マキシオン・ソーラー・テクノロジー(Maxeon Solar Technologies Ltd / MAXN)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. Maxeon Solar Technologies Ltd(MAXN)について
1-1. 業種
再生可能エネルギー製品
1-2. 事業の概要
マキシオン・ソーラー・テクノロジーは太陽電池パネルの製造・販売を行う企業です。
最高品質と評価されるサンパワー(SPWR)の製品事業が2020年8月にスピンオフされ、誕生しました。
フィリピン、フランス、メキシコ、マレーシア、中国で太陽電池の製造やパネルの組み立てを行っており、100ヶ国以上で製品を販売しています。
最も大きな売上を上げているのはEMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)で、2021年度は全体の44%を占めました。
なお、次点は北米で29%、アジア・太平洋地域は25%となっています。
また、高い品質の製品を実現するため研究開発に多額の資金を投じており、2007年以降の使用金額は5億4,300万ドルです。(2021年度決算書内より)
1-3. チャート
マキシオン・ソーラー・テクノロジーの株価チャートはこのようになっています。
2020年8月に市場で取引され始めてから2021年2月にかけて、株価は大きく上昇しました。
その後下落し、2022年2月には10ドルを下回ったものの、最近は少々持ち直してきています。(2022年4月11日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 短期の資金は少々少ない
- キャッシュフローは良くない
- 自己資本比率は33%
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは”ギリギリ運用タイプ”です。
流動比率は127%ありますが、当座比率は70%しかなく、資金調達が必要となる可能性が高いです。
固定比率は150%と高いですが、純資産と固定負債でまかなえているので、こちらは許容範囲内と言えます。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は約33%と問題のない数値です。
2-1-3. キャッシュフロー
営業活動がマイナス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローもマイナスです。
営業活動では事業からの赤字が大きく、減価償却費や収益の前受分といった加算調整があっても、最終的にマイナス収支でした。
また、投資活動では新しいプロジェクト建設に資金を投じ、マイナス収支となっています。
財務活動では借入や株式発行による収入が大きく、債務返済による支出もありましたが、最終的には大きなプラス収支です。
2-1-4. 項目まとめ
株式発行を行っているので自己資本比率は低くありませんが、キャッシュフローは良くなく、当座比率の低さも少々気になります。
まだ黒字化する気配が無いため、資金調達は今後も必要となりそうです。
2-2. 収益性
- 2021年度までは損失減少
- 2022年度に再び損失拡大
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
事業が赤字のため、ROEはマイナスです。
自己資本の増減も多少はありますが、ROEの数値の変動は、損失額が2021年度まで減少傾向にあったものの2022年に再び増加したことを反映しています。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
総資産にもあまり急激な増加はなく、損失額の変動がROAの数値に表れています。
2-2-3. 項目まとめ
赤字続きで、しかも一時は縮小していた損失が2022年度に再び増加しています。
また、2021年度の途中まではサンパワー内の一事業だったこともあってか、資産・資本に極端に大きな変動はありませんでした。
2-3. 経営の効率
- 総資本回転率は最低ライン(1回)に届かず
- 売上の減少が続いて数値は低下傾向
- 棚卸資産回転率は平均より低い
2-3-1. 各回転率
総資本回転率は約0.7回と若干低い数値です。
売上の減少が続いたため、回転率は低下傾向にあります。
また、棚卸資産回転率は製造業の平均と比較すると低い数値です。
2-3-2. 項目まとめ
資産の極端な増加は無く、総資本回転率は最低ラインより若干低い程度の数値ですが、売上の減少が回転率の低下を招いています。
2-4. 成長している・していく企業か
- 売上は2年連続減少
- サンパワーが大手顧客
- 2021年度は営業損失増加
- 売上高研究開発費率は平均より若干高め
2-4-1. 売上高と営業利益
売上は2年連続で減少しました。
2021年度の売上減少は、採算性を求めたプロジェクトの選択によって、発電所プロジェクトのボリュームが減少したためだとしています。
なお、売上の29%(225.9百万ドル)がサンパワーへのソーラーモジュールの売上で、その他には売上の10%以上を占める顧客はいませんでした。
2021年度は営業損失が増加しました。
物流価格の上昇、原材料の価格上昇といった要因があった他、当時の契約の制約によって、増加したコストをサンパワーへ転嫁することができなかったとしています。
また、これは毎年のことですが、売上を原価コストが上回っているため粗利益が出ていません。
2-4-2. 研究開発費
売上高は約783.28百万ドル、研究開発費は約46.53百万ドルだったので、売上高研究開発費率は5.9%となります。
科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は5.2%とされており、研究開発費率は平均を少々上回る数値となります。
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
技術力には確かなものがありますが、売上は減少傾向にあり、すぐに成長することは難しそうです。
また、売上以上に原価コストがかかってしまっている点も気になります。
スピンオフしてから1年半程度しか経過していないので、これから改善されるかもしれませんが、現状は大きく期待しづらい内容です。
ただ、事業内容は社会のニーズにマッチしたものなので、顧客が増えれば状況が変化する可能性もあります。
3. まとめ
クロとしては、マキシオン・ソーラー・テクノロジー(MAXN)は、一旦購入を見送りたいと思います。
技術力・製品品質の評価は高い企業ですが、売上を原価コストが上回っている点、売上を順調に伸ばせていない点が気になります。
また、現在は大手顧客となっているサンパワーとの契約内容に一部不利な条件が含まれていたこともあり、その関係性から、今後も利益率の改善がなかなか難しいのではないかと考えます。
資産の流動性も気がかりなので、もうしばらく様子を見ていきたいと思います。
今回の記事はMaxeon Solar Technologies Ltdの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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