ジョンソン&ジョンソン【JNJ】銘柄分析_医薬品・医療機器などの超大手メーカー

米国株の年次決算書・銘柄分析
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ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson&Johnson 略称:J&J / JNJ)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

2021年度更新版はこちら

1. Johnson&Johnson(JNJ)について

1-1. 業種

健康&メディカル、医薬品、先端医療機器、消費者向け製品、ロボット

1-2. 事業の概要

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、医薬品や医療機器をはじめ、消費者向けの救急用品やベビー用品を開発・製造・販売する多国籍の超大手メーカーで、絆創膏の”バンドエイド”やコンタクトの”アキュビュー”などは、日本でもおなじみの商品ブランドの一つです。

医薬品では、長年抗HIV薬に取り組んでいる他、1回の接種で済む新型コロナ(COVID-19)ワクチンを開発し、承認を得ています。
また、2019年にコンゴ民主共和国でエボラ出血熱が流行した際には、エボラ治験ワクチンの寄付を行っていました。

医療機器の面でも幅広い取り組みを行っていますが、近年はロボット手術にも力を入れており、関連企業の買収などを繰り返し行っています。

ちなみに長年増配を続けていることでも有名で、2021年4月に発表された直近の配当で、連続増配59年となりました。

1-2-1. ロボット手術

J&Jは、Alphabet(Google / GOOGL・GOOG)の子会社であるVerily Life Sciencesと合弁会社”Verb Surgical(バーブ・サージカル)”を立ち上げ、手術ロボットの開発を開始しました。
その後2020年にVerb Surgicalの全株式を取得し、現在は完全子会社としています。

これまでフランスの手術ロボット開発企業Orthotaxy、ロボット支援内視鏡”Monarch”を持つAuris Health、低侵襲軟部組織マイクロ波焼灼システムのNeuWaveを買収しており、特にAuris Healthはロボット手術のトップ企業であるインテュイティブ・サージカル(ISRG)の創業者の一人であるFrederic Moll氏が設立した企業で、この買収はロボット医療の先駆者の獲得にもなりました。

2020年内の市場投入という見込みよりは遅れているものの、現在は2022年後半の臨床試験を目指して開発が進められている他、ロボット支援内視鏡”Monarch”は気管支の診断・治療の手段としてFDAの承認を獲得済みで、既に売上を上げています。

他にも投資や共同販促契約などを通して、ロボット医療市場に幅広く手を伸ばしています。

1-3. チャート

ジョンソン・エンド・ジョンソンの株価チャートはこのようになっています。長期的に見ると、緩やかながら右肩上がりの傾向です。
しかし直近では、配当の権利確定日以降、下げの傾向が続いています。(2021年6月21日時点)
また、後述する訴訟リスクの影響(不利な判決が出た際の下落)も受けています。

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 流動性が少々低めでギリギリセーフの数値
  • 自己資本比率はやや高め
  • キャッシュフローは優秀

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2020年決算書におけるJNJ貸借バランス

(単位:百万ドル)

貸借バランスは”ギリギリ運用タイプ”です。

流動比率は約120%、当座比率は約85%で、少し不安がありつつもギリギリ許容範囲内という数値です。
固定比率は約195%と高いですが、純資産と固定負債でまかなえているのでセーフです。

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率は約36%で、やや高めの数値です。

2-1-3. キャッシュフロー

2020年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスという”安定タイプ”組み合わせで、フリーキャッシュフローもプラスです。

事業で安定した利益を出しており、財務活動では株主への配当や株式の買戻しを行っています。

2-1-4. 項目まとめ

資産の流動性が少し低めな点が気になりますが、キャッシュフローは優秀です。
また、J&JはS&Pの格付けが高いため、現時点で資金の調達に困ることはほぼないと考えられます。

2-2. 収益性

  • ROEは平均を超えている
  • ROAは米国平均程度
  • 売上は増加中だが費用も増え、利益が若干低下中

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

JNJのROE(自己資本利益率)推移

2017年のROEが低いのは、税法改正によって法人税引当金が大きくなり、純利益が小さくなったためです。(売上・営業利益の減少はなし)

また、2018~2020年は売上は増加しているものの、費用も大きくなってしまい、純利益が少しずつ減少しています。

2017年は例外ですが、米国平均とされる16~18%を超えています

2-2-2. ROA(総資産利益率)

JNJのROA(総資産利益率)推移

ROAもROE同様の推移です。
米国平均値6~8%と同程度の利益率です。

2-2-3. 項目まとめ

直近は若干数値が下降気味ですが、米国平均程度の収益を安定して出しています
また、コンシューマーヘルス(消費者向け商品)セグメントでは訴訟費用が増加し、セグメント単体だと赤字となっています。

2-3. 経営の効率

  • 総資本に対する売上高は半分程度
    …売上に関係のない有価証券・買収による資産増加が影響
  • 棚卸資産回転率は製造業の平均程度

2-3-1. 各回転率

JNJの総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率

総資本回転率は0.5回で、最低ライン1回の半分程度です。
直接売上に関係ない投資目的の有価証券を保有していることや、買収による”のれん”の増加などが影響しています。

固定資産回転率も約0.7回と低めで、こちらにも買収の影響が出ています。

棚卸資産回転率は約9回で、製造業の平均(7~10回)と同程度です。

2-3-2. 項目まとめ

総資本回転率は低いですが、世界各地に拠点を持つ大企業と考えると、資産が膨れ上がるのは仕方ない部分もあります。
なお、例年同程度の数値で、2020年の回転率が特別低いわけではありません。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 緩やかながら売上は増加中
  • 訴訟費用の影響もあり利益が減少中
  • 売上高研究開発費率は高め

2-4-1. 売上高と営業利益

JNJの売上高推移

直近はかなり緩やかですが、売上高は増加を続けています。
2020年はコロナ感染拡大の影響もあり、コンシューマーヘルス・医薬品セグメントは売上増加、医療機器セグメントは売上減少となりました。

JNJの営業利益(損失)推移

営業利益は減少傾向にあります。

また、近年は訴訟費用によって利益が圧迫されてきています。(2019年、2020年は訴訟費用で約51億ドルの費用が発生)
特にコンシューマーヘルスセグメントは売上が増加したにもかかわらず、訴訟費用によって、単体だと赤字の結果となりました。

2-4-2. 研究開発費

2020年の売上高は約82,584百万ドル、研究開発費は約12,159百万ドルだったので、売上高研究開発費率は14.7%となります。
J&Jは13万人を超える従業員を抱える大企業ですが、医薬品・医療機器セクターということもあり、売上高の約15%分を研究開発に投じています。

科学技術・学術政策研究所によると※11,000~4,999人の従業員規模をピークに、従業員数が増えるほど売上高研究開発費率の平均は下がる傾向にあるとされており(資料内の最大規模の数値は従業員10,000人以上の場合で3.5%)J&Jの研究開発費率は高いと言えるでしょう。

※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019

2-4-3. 項目まとめ

売上高が緩やかながらも増加を続けている点は優秀です。絶えず画期的な商品を開発してきた成果でしょう。

しかし、年間51億ドル(5,100百万ドル)の訴訟費用は無視できません。
訴訟はまだ全ての解決に至っていないため、今後売上が成長を続けても費用が圧迫される可能性があります。

2-5. 訴訟リスク

J&Jは、アスベスト汚染されたタルクが含まれていたとされる”ベビーパウダー”と、中毒性のある”オピオイド(麻薬。鎮痛・陶酔などの作用がある)”が含まれた鎮痛剤の訴訟を抱えています。

ベビーパウダーの訴訟においてJ&Jは”アスベスト汚染はない”ことを一貫して主張していますが、2021年6月初旬、卵巣がんの発症を主張する22人の訴えを併合した訴訟で20億ドル超えの賠償を命じられ、更に未解決の訴訟を抱えていることを明らかにしました。
未解決の件数は公表されていませんが、J&Jは同様の訴訟を1万9000件以上抱えていたとされています。
また、これらの訴訟を受けた売れ行きの不調から、タルクを含むベビーパウダーの北米での販売を中止しています。

一方オピオイド訴訟では、”オピオイドの危険性を矮小化したマーケティングを行った”などとして、多くの自治体から複数の製薬会社が訴えられているものです。
アメリカではオピオイドの流行や、その中毒患者数の増加が大きな問題となっています。

いずれの訴訟においても、損失額の見積もりが可能な場合は引当金を用意するとしていますが、訴訟の数は多く、予定外の負債・損失の発生リスクを抱えています。

3. まとめ

クロとしては、J&J(JNJ)は優良銘柄だが訴訟リスクを念頭に置いておくべきと考えます。

J&Jは毎年安定した収益を生み出し、年々増配を続けている、バリューの中でも特に人気の銘柄です。
バリュー株には株価の大きな上昇が見込みづらいのですが、現在手術ロボットの開発に積極的に取り組んでおり、プラスアルファの成長に期待できる状態でもあります

ただ、大きな訴訟を抱え続けていることは無視できません。
2019年、2020年の訴訟費用は年間51億ドルでしたが、今後の判決によってはもっと巨額の費用が必要になる場合もあります。
J&Jの財務的信頼度は高く、資金調達に困って立ち行かなくなることは無いでしょうが、決算書に影響が出る可能性があることは念頭に置いておきたいところです。

今回の記事はJohnson&Johnsonの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

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