ジョン・ビーン・テクノロジーズ(John Bean Technologies Corporation / JBT)の決算書(10-K)分析やニュースについてまとめました。クロの判断は以下の通りです。
- 安定性(資金繰り)
- 収益性
- 経営の効率
- 成長への期待
それでは見ていきましょう。
1. John Bean Technologies Corporation(JBT)について
1-1. 業種
産業・工業機械、ロボット、製造加工
1-2. 事業の概要
ジョン・ビーン・テクノロジーズは、FoodTech(フードテック)、AeroTech(エアロテック)の2つの事業において、自動化や製造加工、システムソリューションを提供しています。
FoodTechでは主に食品製造・加工に関する事業を行っており、タンパク質加工、冷凍、フライ、計量、液体食品の低温殺菌・高圧処理、X線食品検査などを行う製品の設計・製造の他、無人配送車も取り扱っています。
この無人配送車は倉庫の在庫管理・ワークフローの効率化に役立ち、氷点下の冷蔵エリアなど人間の作業が困難な環境でも活躍しています。
また、病院向け、自動車メーカー向けなど、食品製造以外のモデルもあります。
AeroTechでは、旅客搭乗用のゲート機器や手荷物検査システム、地上支援装置といった空港サービスの他、軍用航空設備も提供しています。
また、空港やゲート機器の運用管理などの包括的な空港管理技術”iOPS”や予防保守契約など、継続的なサービスの提供も行います。
1-3. チャート
ジョン・ビーン・テクノロジーズの株価チャートはこのようになっています。2020年2月のコロナの影響での下落後、何度も上下を繰り返しています。
2020年8月頃からは緩やかな下降傾向にありましたが、11月頃から上昇し、現在は過去最高値の水準です。(2021年6月27日時点)
2. 決算書(10-K)の分析
2-1. 経営の安全性(資金繰り)
- 短期資金はギリギリセーフの数値
- 自己資本比率はやや高め
- 毎年黒字だがフリーキャッシュフローはマイナスの年もある
2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率
(単位:百万ドル)
貸借バランスは”ギリギリ運用タイプ”です。
流動比率は約130%、当座比率は約80%で、短期の資金が少々少なめです。
固定比率は約190%と高いですが、純資産と固定負債でカバーできているのでセーフです。
2-1-2. 資本の比率
自己資本比率は約35%とやや高めです。
2-1-3. キャッシュフロー
2020年は営業活動がプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスという”安定タイプ”組み合わせで、フリーキャッシュフローはプラスです。
2019年は3件の買収を行ったため投資活動のマイナスが非常に大きくなっています。
また、財務活動では借入・返済もよく行われています。自社株買いも行っていますが、2019~2020年は行われていません。
2-1-4. 項目まとめ
当座比率が少々低めではありますが、全体的に見ると安定性はほぼ問題ありません。
2-2. 収益性
- 2020年はコロナの影響で減収減益
- ROE・ROAは米国平均程度を維持
2-2-1. ROE(自己資本利益率)
2020年はコロナ感染拡大によって顧客の設備投資が減少し、減収減益となりました。
それでも、米国平均程度のROEを保っています。
2-2-2. ROA(総資産利益率)
ROAは過去4年間いずれも平均程度です。
2019年は買収で資産が増加したため、少々低下しています。
2-2-3. 項目まとめ
2020年はコロナ感染拡大の影響で数値が低下しました。
しかし、それでも米国平均程度のROE・ROAは維持しています。
2-3. 経営の効率
- 総資本回転率は最低ラインをクリア
- 買収の影響で資産が増加し、回転率低下
2-3-1. 各回転率
総資本回転率は約1回で、最低ラインはクリアしています。
しかし、2019年の買収による資産増加と2020年の売上減少によって少々低下しています。
固定資産回転率は約1.5回です。総資本回転率と同じく、買収によって低下しました。
棚卸資産回転率は約8.8回で、売上の少なかった2020年ですが、在庫の減少によって上昇しています。
2-3-2. 項目まとめ
総資本に対して、最低限の売上はクリアしています。
2-4. 成長している・していく企業か
- 2020年はコロナの影響で減収減益
- 2019年までは売上増加を続けていた(※2019年は微増)
- 売上高研究開発費率は平均より低い
2-4-1. 売上高と営業利益
長く増加を続けていた売上ですが、2020年はコロナによる影響で約11%減少しました。
特に空港関連の製品・サービスが多いAeroTech事業の減少が顕著です。
また、2019年はFoodTechの売上が前年比で微減したため、全体の売上伸び率は1.4%程度しかありませんでした。
2020年は売上高に伴って営業利益も減少しています。
また、2018年は組織の再編計画(リストラクチャリング)を行ったため費用が増加し、営業利益が微減となっていました。
2-4-2. 研究開発費
2020年の売上高は約1,728百万ドル、研究開発費は約29百万ドルだったので、売上高研究開発費率は1.7%となります。
科学技術・学術政策研究所によると※1同程度の従業員規模の平均は4.1%とされており、研究開発費率は平均より低い結果です。
※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019
2-4-3. 項目まとめ
リストラクチャリングへの取り組みや2019年までの売上増加は良い点ですが、今は正念場といったところです。
2020年だけでなく、2021年第1Qも前年同期比で減収減益となっています。
それでもある程度の売上を確保できてはいますが、こういった顧客の操業率低下を伴うイレギュラーの発生には一定のリスクがあることがわかります。
第4Qや2021年に入って回復傾向にはあるものの、ジョン・ビーン・テクノロジーズは”今後も数年間はコロナの影響が続くと見込んでいる”としています。
3. まとめ
クロとしては、ジョン・ビーン・テクノロジーズ(JBT)は一旦購入はせず様子を見たいと思います。
ROE・ROAも十分あり優良な銘柄ですが、減収減益の流れがまだある中で(2021年第1Qも、コロナの影響を受けているはずの前年同期比で減収減益)株価は過去最高の水準にあります。(2021年6月27日時点)
アナリスト予想EPSを毎四半期超えていることもありますが、ハイテク株全体の勢いに乗って株価が余計に高騰している可能性もあるので、クロとしては一旦様子を見ます。
とはいえロボット産業の将来市場予測は、製造分野だけでも2035年に約2.7兆円※2、ロボット産業全体では2035年に9.7兆円※3にもなるとされているので、買い場が来れば保有するのも良いと思います。
※2※3 国立研究開発法人NEDO 2035年に向けたロボット産業の将来市場予測資料を参照
今回の記事はJohn Bean Technologies Corporationの決算書及びコーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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