ロッキード・マーチン【LMT】銘柄分析_宇宙事業で最多売上&利益の国防最大手

米国株の年次決算書・銘柄分析
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今回はロッキード・マーチン(Lockheed Martin Corporation / LMT)の決算書(10-K)やニュースについて分析しました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

2021年更新版はこちら

1. ロッキード・マーチン(LMT)について

1-1. 業種

航空宇宙、防衛、電子テクノロジー

1-2. 事業の概要

ロッキード・マーチンは航空、宇宙、防衛、電子テクノロジー事業を行っている、国防の米国最大手企業です。
空軍・海軍への戦闘機や、防衛システム、シミュレーションの設計・製造・サービスなどを幅広く提供しています。
2020年は売上全体の74%が米国政府関連のものであり、その他はほぼ海外の顧客の売上となりました。

宇宙関連事業で利益を出せている数少ない企業の一つで、NASAが月を目指す”アルテミス計画”にも参加しています。

1-2-1. 事業内容の近い競合について

事業内容が近い企業にノースロップ・グラマン(NOC)があります。
総売上高で見ると、ロッキード・マーチンがノースロップ・グラマンの約1.8倍となっており、大きく上回っています。

またセグメント別に見た場合は、ロッキード・マーチンの売上高の約40%は航空事業で、宇宙事業は約18%となっているのに対し、ノースロップ・グラマンは航空事業が約33%、宇宙事業が約24%です。

いずれも航空事業が最大の比率を占めていますが、宇宙事業の比率はノースロップ・グラマンの方が大きくなっています
(ノースロップ・グラマンについて分析した記事はこちら↓です)

1-3. チャート

ロッキード・マーチンの株価チャートはこのようになっています。
2020年2月のコロナ感染拡大による暴落後、それ以前の株価には戻り切れていません。
2020年夏から緩やかな値下がりが続いていましたが、2021年3月からは少し上昇傾向を見せています。(記事作成時点)

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 流動比率・当座比率・キャッシュフローは安心
  • 固定比率が高すぎる
  • 自己資本比率は低い
  • 自己資本増加で改善傾向アリ

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2020年決算書におけるLMT貸借バランス

(単位:百万ドル)

2020年の決算書では流動比率、当座比率共に100%を超えているため、短期の資金繰りはひとまず問題がなさそうです。

貸借バランスは固定負債が非常に多く”ギリギリ運用タイプ”だと言えます。
(貸借バランスのポイントについては、こちら↓の記事で紹介しています)

企業の「資金繰り」を知る!その2.貸借のバランスをタイプ別に診断する
貸借対照表の大まかなバランスの判別を、4タイプに区別して紹介しています。資産・負債・自己資本の合計金額がわかれば、決算時企業の財政状態を掴むことができます。

また、固定負債が多いため、固定比率は500%を超える数値となっています。
近年は自己資本を増加させており改善が見られますが、いまだに高い数値です。
(貸借貸借表の各比率については、こちら↓の記事で詳しく紹介しています)

また、2017年は債務超過でした。
これには、税法の改正によって繰延税金資産が減少し法人税等の再評価による費用がかさんだこと、未払年金が増加したことが影響しています。
翌年からは持ち直しているので問題ありませんが、自己資本が小さいために起きた債務超過であると言えます。
(フリーキャッシュフローが大きなプラスだったことも安心要素)

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率約11%で低い数値です。
近年は上昇(改善)傾向にありますが、まだまだ低い値です。

2-1-3. キャッシュフロー

キャッシュフローは、営業活動プラス、投資活動マイナス、財務活動マイナスという組み合わせで”安定タイプ”です。
(キャッシュフロー計算書を見る際のポイントや判断基準はこちら↓の記事で詳しく紹介しています)

2-1-4. 項目まとめ

経営の安全性については”ひとまずはセーフ”といった感じです。
流動比率・当座比率が100%以上ありますし、固定資産は固定負債と自己資本でカバーできているので、すぐに大きな問題が起きることはなさそうです。

しかし、自己資本比率が低く債務超過になったこともあるため、現在の改善傾向を維持することに期待したいです。
ただ、米国では債務超過よりもフリーキャッシュフローを重視する傾向があるため、債務超過ですぐに株価が暴落する危険はあまりないかもしれません。

2-2. 収益性

  • 増収増益だが、自己資本増加でROE下降中
  • ROAは2018年以上緩やかに上昇気味

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

LMTのROE(自己資本利益率)推移

2017年は一時的に債務超過だったため、マイナスの数値が出ています。
また、2018年以降は数値が下がっていますが、これは自己資本の増加によるもので、売上と純利益は年々増加しています

なお自己資本が小さいので、米国平均16~18%を非常に大きく上回る結果が出ています。
ただ、もし総資産の50%が自己資本と仮定して計算した場合も、ROEは約26%となるので、いずれにしても高い数値と言えます。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

LMTのROA(総資産利益率)推移

利益と共に総資産も増加していますが、ROAは緩やかな上昇傾向にあります。
米国平均6~8%を上回る高い数値です。

2-2-3. 項目まとめ

ROE、ROAどちらも平均以上の結果となりました。
コロナ感染拡大のあった2020年も含めて増収増益を続けているのは心強いです。

2-3. 経営の効率

  • 総資本回転率はセーフ
  • 固定資産回転率が低め
  • 棚卸資産回転率は良好

2-3-1. 各回転率

LMTの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率

総資本回転率は、約1.2回です。
過去4年分を見ても同程度なので、ひとまず問題ありません

固定資産回転率は約2回です。
また、少しずつではありますが、上昇してきています
この上昇は、固定資産の増加よりも売上高の増加が大きいことを意味しており、効率が上がっていると言えます。

棚卸資産回転率は約18回です。
これはかなり高い数値なので、在庫は適切に管理されていると言えそうです。
在庫の大半は作業進行中のものであり、基本的に余剰在庫を抱えずに済む事業内容であることが良い結果を生んでいます。

2-3-2. 項目まとめ

総資本回転率は最低ラインをクリアしており、棚卸資産回転率は良好です。
固定資産回転率が少々低いので、今後も上昇していくことを期待したいです。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上高・営業利益は年々増加
  • 直近は営業利益が伸び悩み気味
  • 研究開発費の比率は低め

2-4-1. 売上高と営業利益

LMTの売上高推移

売上高は上昇を続けています
伸び率でみると、2018年~2019年の期間(約11%)が大きく、その前後も順調な推移を見せています。

LMTの営業利益推移

営業利益も上昇を続けています。
2019年から2020年の伸び率が小さいですが、それ以外は売上高以上の伸び率となっています。

2-4-2. 研究開発費

2020年の売上高は約65,398百万ドル、研究開発費は約1,300百万ドルだったので、売上高研究開発費率は約2%となります。
11万人以上を抱える大企業ですが、少々低めの値です。(米国では規模の大きな会社の方が売上高研究開発費率が低い傾向にある)

2-4-3. 項目まとめ

安定した増収増益ではありますが、直近の営業利益の伸び悩みが気になります。
また、規模の大きな企業では売上高研究開発費率が低くなりがちですが、ロッキード・マーチンも例に漏れず低めの値です。

米国政府からの安定受注が見込めるメリットがあり、売上が年々増加している点は優秀ですが、今後も大きな利益拡大は望み薄だと感じます。

2-5. 補足:ニュース

2020年12月20日、エアロジェット・ロケットダイン・ホールディングス(Aerojet Rocketdyne Holdings, Inc. / AJRD)を買収し、完全子会社化することを発表しました。

エアロジェット・ロケットダイン・ホールディングスは、宇宙用途向けの推進・電力システムの開発・製造を専門とした企業で、特殊な動力やエンジンなどを空軍、陸軍、NASAなどに提供しています。(ロッキード・マーチンとも以前から取引があり、2020年12月末決算では売上高の34%を占めていた)
これにより、更に航空宇宙、防衛事業が強化されそうです。

なお、エアロジェット・ロケットダイン・ホールディングスには不動産事業もありますが、売上のほとんどは航空宇宙事業によるものです。

3. まとめ

ここまで見てきた結果、ロッキード・マーチン(Lockheed Martin Corporation)は「“安定志向”もしくは”宇宙関連に期待する”なら購入はアリ」な銘柄だと判断します。
国防最大手でもあることから米国政府からの安定した受注が見込めますし、コロナ禍でも増収増益できているため、ある程度安心して株を保有することができます。

2017年の債務超過も税法の影響で、かつ一時的なものであったため、そこまで心配は要らないと考えられます。(特に米国では、債務超過が日本ほど問題視されない傾向もある)
懸念点としては、米国政府からの受注では大きな利益を上げられない(利幅が制限される)ため、利益率の大幅増加はあまり見込めないことです。

また、直近10年分を確認しましたが、年間配当は増配を続けています
2020年の実績では配当性向約40%、配当利回りは約2.7%です。(2021年3月23日の株価357.6ドルで計算)

ちなみに、既に宇宙事業で利益を出している国防大手企業として、ノースロップ・グラマンと近い事業形態となっています。
NASAの”アルテミス計画”にも両社とも参加していますし、既に宇宙事業の実績のある企業として、ARK社の新規ETF「ARKX」に組み入れられるのではという声もあります。
(ARKXについて、こちら↓の記事で詳しく紹介しています)

今回の記事はLockheed Martin Corporationの決算書及びコーポレートサイトなどを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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