マラソン・デジタル・ホールディングス(Marathon Digital Holdings Inc / MARA)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
※現金収入が無いことを考慮
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. Marathon Digital Holdings Inc(MARA)について
1-1. 業種
仮想通貨(暗号資産)マイニング
1-2. 事業の概要
マラソン・デジタル・ホールディングスは、ビットコインのマイニングとデジタル資産形成を目指す企業です。
元々は鉱物に関する事業を行っており、2012年以降は特許関連の事業に従事していましたが、現在は仮想通貨(暗号資産)のマイニングを主軸としており、社名もそれに沿ったものに変更しました。
なお、2021年にマラソン・デジタル・ホールディングスへ社名を変更する前は、マラソン・パテント・グループという社名でした。
”ブロックチェーン・エコシステムとデジタル資産の生成に焦点を当てる”としており、ビットコインの取引事業を行うのではなく長期投資として保有すること、現金等が余った場合はビットコインを取得すること、市況によっては更に資金を調達してビットコインの購入を行うことを明言しています。
現状はビットコインに全てを集約していくビジネスモデルと言えるでしょう。
また、再生可能エネルギーの発電所近くにマイニング機器を設置して電気代を削減しつつ、2022年度末までに、採掘事業を100%カーボン・ニュートラルにするという目標も打ち出しています。
なお、2022年3月1日時点でのハッシュレートは約3.8EH/sでした。
今後の見通しについて、2022年半ばまでに13.3EH/s、2023年初頭には23.3EH/sとなる予測を出しています。
これが実現すれば、競合となるクリーンスパーク(CLSK)やライオット・ブロックチェーン(RIOT)を圧倒する数値です。
ただ、過去(2020年末の決算書)には、2022年1月末までに注文済みのマイニング機器が設置完了し、ハッシュレートが11.8EH/sとなる予測としていましたが、これは達成できていません。(2022年1月は約3.6EH/sだった)
なお、2021年12月21日にはマイニング機器78,000台の注文を行っており、2022年7月以降、毎月13,000台が納入される予定となっています。
1-3. チャート
マラソン・デジタル・ホールディングスの株価チャートはこのようになっています。
2021年11月の上昇は大きなものでしたが、その後は下落し、20ドル~30ドルの間で上下しています。
また、他のマイニング銘柄と同様、全体的にビットコインに連動する傾向があります。(2022年4月8日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- ひとまずの資金繰りは問題なし
- 株式発行・転換社債発行で多額の資金調達
- 自己資本比率は47%と高め
- 事業から現金を生み出せていない
※マイニング報酬は現金ではなくビットコイン
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

(単位:百万ドル)
貸借バランスは”おおむね安心タイプ”です。
転換社債の発行、増資や株式報酬のための株式発行で、固定負債・純資産ともに急増しています。
ただ、流動負債はほとんどないので、流動比率、当座比率ともに数千%を超えています。
高すぎる程の数値なので、ひとまずの資金繰りに困ることはないでしょう。
固定比率は111%ですが、固定資産は純資産と固定負債でまかなえているので許容範囲内です。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は47%と高めの数値です。
転換社債発行で、昨年から53ポイント低下しています。
2-1-3. キャッシュフロー
営業活動がマイナス、投資活動がマイナス、財務活動がプラスという組み合わせで、フリーキャッシュフローはマイナスです。
事業は36百万ドルの赤字で、更にビットコインマイニング事業の売上(収益)では現金が生み出されないこと(マイニング報酬はビットコインで得ることになる)などから、営業活動のキャッシュフローはマイナス収支です。
また、株式報酬の戻入れ額は161百万ドルと大きく、株式での報酬支払いはかなり高額となっているようです。
投資活動では、マイニング設備の購入と投資有価証券の購入に多くの資金を投じており、大きなマイナス収支です。
財務活動では、株式発行、転換社債発行による資金調達、また債務からの収入と返済があります。資金調達が多額なので、最終的には大きなプラス収支となっています。
2-1-4. 項目まとめ
株式発行だけではなく、負債でも資金を調達しているため、自己資本比率は他のマイニング銘柄より低いです。(ただしそれでも十分高い数値ではある)
マイニング事業以外の収入は無く、2021年度のビットコインの売却は少ないため、資金(現金)はほぼ外部からの調達に頼っている状態です。
2021年度は転換社債も利用して多額の資金調達を行いましたが、マイニング機器購入や大きな電力消費によって費用もかさむため、再び資金調達の必要が生まれそうです。
ビットコインの売却をしない方針であれば尚更です。
2-2. 収益性
- 2019年度以降損失額が増加
- 自己資本・総資産は急激に増加
2-2-1. ROE(自己資本利益率)

赤字のためROEはマイナスです。
2019年度以降は損失額が増加していますが、2020年度、2021年度の株式発行による自己資本増加でROEのマイナスは縮小しています。
2-2-2. ROA(総資産利益率)

ROAもROEと似た推移をしていますが、2021年度は更にマイナスが縮小しました。
これは負債の増加によって、自己資本以上に総資産が増えたためです。
2-2-3. 項目まとめ
ROE・ROAはマイナスで収益性はまだほとんどない状態です。
また、損失額が増加傾向なのが気になります。
2-3. 経営の効率
- 売上が急増も、資本の増加も大きく回転率は低い
- 棚卸資産はなし
2-3-1. 各回転率

資産・資本が大きく、回転率は全体的に低いです。
2021年度の売上は前年の34.5倍にもなりましたが、総資本が非常に大きく増加したため、回転率はあまり上昇しませんでした。
また、棚卸資産はありません。
2-3-2. 項目まとめ
全体的な回転率は低い状態です。
2-4. 成長している・していく企業か
- 現在の売上はビットコインのマイニング事業収益のみ
- マイニング収益は前年の35倍近く
- 粗利率は78%
- 2021年度は報酬費用が35倍に急増
- 研究開発費はなし
2-4-1. 売上高と営業利益

2021年度の売上は前年の34.5倍に急増しました。
マラソン・デジタル・ホールディングスはビットコインのマイニング以外の事業を行っておらず、今回のこの売上急増もマイニング事業によるものです。

2021年度は営業損失も急増しています。
これには原価の増加だけでなく、事業を運営する上での各種費用の増加が影響しています。
特に大きく増加したのは報酬費用です。
これは主に取締役などへの株式報酬が著しく増えたことによるもので、前年の35倍近くになりました。
また、2021年度にはビットコインの減損も発生しています。
なお、粗利率は78%です。
2-4-2. 項目まとめ
売上は急激に増加しましたが、株式報酬を非常に多く与えたため、損失額も大きく増えました。
粗利率は78%あり、費用を削減できれば黒字化できそうなので、2022年度にどうなるか注目したいです。
また、ビットコインのマイニングで成果を出し続けるためには、他のマイニング銘柄同様、随時最新機材を投入する必要があります。
3. まとめ
クロとしては、マラソン・デジタル・ホールディングス(MARA)は、一旦購入を見送りたいと思います。
ビットコインのマイニング専業であり、更に資産形成を目指して売却に消極的な分、成長の可能性とリスクの両方が高い銘柄だと考えられます。
また、ハッシュレートが同社の見通し通りに増強された場合はかなり有利になりそうですが、過去の見通しと実績を比較すると、その点もハイリスクだと感じます。
ちなみに最近の採掘量は、2021年12月 484.5BTC、2022年1月 462.1BTC、2月 360.3BTCとなっており、連続して減少中です。
また、他のマイニング銘柄同様、業績・株価はビットコインの価格変動の影響を受けます。
今回の記事はMarathon Digital Holdings Incの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
コメント