アイデンティブ【INVE】銘柄分析_RFID&セキュリティ技術を提供

米国株の年次決算書・銘柄分析
スポンサーリンク

今回はアイデンティブ(IDENTIV INC / INVE)の決算書(10-K)やニュースについて分析しました。クロの判断は以下の通りです。

  • 安定性(資金繰り)
  • 収益性
  • 経営の効率
  • 成長への期待

それでは見ていきましょう。

1. アイデンティブ(INVE)について

1-1. 業種

ネットワーク&通信、セキュリティ関連、電子テクノロジー

1-2. 事業の概要

アイデンティブは、RFIDと呼ばれる無線周波数識別技術・装置などのID識別ソリューションとセキュリティを組み合わせた、製品・サービスを提供する企業です。
一般企業や消費者だけでなく、政府、医療、運輸の分野にも顧客がおり、幅広い場面で商品を提供しています。

1-2-1. RFIDとは

RFIDは、ICタグを用いて近距離の無線通信を可能にする製品・技術です。
バーコードと似ていますが、より離れた距離でも読み取れたり、複数のタグをまとめて読み取れたりといった、優れた特徴を持っています。

身近なものだと交通系ICカードや一部の小売店で使用されています。
GUやユニクロの無人レジを利用されたことはないでしょうか?カゴに入った商品をレジの下に入れるだけで、まとめて読み取ってくれるので非常に便利ですよね。ここにも、RFIDの技術が使われているのです。

1-3. チャート

アイデンティブの株価チャートはこのようになっています。2020年2月のコロナ感染拡大によって一時期下がりましたが、その後順調に回復し、2017年3月につけた高値をブレイクアウトしています。

2. 決算書(10-K)の分析

2-1. 経営の安全性(資金繰り)

  • 流動比率・当座比率はギリギリ許容範囲
  • 固定比率は安心
  • 自己資本比率は良好な部類
  • キャッシュフローはあまり良くない

2-1-1. 流動資産・固定資産に関する比率

2019年決算書におけるINVE貸借バランス

(単位:百万ドル)

2019年の決算書では流動比率が100%を超えているため、短期の負債の返済には問題がなさそうです。
しかし、当座比率は80%程度しかないので、当座資産だけではまかないきれない状態です。

過去4年分を遡って確認しても、流動比率は130%程度、当座比率は80%程度で推移しており(大きな債務発行・株式売却があった2017年は除く)、大きな問題はないものの少しだけ心配な数値です。

また、固定比率は100%を下回っており、土地や設備など長く使う資産を、返済の必要がない資金で運用できています

(貸借貸借表の各比率については、こちら↓の記事で詳しく紹介しています)

この貸借バランスを総合的に判断すると、不安の少ない”安定タイプ”だと言えます。
(貸借バランスのタイプ判断については、こちら↓の記事にて紹介しています)

2-1-2. 資本の比率

自己資本比率50%前後で推移しているので、良い数値です。
他人資本(債務)に頼りすぎておらず、資本比率は健全と言えます。

2-1-3. キャッシュフロー

2019年、本業を含む営業活動のキャッシュフローは最終的にプラスになっています。過去3年間はこの部分がマイナスでしたが、今回は純損失額が抑えられ、買掛金が増加したため、プラスに転じることができたようです。
ただ、金額の割合で見ると投資の割合が70%と非常に大きくなっています。投資に積極的なのは良いことですが、安定性という観点から見ると不安です。

営業がプラス、投資がマイナス、財務がマイナスという組み合わせだけなら「安定タイプ」だと言えますが、投資金額の割合が大きすぎるので、総合的に見ると安定タイプではなく成長途中と言えるでしょう。
また、そういった状況もあってかフリーキャッシュフローのマイナスが続いており、不安要素の一つとなっています。
(キャッシュフロー計算書を見る際のポイントや判断基準はこちら↓の記事で詳しく紹介しています)

2-1-4. 項目まとめ

経営の安全性については、決して楽観視はできませんが、どちらかというと良い状況です。
ただし、赤字の状況であることと、2019年のキャッシュフローは営業活動の割合が20%であるのに対し、投資活動は70%もあるためバランスが良くないことは念頭に置いておきたいです。

2-2. 収益性

  • 赤字が続いている
  • 損失額は年々減少している

2-2-1. ROE(自己資本利益率)

INVEのROE(自己資本利益率)推移

事業は赤字が続いており、毎年損失が出てしまっています。
ただ、毎年少しずつ損失が小さくなっていることも読み取れます。

2-2-2. ROA(総資産利益率)

INVEのROA(総資産利益率)推移

ROEがマイナスなので、ROAももちろんマイナスになっています。

2-2-3. 項目まとめ

損失が出てしまっているので、収益性は今のところ”ない”という結論になりますが、損失が徐々に小さくなってきています
事業が軌道に乗り始めたと取ることもでき、今後に注目したい内容です。

2-3. 経営の効率

  • 総資本回転率はセーフ
  • 固定資産回転率、棚卸資産回転率も問題はない

2-3-1. 各回転率

INVEの2019年総資本回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率

総資本回転率は、約1.1回です。
ひとまず1回は超えているので、最低目標は達成できているといえます。

固定資産回転率は約3回、棚卸資産回転率は約5.2回です。
固定資産回転率は2018年も2019年と同じく約3回ですが、2016年は約6回、2017年は約8回ありました。2018年の買収の影響で固定資産が増加し、それ以降回転率が下がっているようです。まだ買収で得た資産を有効活用しきれていないと言えます。

棚卸資産回転率は、ここ数年間の大きな変動はありませんが、製造業としてみると平均より若干低い数値です。

2-3-2. 項目まとめ

特に問題はない回転数ですが、買収の影響で固定資産が増えています。この資産を活かして売上を伸ばすことができれば効率と収益が上がるはずなので、そこに期待したいです。

2-4. 成長している・していく企業か

  • 売上高は年々増加
  • 赤字続きだが年々赤字額は減少している
  • 研究開発には意欲的

2-4-1. 売上高と営業利益

INVEの売上高推移

売上高は4年間ずっと上昇しています。
伸び率でみると、2017年~2018年の期間に約30%上昇しました。その前後は約7%の伸び率です。

INVEの営業利益(損失)推移

営業利益は出ておらず赤字状態が続いていますが、毎年損失額は減少しています。2019年の営業損失は11万ドルです。
売上高に占める損失の比率も減少を続けており、2019年には0.13%になっています。

2-4-2. 研究開発費

2019年、売上高は約84百万ドル、研究開発費は約8.6百万ドルだったので、売上高研究開発費率は10.30%となります。
科学技術・学術政策研究所によると※1同規模の米国企業では7.8%程度が平均ともいわれるため、10%超えは平均以上に研究開発に費用を投じているといえるでしょう。

※1出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所科学技術指標2019

2-4-3. 項目まとめ

いまだ黒字化ができていないことは念頭に入れなければなりませんが、成長には期待が持てそうな内容です。

2-5. 補足:直近四半期決算・ニュース

2020年第3四半期までの9ヶ月間の財務諸表を見ると、現金、売掛金、在庫などの流動資産が増える一方、ローンなどの借入金を受け、流動負債の金額が増えています。
また、純損失が約4百万ドルと大きくなってしまっています。

しかし今年の2月に公式サイトでニュースが出て、2020年第4四半期の好調ぶりローンの条件改善が伝えられました。

株価チャートは上昇を続けているので、これらのニュースが良い方向に影響している、もしくは電子テクノロジーというセクター全体のトレンドに乗って上がっていることが予想されます。(2021年2月16日現在)

3. まとめ

アイデンティブ(INVE)は、クロとしては成長に期待したい銘柄です。
しかし同時に、まだ安定した黒字化ができていないため「リスクもある」ことに注意が必要です。
安定して利益を出している企業へ投資をしたい場合は購入すべきではない株、と言えるでしょう。

ただ、顧客に政府も入っているので商品の質は信頼できそうですし、コロナの感染拡大でニーズの高まる医療・運輸業に提供できる商品を持っていることが強みとなるのではないかと考えています。
また、赤字でリスクがあるのは間違いないのですが、当座比率・固定比率は最低ラインをしっかりクリアし、自己資本比率は良い部類なので、たちまちの経営悪化はしづらい体質であることも期待の後押しとなりました。

3月に2020年の決算書が出るので、それによって株価がどう動くのかを注視していきたいと思います。

今回の記事はIDENTIV INCの決算書及び四半期レポート、コーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました