ミロマトリックス【MIRO】銘柄分析_バイオで臓器開発_ドレッシング剤の実績あり

米国株の年次決算書・銘柄分析
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ミロマトリックス・メディカル(Miromatrix Medical Inc / MIRO)の決算書分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
※まだ2021年第2Q(6月締め四半期)決算しか公表されていないため、この四半期決算の数値への言及が多い内容となっています。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率※判定不可能に近い
  • 成長への期待※数値上の評価

それでは見ていきましょう。

2021年度第4Qと年末決算はこちら

1. Miromatrix Medical Inc(MIRO)について

1-1. 業種

バイオテクノロジー、医療、臓器移植

1-2. 事業の概要

ミロマトリックスは、移植可能なヒトの臓器をバイオテクノロジーの力で作り出そうとしている企業です。
ヒトと、ECMの93%以上が相同とされるブタの臓器を母体として、日々開発が進められています。

ECMは”細胞外マトリックス”の略語で、これはざっくり言うと”細胞の周りを取り囲むベッド”のようなものです。
ECMは細胞の安定した生存のために必要で、この相同性が高いと、抗体の形成や副作用の可能性を大きく低減できます。

ブタの臓器をヒトに移植できる臓器にするため、脱細胞化と再細胞化という処理を行うのですが、ミロマトリックスはこれらの処理において独自の技術やシステムを開発しました。

なお、この一連の処理(脱細胞化と再細胞化)を大まかに説明すると、ブタ臓器の組織からブタの細胞を除去し、代わりにヒトの細胞を組み込むという工程です。つまりECMというベッドの中身をヒト細胞に入れ替え、成長させるのです。
また、脱細胞化には臓器移植の拒絶反応を抑えるという利点もあります。

現状はまだ臨床試験開始に至っていませんが、前臨床試験では、肝臓と腎臓において血管系・臓器機能を持たせることに成功しており、2022年には外部肝臓補助システムの臨床試験が開始される予定です。
また、同様の技術プラットフォームで、肺、すい臓、心臓などの開発を行う姿勢も見せています。

なお、過去にはブタの肝臓由来の手術用製品”MIROMESH”と”MIRODERM”を開発し、商業化した実績もあります。
”MIROMESH”は組織の修復や補強のために移植する外科用商品で、”MIRODERM”は創傷被覆材(ドレッシング材とも呼ばれる、傷などを覆う素材)です。
この2つの商品を扱う部門は2019年にスピンアウト(Reprise社)しましたが、売上のロイヤルティを受け取っており、いまだに販売できるものの無いミロマトリックスの主な収益源となっています。

なお、アメリカでは、臓器移植を待っている患者は10万人以上と推定され、臓器移植が間に合わずに毎日20人が亡くなっているとされています。

1-3. チャート

ミロマトリックスの株価チャートはこのようになっています。2021年6月28日にIPOを完了したばかりで、まだあまり大きな値動きはありません。
7月中旬に下降から上昇へ転じ、現在は約11ドルです。(2021年8月16日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • IPOした直後の数値
  • 自己資本比率は90%超えだが、おそらく今後下がっていく
  • キャッシュフローは良くない

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2021年6月決算書におけるMIRO貸借バランス

(単位:百万ドル)
※この貸借バランスは、記事作成時点で最新(IPO後の数値)となる第2Q四半期決算の内容です

IPOした直後ということもあり、貸借バランスは”安定タイプ”です。
ちなみに2020年末時点では5,100万ドルの債務超過状態でした。

IPOで資金が調達できたので、現状は短期の資金繰りには全く問題ありません。

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は94%です。
非常に高い数値ですが、まだ販売できる商品が無いことを考えると、これから下がっていくでしょう。

2-1-3. キャッシュフロー

2020年は営業活動がマイナス、投資活動がプラス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローもマイナスです。

事業が赤字で営業活動がマイナスとなっています。
投資活動においては、”MIROMESH”と”MIRODERM”を販売するReprise社(2019年にミロマトリックスからスピンアウトした)の保有株式売却でプラスとなりました。

また、財務活動はIPOによる株式売却でプラス収支です。

2-1-4. 項目まとめ

IPOによって財務状態は改善しましたが、まだ販売できる商品が無いので、ここから再び資金がどんどん出ていくことになります。

2-2. 収益性

  • 販売できる商品が無く、
    スピンアウトした企業からのロイヤルティのみが収益源
  • 大きく赤字

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

ROEはー6.5%です。
なおこれは、2021年1月~6月の上半期の数値です。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

ROAはー6.2%です。

2-2-3. 項目まとめ

売上がほとんどないため、大きな赤字が続いています。
なお、2020年上半期と比較すると2021年上半期の純損失額は小さいですが、これはReprise社の株式売却によるものです。

2-3. 経営の効率

  • 収益が少なく総資本回転率はほぼゼロ

2-3-1. 各回転率

販売できるものが無く、わずかなロイヤルティのみの収益のため、総資本回転率は0.0002回です。
現状の固定資産は実験装置や土地代のみで、棚卸資産はありません。

2-3-2. 項目まとめ

収益が小さく、また、IPOによって多くの現金を得たため、回転率は非常に低いです。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 販売できる商品はなく、売上はわずかなロイヤルティのみ
  • 毎期、ミネソタ大学へライセンス契約による支払いが発生
  • 売上の290倍近い研究開発費

2-4-1. 売上高と営業利益

2021年上半期の売上はわずか1万5,000ドルです。
これは全て、スピンアウトしたReprise社からのロイヤルティです。

なお、2020年上半期の同売上は2万ドルでした。

2021年上半期の営業損失は約6.3百万ドルです。

特に大きいコストは研究開発費で、4.3百万ドルかかっています
また、ミネソタ大学とライセンス契約を結んでおり、ミロマトリックスには売上高に応じたロイヤルティを支払う義務があります。
現在はまだ売上がありませんが、契約に定められた最低支払額の支払いが続いています。

2-4-3. 項目まとめ

販売できる商品がなく、数値上は良いところがありません。
セクター全体としても発展している途中ですし、企業の開発成功に賭けるかどうかを決めるしかない内容です。

ただ、研究開発には多額の資金を投じています。

3. まとめ

クロとしては、ミロマトリックス・メディカル(Miromatrix Medical Inc)は市場が落ち着いたら少量の購入を検討したい銘柄です。

理由としては、組織の脱細胞化・再細胞化といった同社のプロセスと技術が、他の臓器開発アプローチと比べて現実的な案だと考えるからです。

ブタの臓器の人体への移植は、相同性が高いこともあって、以前から研究が進められてきました。
数年前には”遺伝子操作で、ヒトにとって危険な内在ウイルスが不活性化したブタを作ることに成功した”というニュースもあり、移植へ一歩近づいたと報じられています。

これもすごい発明ではありますが、個人的に、ブタ臓器を母体にヒト臓器を作り出すというアプローチの方が拒絶反応の点でも優位ではないかと感じました。

とはいえ、まだまだ技術的な面での障害はもちろん、動物愛護という点でも批判を浴びることがあるでしょうし、開発に時間がかかれば増資(それに伴う株式価値の希薄化リスク)も必要となります。

リスクの高い銘柄なので、堅実な投資には不向きです。

今回の記事はMiromatrix Medical Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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