続く下落_その要因とチェックすべき指標は?

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不安要素がいくつも重なっている経済状況から、米国株・日本株共に下落が続いています。
そのため、今回は改めて株の下落要因となっている各種リスク、今後控えているイベント・経済指標の発表日など、チェックしておきたい項目を米国内外問わずまとめました。

1. インフレと景気への懸念

世界的に懸念されているインフレですが、現時点ではあくまで”一時的なもの”とされています。
しかし、FRB(米国連邦準備制度理事会)のパウエル議長の発言、FOMCの金利予測前倒しにも表れているように、”このインフレは長期化するのではないか”という不安が強まってきました。

また、コモディティ(エネルギーや貴金属、農産物などの商品)、特に原油の価格が上昇を続けていることもその不安を後押ししています。

2019年~2021年10月4日のCRB指数チャート

これはコモディティの価格変動を示す代表的な指数、CRB指数のチャートです。
CRB指数は、原油、金、銀、トウモロコシ、大豆などの19商品で構成され、これらの先物取引価格から算出されます。
このチャートから、コロナ感染拡大で一時的に下落した後、上昇の一途を辿っていることがわかります。

こうしたインフレによる景気の悪化が懸念される中、テーパリングの実施(11月実施がほぼ確実とされる)、2022年の金利引き上げが迫っています。
本来これらの施策は景気が回復してきたところで実施されるものですが、今回は一概にそうとも言えず、市場の動向が注目されます。

1-1. 雇用統計とCPIによる影響が不安定

テーパリングの実施時期を占う指標として注目されてきた雇用統計とCPI(消費者物価指数)ですが、今回は結果が良くても悪くても株式市場にマイナスの影響を与える可能性があります。

これまでは数値が良ければ「景気が回復した」という判断に、数値が低ければ「景気が悪化したためテーパリング・金利引き上げを先延ばし」という材料になっていました。

しかし今回の場合、数値が良ければ「インフレが加速しているから金融引き締め策が前倒しになる」と捉えられかねず、数値が低ければ「やはりインフレで景気が良くないのでは」と受け取られる可能性があり、株価の下落につながりかねません。

実際の数値が予想とどれだけ離れているのか、前回からどのように推移しているのか、雇用統計を踏まえた上でCPIの結果がどうなのか(発表は雇用統計が先)慎重な判断が必要となりそうです。

1-2. チェック:米国雇用統計

次回の米国雇用統計は、2021年10月8日21:30の発表予定となっています。
前回は23.5万人と予想を大きく下回る結果でしたが、今回の予想は50万人となっています。

1-3. チェック:CPI(消費者物価指数)

次回のCPI(消費者物価指数)は、2021年10月13日の21:30発表予定です。
前回は5.3%と予想通りの結果でしたが、2021年5月の数値から5%以上という高い数値が続いています。

2. アメリカ政府のデフォルトリスク

2021年9月末、期限ギリギリでつなぎ予算案は可決されましたが、アメリカ政府のデフォルトリスク(国債のデフォルトリスク)はまだ解決していません。
デフォルトリスク回避のためには債務上限の引き上げか上限の停止が必要ですが、可決された予算案はこの項目を除外した内容だったためです。

先進国での国債のデフォルトは前例がなく、既に世界的に影響が出ているとされています。
また、場合によってはドル安につながる可能性もあるという見方もあります。

下院では上限の適用停止(2022年12月まで)の法案が可決されていますし「本当にデフォルトに陥ることはないだろう」と予想する意見も多いですが、共和党は3度目の阻止に動くと報じられおり、すぐには解決しそうにありません。

2021年10月7日追記

6日の報道で、共和党が”12月までの2ヶ月間”債務上限を一時的に拡大する案を提案したとされています。
民主党からの正式な見解が出ていませんが、共和党の提案を受け入れるものと見られています。

2-1. チェック:10月18日が期限か?

イエレン財務長官は、政府の資金が尽きるのは10月18日前後だとしています。
この日付が一つの目安となりそうです。

3. 長期金利の上昇

テーパリングの実施がほぼ示唆された状況と、アメリカ政府のデフォルトリスクの不安もあって、長期金利の指標である10年国債利回りは9月末から若干下がったものの、再び上昇傾向のチャートを形成しています。

2021年6月~10月4日の米10年国債利回りチャート

長期金利が上がるとグロース株・ハイテク株を中心に株価が下落するため、厳しい地合いとなっています。
長期金利の変動要因や、なぜグロース株が売られやすくなるのかはこちらの記事で紹介しています。

長期金利は経済指標や米国債デフォルトリスクの行方に左右される部分もあるので、今後の各種発表や報道を注視しておきたいです。

4. 中国不動産大手の経営危機

  • ”中国恒大”は巨額の債務を抱え経営危機
  • 現在債権利払いの猶予期間中で、この期間中に支払えないとデフォルト
  • 別途ドル建て債の償還期限も急務の状況と報道あり
  • 子会社の売却が報じられている

中国の不動産大手”中国恒大”の経営危機も、世界中が注目する不安要素の一つです。

多額の負債によって経営危機に瀕している状況で、外国投資家向けの利払いができず、9月23日の8,353万ドル、9月29日の4,750万ドルどちらも見送りとなっています。
30日間の猶予期間はありますが、この期間内に利払いができない場合はデフォルト(債務不履行)となります。

また、不動産管理を行う子会社である”恒大物業集団”をライバル企業”合生創展集団”が買収するという報道もありました。
そうした中、10月4日、香港ではこの3社の株式取引が停止されるという事態になっています。

更に現在、恒大集団が保証しているドル建て社債(約2.6億ドル)の償還期限が過ぎているという報道もあります。
本来の償還期限は10月3日で、この猶予期間は5営業日しかありません。
10月3日は日曜日だったため、本当に償還できていなかった場合は今週中に何かしらの動きがあると考えられます。
なお、この件が解決できない場合もデフォルトとなり、他の全ての債務もデフォルトと見なされる”クロスデフォルト”となる危険もあります。

4-1. チェック:今週中の債務償還の有無

償還期限が10月3日だったドル建て債約2.6億ドルは本当に償還されていないのか、その場合猶予期間内(5営業日内。今週中)に償還されるのかは注視しておきたいです。

4-2. チェック:今後の社債利払い日・猶予期間

中国恒大の社債利払い日はまだまだ続きます。
一部報道されている今後のスケジュールは10月12日(約1億5,000万ドル)、19日(約2,000万ドル)、30日(約1,500万ドル)、11月8日(約8,000万ドル)、12月28日(約2億6,000万ドル)となっています。
また、9月23日のドル建て社債の利払いを行っていないため、30日間ある猶予期間内に支払が行われるのか注目が集まります。

4-3. チェック:中国市場の運休

10月1日~7日の間は、”国慶節”のため中国の株式市場は休場となっています。
市場が再開される8日に、何かしらの動き・報道があるかもしれません。

5. 日本は金融所得課税見直しか?

これまで一律20%だった金融所得課税の見直しが現実味を帯びてきました。
総裁選の頃からこの政策を掲げていた岸田氏が首相となり、10月4日の記者会見でもこの議論を進める意向を示しています。

議論の進捗や報道、可決された場合などは、株式市場へ影響があると考えられます。

金融所得課税の仕組みや1億円の壁、見直し議論の要点はこちらの記事でまとめています。

6. まとめ

コロナ感染拡大によって金融緩和策が取られ活性化してきた株式市場ですが、その出口戦略が検討される中、アメリカと中国という世界的に影響力の大きい国での不安要素も発生しました。
それらの結果、世界的に株式市場が不安定な状況です。

いずれも今すぐに解決する問題ではないようなので、各種不安要素と転機になりそうなポイントをチェックしつつ、どのポジションを取るか慎重に検討していきたいところです。

記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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