メルカドリブレ(MercadoLibre Inc / MELI)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. MercadoLibre Inc(MELI)について
1-1. 業種
電子テクノロジー、ソフトウェア、インターネットサービス
1-2. 事業の概要
メルカドリブレはアルゼンチンの企業で、南米向けの総合ECサイト”メルカドリブレ・マーケットプレイス”を運営しています。
日本には展開していないので馴染みがありませんが、南米ではAmazonに負けない、もしくはそれ以上の知名度・満足度を誇ります。
”マーケットプレイス”という名の通り(メルカドリブレは、スペイン語でフリーマーケットという意味でもある)複数の企業が出店していますが、メルカドリブレはこれらの出店企業に対し、オンライン広告をはじめとした支援サービスの提供も行っています。
また、メルカドリブレは自社の決済ソリューションを持っています。
”メルカド・パゴ”というこのサービスは、現金主義(銀行口座を持たない人々も多い)の南米に合わせ、クレジットカードなどが無くても使用できるシステムです。
ユーザーの支持も高く、今では自社サイトだけでなく他サイトや実店舗でも使用される収益源の一つとなりました。
また、一定金額の購入で送料無料となるサービスや、配送の追跡・紛失補償(南米では物流があまり安定していないため重要なポイントとなっている)、一部の荷物の自社配送など、ユーザーの満足度を高めるサービスを行っています。
ECサイトだけでなく独自の決済ソリューションを持ち、フィンテック、ロジスティクス、アドと幅広いプラットフォームを揃えるメルカドリブレは、”デジタルとオフライン両方での完全なポートフォリオの提供”を掲げています。
1-3. 南米市場のリスクと成長性
情勢の不安定な南米の企業であるという点はリスクですが(特にメルカドリブレの本拠地であるアルゼンチンは財政危機が度々報じられている)、それと同時に、今急速にインターネットが普及している、成長途中の市場でもあります。
2020年のメルカドリブレの売上はブラジルが55%を占め、25%がアルゼンチン、15%がメキシコとなっています。この3ヶ国のインターネット普及率は、それぞれ74%、75%、72%です。
この3ヶ国にもまだ市場拡大の余地がありますが、売上のうち”その他”にまとめられる数%の中には、インターネット普及率55%のボリビア、54%のエクアドル、44%のグアテマラなどが含まれており、これらの国にもっとネットが普及すれば、更なる成長を見込めます。
インターネット普及率は、GLOBAL NOTE世界のインターネット普及率国別ランキング・推移(https://www.globalnote.jp/post-1437.html)を参照。2021年9月8日閲覧。
1-4. チャート
メルカドリブレの株価チャートはこのようになっています。2020年2月頃のコロナ感染拡大による一時的な下落の後、大きく上昇しています。
2021年に入ってから市場の波や決算の影響で大きな上下を見せていますが、直近の決算が好評で、現在は過去最高値の水準にあります。(2021年9月8日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- ひとまずの資金繰りは問題なし
- 自己資本比率は低め
- 事業は赤字だが、買掛金・支払額増加で
フリーキャッシュフローは黒字
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは”安定タイプ”です。
流動比率は約150%、当座比率も約120%で、短期の資金繰りに問題はありません。
固定比率は約71%です。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は25%と少々低めの数値ですが、問題はありません。
2-1-3. キャッシュフロー
2020年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。
事業は赤字ですが、決済サービスの顧客・加盟店への支払金の増加が大きく、営業活動は大きなプラス収支となっています。
投資活動では設備の購入も行っているものの、ほとんどが投資への支出と、その売却・満期による収入で構成されています。
財務活動は、ローン等の支払い・収入が大半を占めています。
2-1-4. 項目まとめ
ひとまずの資金繰りには問題なさそうです。
2-2. 収益性
- 質の高いサービスのための費用が大きく、2018年から赤字に転落
- 2020年は損失がかなり削減された
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
2017年までは黒字でしたが、2018年から赤字が続いています。
赤字額(純損失額)は2019年が最も大きいですが、同年に増資を行い自己資本が大きく増加したことで、ROEのマイナス値は前年より小さくなりました。
2018年の赤字転落は、マーケティング費用の増加や送料補助の提供、自社決済・発送サービスが浸透したことによる回収費用などの追加コスト発生、MPOS(モバイルPOS)デバイスの販売拡大による原価の増加などによって起きたものです。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
ROAもROEと同様に2018年からマイナスですが、赤字額の増減に合わせて数値が変動しています。
2-2-3. 項目まとめ
直近3年間は赤字のため収益性はあまりない状態ですが、2020年の費用の増加を抑えられ、赤字額はかなり小さくなりました。
2021年に黒字決算に戻れるか気になります。
2-3. 経営の効率
- 総資本回転率が低め
- 棚卸資産回転率は高い
2-3-1. 各回転率
総資本回転率は0.6回と低めです。
現金を多く持っていることや、多額の短期投資資産を保有していることが影響しています。
固定資産回転率は3.4回です。
棚卸資産回転率は33.6回と高めの数値です。
2-3-2. 項目まとめ
棚卸資産回転率、固定資産回転率は問題ありませんが、総資本回転率が少々物足りない数値です。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上高は順調に増加
- 2020年は営業利益が発生(ただし最終的には赤字)
- 2021年上半期(記事作成時点の最新決算)も好調を維持
2-4-1. 売上高と営業利益
売上は増加を続けており、特にコロナ感染拡大による影響を受けた2020年は、前年比73%増加しました。
2020年は売上が大きく伸びたにもかかわらず、費用の増加が昨年より抑えられ、営業利益が発生しました。
ただ、輸送費用や販売コスト、決済サービスの利用が増加したことによって原価は増加しており、粗利率は前年の48%から43%へ低下しています。
また、営業利益がこれだけ出ていますが、ローンの支払利息や為替差損、税金の支払いなどによって、最終的には71万ドルの赤字となっています。
2-4-2. 研究開発費
2020年の売上高は約3,973.47百万ドル、研究開発費は約352.47百万ドルだったので、売上高研究開発費率は8.9%で、平均の約2.5倍です。(※米国平均との比較となる。科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は3.5%とされている)
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
売上高が継続的に成長しており、記事作成時点の最新決算となる第2Qを見ても、売上は増加を続けています。
また、アクティブユーザー数も増加傾向を維持しており、総商品数、販売数量など、2020年~2021年は指標が全体的に上昇しています。
ただ。費用・コストが大きく、安定した利益を出すには時間がかかりそうな点は気になります。
3. まとめ
クロとしては、メルカドリブレ(MercadoLibre Inc)は成長に期待はしたいですが、あまり多く保有するつもりはない銘柄です。
仮に2020年程の売上の伸びがなくなるとしても、インターネットが普及している最中である南米がターゲットである点から、継続的な成長に期待できそうです。
ただ、様々なサービスのために費用がかさんで利益を圧迫しているため、大きな利益を出せるようになるにはもうしばらくかかりそうです。
実際、記事作成時点での最新決算となる第2Qは、売上を大きく伸ばして黒字ではあるものの、利益の伸びがありません。
また、メルカドリブレは業績ガイダンスを行わない方針(より長期的な観点で意思決定を行う方針)であることを明言しているので、経営者の見通しを少々知りづらい企業でもあります。
今回の記事はMercadoLibre Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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