ
買収を繰り替えたことで資産(主にのれん)が増加し、なかなか回転率は上がっていません。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上は増加中
- JLT買収関連費用が落ち着き、営業利益も増加
2-4-1. 売上高と営業利益
売上は増加を続けています。
また、2020年はコロナ感染拡大の悪影響を受けたともしており、リスク・保険サービス事業が3%増加した一方で、コンサルティング事業が2%減少しています。
若干停滞気味だった営業利益が、2020年は前年比約16%増加しました。
2-4-3. 項目まとめ
売上が増加を続けている点や、積極的に同業他社などを買収している点から、成長への勢いはありそうです。
2-5. 2014年テーパリング前後はどうだった?
以下のテーパリング中やその前後の決算を見た結果、テーパリングや前後の期間もほぼ増収増益を続けており、2015年の売上のみ1%未満の減少(利益は増加)していました。
- 前回テーパリング等実施時期
- テーパリング実施示唆…2013年5月22日
- テーパリング実施期間…2014年1~10月
- 短期金利(FF金利)上昇スタート…2015年10月頃
これらの期間の収益(売上)は、2015年に微減したのみで、順調に増加していました。
純利益は2016年まで増加を続けています。
2-5-1. 事業別の概要
リスク・保険サービス事業の売上は2015年に微減し、総売上の減少につながりました。
コンサルティング事業は2015年の伸び率がわずかだったものの、増加を続けました。
2-5-2. 事業ごとの売上に占める割合
テーパリング実施直前の2013年の収益の割合は、リスク・保険サービス事業54%、コンサルティング事業46%で、前後の年も大きな差はありませんでした。
一方2020年の比率は、リスク・保険サービス事業60%、コンサルティング事業40%です。
JLTの買収によって再保険などが強化されたことや、2020年にコンサルティング事業の売上が減少したことが影響しています。
(同時期の株価チャート変動率を金融ETFや他銘柄と比較した記事もこちら↓にあります。)
3. まとめ
クロとしては、マーシュ・アンド・マクレナン(MMC)は不安点もゼロではないが期待したい銘柄です。
のれん資産がかなり大きいので将来の減損の可能性が気になりますが、売上や利益が(途中1~2回の減少はあるものの)2011年からほぼずっと増加傾向にあり、今後の成長にも期待したいです。
また、前回のテーパリングや金利上昇の際にも決算があまり悪化せず、株価チャートも強い上昇を見せていたことから、それらの時期に備えて保有するつもりです。
ただ、前回テーパリング時に売上が減少した、リスク・保険サービス事業の比率が増えていることや、前述したのれんへの懸念、パンデミックという特殊な状況下ということから、資金を他銘柄と分割するなどリスクヘッジはしておこうと思います。
今回の記事はMarsh & McLennan Companies, Inc.の決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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