メットライフ(MetLife Inc / MET)の決算書(10-K)分析、事業内容などをまとめました。クロの判断は以下の通りです。
なお、銀行同様決算書がやや特殊なので、主に利息や全般的な収益・利益、事業ごとの伸び率に焦点を当てて見ていきます。
また、前回テーパリング実施時やその前後の業績の大まかな変化もまとめました。
- 2020年は減収減益
- 他はほぼ横ばいだが投資による収益が減少
- 前回テーパリング時期は、実施年まで好調
それでは見ていきましょう。
1. MetLife Inc(MET)について
1-1. 業種
生命保険、医療保険、金融サービス
1-2. 事業の概要
メットライフは生命保険を中心としたアメリカの大手保険・金融サービス会社です。
主に保険、年金、福利厚生、資産管理の事業サービスを展開しており、そのセグメントは”米国”、”アジア”、”ラテンアメリカ”、”EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)”、といったエリアと、アメリカで積極的に販売することを止めた商品・事業で構成される”メットライフホールディングス”の、合計5つに分けられています。
保険には、生命保険、歯科保健、障がい保険、視覚保険、健康保険などがあり、福利厚生サービスではこれらの保険やプリペイドリーガルプランを提供しています。
また、年金サービスでは、定額年金・変額年金や、確定拠出年金制度に基づいた商品を提供しています。
多くのサービス商品を取り扱っていますが、セグメントや地域によって取り扱い内容、販売チャネルに違いがあります。
1-3. チャート
メットライフの株価チャートはこのようになっています。コロナ感染拡大によって下落した後じわじわと上昇を続け、現在はコロナ前の株価を超えています。
長期的に見ると、2007年夏頃の最高値の水準まで戻ってきたというところです。(2021年7月7日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 売上高と利益の推移
- 2020年は減収減益
- 投資による収益が減少
- ユニバーサルライフ・投資型の保険料は前年通りを維持
2-1-1. 総売上高
2020年の総合的な収益(売上)は、減少しています。
また、2019年の伸び率は約2.5%程度と、2018年の9%よりかなり小さい結果でした。
2-1-2. 純利益
ここ数年は増加傾向にあった純利益ですが、2020年は前年比8%減少しました。
これは投資による収益・利益の減少や、法人税等引当金の増加によるものです。
2-1-3. 売上の内訳
以下は主な収益源となる項目ごとの売上高の推移です。
※このほかの収益要因もあるため、合計と総売上高には若干ズレが生じます
保険料収入は2018年以降減少しており、停滞気味です。
ユニバーサルライフ・投資型商品の保険料も、ほとんど変動がありません。
投資による収益は上下を繰り返しており、2020年は約9%減少しました。
2-1-4. 項目まとめ
総売上、純利益共に2019年より減少する結果となりました。
特に投資が不調でしたが、ユニバーサルライフ型・投資型の商品の保険料は前年の収益額をキープしました。
2-2. 財務状況・キャッシュフローについて
- 変額年金などの運用資産・負債が増加
- 将来支払うべき保険金が増加
2-2-1. 資産・負債・資本について
資産では住宅ローン(先に支払うため投資扱い)が増加し、保険料は減少しています。
負債では、”将来支払うべき保険金”の計上や”投資型商品に関連する契約者の預金”が増加しました。
また、変額年金などの運用に用いられる資産・負債が増加しました。
2-2-2. キャッシュフロー
2020年のキャッシュフローは、営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせですが、フリーキャッシュフローはマイナスです。
フリーキャッシュフローがマイナスなのは、主に、投資活動における満期保有目的の有価証券の購入額が大きいためです。
2-3. 収益性
- 2020年は利益減少&資産増加でROE・ROA低下
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
2020年は自己資本の増加と純利益の減少でROEが低下しました。
また、2019年は純利益が増加したものの、一時的に自己資本が小さくなっていた2018年の方が高い数値です。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
ROAは純利益の増減と同様に上下していますが、総資産の増加によって、2020年の数値は、より低くなっています。
2-2-3. 項目まとめ
2020年はROE・ROAともに低下しました。
利益の減少と資産の増加の両方が影響しています。
なお、ROAが非常に低いですが、金融業の資産の大きさによるものです。
2-4. 2014年テーパリング前後はどうだった?
以下のテーパリング中やその前後の決算を見た結果、テーパリングが実施された年までは業績は上向きでした。
また、投資による収益は2014年・2015年と減少しました。
- 前回テーパリング等実施時期
- テーパリング実施示唆…2013年5月22日
- テーパリング実施期間…2014年1~10月
- 短期金利(FF金利)上昇スタート…2015年10月頃
これらの期間の収益は、2013年は微増、2014年には7.5%の増加となったものの、その後は減収に転じました。
純利益は、のれんの減損があった2012年が非常に低かったため、2013年・2014年と連続増加になりましたが、2015年・2016年は一転して減少しました。
2-4-1. 事業別の概要
※2017年のブライトハウスピンオフに伴い、2015年以降の非継続事業の収益が除外されました。整合性が取れなくなるので、今回は基本的に除外前の数値で比較しています。
保険料による収入は、伸び率4%以内で上下していますが、テーパリング示唆があった2013年は微減、テーパリングが実施された2014年は増加、短期金利上昇が始まった2015年は減少しています。
ユニバーサルライフ・投資型商品の保険料は2014年まで増加を続けていましたが、2015年から減少しました。
なお、スピンオフに伴い、9,000百万ドル前後あった売上は5,500百万ドル前後になっています。
投資による収益は2013年まで増加し、2014年~2015年は減少しました。
この事業でも、スピンオフで約3,000百万ドル前後の売上減少が起きています。
2-4-2. 事業ごとの売上に占める割合
テーパリング実施直前の2013年の収益の割合は、保険料55%、ユニバーサルライフ・投資型商品の保険料14%、投資による収益33%で、前後の年も大きな差はありませんでした。
なお、スピンオフに伴う修正がされた2015年は保険料59%、ユニバーサルライフ・投資型商品の保険料9%、投資による収益26%、その他5%という割合で、2020年と大差ありません。
(同時期の株価チャート変動率を金融ETFや他銘柄と比較した記事もこちら↓にあります。)
3. まとめ
クロとしては、メットライフ(MET)を一時的に保有しようかと考えています。
というのも、前回のテーパリングが実施された2014年辺りまでの決算が良く、同時期の株価も、上下が激しいものの金融ETF以上の強さを見せているからです。
スピンオフによって収益が減少し、特に投資による収益の割合が減っていますが、2014年に一足先に減少した項目でもあるので、テーパリング時の影響としては、あまり問題は無いだろうと考えています。
なお、2021年第1Qは、保険料・投資収益が増加していますが、デリバティブの損失(長期金利の変動による)によって総売上が前年同期比15%マイナスです。
今回の記事はMetLife Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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