リーガルズーム【LZ】銘柄分析_オンラインで低コストな法務サービスを提供

米国株の年次決算書・銘柄分析
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リーガルズーム(LegalZoom.com Inc / LZ)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
なお、IPOしたばかり(売上の伸びなどを重視したい)なので、記事作成時点で最新となる第2Q決算についての言及もあります。

  • 安定性(資金繰り)※IPO反映前
  • 収益性
  • 経営の効率※IPO反映前
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

2021年度第4Qと通年結果の速報はこちら

1. LegalZoom.com Inc (LZ)について

1-1. 業種

商業サービス

1-2. 事業の概要

リーガルズームは、2021年7月2日にIPOを完了した、アメリカ全50州でオンラインでの法務サービスを提供する企業です。
IPOはつい最近ですが、既に20年以上事業を続けています。

一般の人々が法制度をより利用しやすくなるよう、オンラインでのプラットフォーム、手頃な価格でのサービスを提供しており、必要があればリーガルズームの持つネットワークの弁護士を顧客に紹介しています。

主な収益源は顧客の大半を占める中小企業(従業員50人程度までを指す)です。
弁護士を雇う余裕のない企業などでの社内弁護士のような役割や、起業(会社設立・登記)に関する業務などを請け負っています。

「起業・設立時に顧客を獲得し、その後のニーズに応える商品を継続して提供していく」というビジネスモデルの通り、特に起業に関するサービス利用は非常に多く、2020年にアメリカで設立された新規有限会社の10%、また設立された会社の5%に、リーガルズームのサービスが使用されていました。

また、割合は少ないものの個人消費者の顧客もおり、遺言や信託、財産設計などを支援しています。(なお今後は、売上の大きい中小企業設立へ投資を集中させるとしている)

収益(売上)の種類には、一度の手続き・サービスごとに収益を得る”トランザクション”、コンプライアンスソリューションや専門家によるアドバイザリーサービスなどの継続的な契約によって収益を得る”サブスクリプション”、銀行、税務、保険などのパートナー(サードパーティーである事業者)への顧客送客による”パートナーフィー”の3つがあります。

また2020年の年間売上を見ると、定期的な収益源かつトランザクションよりも利益率の高い”サブスクリプション”が売上の半分近くを占めました

過去には弁護士団体から”無許可の法律行為”だとして反発や訴訟が起こされたこともありましたが、現在は裁判制度によってかなり解決されているとしています。

また、IPO後のインタビューでは”法律に関するサービス市場は490億ドル近くある”、”そのうち約92%はオフラインで提供されている”という旨の発言があり、事業拡大の余地はまだまだ大きいと考えていることがうかがえます。(Los Angeles Times記事:https://www.latimes.com/business/story/2021-06-30/legalzoom-goes-public-aiming-for-a-5-billion-valuationを参照。2021年8月30日閲覧)

1-3. チャート

リーガルズームの株価チャートはこのようになっています。2021年7月2日にIPOを完了させ、その後は35~40ドルの間で推移しています。
8月中旬に約32ドルまで若干下がったものの、現在は再び35ドルを超えて上下しています。(2021年8月30日時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 債務超過だが、IPOで改善されるはず
  • キャッシュフローは悪い形ではない

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2020年決算書におけるLZ貸借バランス

(単位:百万ドル)

グラフのバランスが崩れている通り、債務超過状態に陥っています。
ただ、これは2020年末の財務状態です。7月のIPO完了で667百万ドル調達しているので、改善されていると考えます。

流動比率は約70%、当座比率は約60%固定比率はマイナスでしたが、これらもIPOで改善しているでしょう。

2-1-2. 資本の比率

2020年末時点、2021年第2Q(記事作成時点での最新決算)時点ではマイナス数値です。
IPOの資金が反映される第3Qを待ちたいと思います。

2-1-3. キャッシュフロー

2020年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスという”安定タイプ”の組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。

2019年、2020年の年次決算ではわずかながら黒字でした。
なお、2021年上半期を見ると事業は赤字ですが、株式報酬の戻入れが大きいこともあってキャッシュフローはプラス収支です。

2-1-4. 項目まとめ

不安定な財務状態ですが、IPOで改善していると期待しています。
なお、キャッシュフローは良いバランスに見えますが、2021年上半期の事業が赤字のため、過信はできません。

2-2. 収益性

  • 2019~2020年は黒字
  • ROAは米国平均の半分程度
  • 2021年は今のところ(上半期)赤字

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

債務超過状態のため割愛

2-2-2. ROA(総資産利益率)

LZのROA(総資産利益率)推移【2020年】

2019~2020年は黒字で、ROAは米国平均の半分程度でした。
この時点では総資産が小さいこともROAに影響しています。

2-2-3. 項目まとめ

ROAは米国平均の半分程度ながら、IPO前に既に黒字化していました。
ただ、この記事作成時点では2021年は売上と共に費用も増加し、赤字となっています。

2-3. 経営の効率

  • 総資本回転率は2回近く良好
  • 2020年時点では資産がコンパクトで回転率が高め
  • 棚卸資産はなし

2-3-1. 各回転率

LZの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率【2020年】

総資本回転率は2回に近くかなり良好な数値です。
ただ、IPOによって資本が増えるので2021年はどうなるか少々不安です。
固定資産回転率も4回近くあります。

棚卸資産はありません。

2-3-2. 項目まとめ

2020年時点では良好な回転率でした。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上高は順調に増加
  • 2020年は事業から利益が出ているが、2021年上半期時点では赤字
  • 売上高研究開発費率は8.3%

2-4-1. 売上高と営業利益

LZの売上高推移【2020年】

2020年の売上は前年比15%増加しています。

また、2021年上半期を見ても前年同期比30%以上増加しているので、まだ成長は続いていると判断できます。

LZの営業利益(損失)推移【2020年】

営業利益は5%近い減少となりました。
ただ、2021年上半期では営業損失が発生しています。

2-4-2. 研究開発費

2020年の売上高は約470.64百万ドル、研究開発費は約39.06百万ドルだったので、売上高研究開発費率は8.3%です。
リーガルズームの従業員数が見当たらなかったので明確に比較できませんが、科学技術・学術政策研究所の資料では※15~249人規模の企業での7.8%が最も高い平均値なので、リーガルズームの数値は高めだと言えそうです。

※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019

2-4-3. 項目まとめ

売上が順調に伸びている点に期待したいです。
研究開発費は特別高い値ではありませんが、テクノロジー銘柄のように最新技術が勝負となる事業内容ではないため、十分だと考えます。

営業利益も出ていて良い内容でしたが、2021年上半期を見ると損失が生じています。
これは主に各種費用の増加と、粗利率の低いトランザクション収入の比率が増えたためで、すぐに改善するのは難しいかもしれません。

3. まとめ

クロとしては、リーガルズーム(LegalZoom.com Inc)はリスクはあるものの期待したい銘柄です。

売上が伸び続けており、また、顧客の平均注文額、サブスクリプションユニット数、サブスクのユニットあたりの平均収益などの指標が全体的に上昇している点に魅力を感じます。
また、ビジネスモデルの入り口となる企業の設立件数も増加しています。

一方で気になるのは2021年が赤字となっている点ですが、事業拡大に向けてマーケティング費用などのコストが増えるのは仕方ない面もあるので、起業・設立サービスを利用した顧客のサブスク誘導(継続収入・高い粗利率)がより進むことに期待したいです。

なお、競合となりそうなRocket Lawyer社は現時点では非公開企業です。

今回の記事はLegalZoom.com Incの決算書・目論見書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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