昨年(2021年)11月に可決された”インフラ法案”のアピール遊説のためバイデン大統領が訪問していたペンシルベニア州で、先日橋の崩落が起きました。
この崩落を受け、バイデン大統領は”老朽化した橋を全て修繕する”と、インフラ投資への必要性を訴えています。
インフレなどを受けてなかなか実行できないでいたインフラ法案ですが、これを機に再度注目が集まるかもしれません。
今回はそのインフラ法案の概要と、その恩恵を期待できる米国株の銘柄をまとめました。
1. インフラ法案とは
インフラ法案とは、前述した橋の他、道路整備やEV用の設備、公共交通機関、電力、水、インターネットの高速な通信網などへの投資が盛り込まれた政策です。
当初は2兆3,000億ドル規模のものでしたが、議論の末、今後5年間で約1兆2,000億ドル規模の内容で可決されました。
新規支出約5,500億ドル分の中で大きな割合を占めるのは道路・橋の補修で、1,100億ドルの予算が割り振られています。
続いて、公共交通機関や鉄道に総額約1,050億ドル、インターネットインフラに650億ドル、電力網に650億ドルと続きます。
EV関連としては、充電スタンドの普及に75億ドル、電動バス・フェリーにも75億ドルが割り当てられる予定です。
2. 注目銘柄
2-1. ユナイテッド・レンタルズ(URI)
United Rentals Inc / URI
ユナイテッド・レンタルズは建設設備のレンタルを行う世界最大の企業です。
測量機、照明といった基本的な設備から、フォークリフト、圧縮機、コンクリート機器、地ならし機といった特殊な機械までを取り扱います。
2021年の実績では、産業・インフラ・非建設用のレンタル料が売上の約50%を占めている(残りは商業用建設や住宅建設)ので、インフラによる施工の恩恵に期待できそうです。
2020年の売上・利益は2019年よりも減少していましたが、2021年に再び増加に転じ、2019年の実績を超えました。
2021年の売上・利益を2019年の実績と比較すると、売上4%増加、純利益18%増加となります。
ユナイテッド・レンタルズの株価の推移は以下の通りです。
2-2. ニューコア(NUE)
Nucor Corp. / NUE
ニューコアはアメリカ最大級の鉄鋼メーカーです。
製鉄所の運営だけでなく、鉄鋼製品の製造や原材料の販売も行っています。
”ミニミル”と呼ばれる小規模な電気炉を使った生産を行うことが特徴で、この生産方法は高炉式よりも効率的で、二酸化炭素の排出量が少ないとされています。
年間売上は減少傾向でしたが、2021年は売上が前年比81%増加、純利益は846%増加しました。
ニューコアの株価の推移は以下の通りです。
2-3. チャージポイント(CHPT)
ChargePoint Holdings Inc / CHPT
チャージポイントはEV用の充電ステーションネットワークを提供するSPAC IPOした企業です。(合併したSPAC企業はスイッチバック・エナジー・アクィジション)
EV充電ステーションとしてはNo.1のシェアを持っており(記事作成時点)、充電ステーションの販売とソフトウェアの面でのサブスクリプションを併用しています。
2021年第3Qまでの9ヶ月間(記事作成時点の最新決算は第3Q)の売上は162百万ドルで、前年同期比では55%増加しています。
また、事業はまだ赤字の段階です。同期間の純損失は72百万ドルで、前年同期比32%減少していますが、直近の四半期では純損失が再び増加しています。
チャージポイントの株価の推移は以下の通りです。
2-4. ブリンク・チャージング(BLNK)
Blink Charging Co / BLNK
ブリンク・チャージングもEV用の充電スタンドネットワークを提供する企業です。
充電ソリューションを販売するだけでなく、ブリンク・チャージング自身が充電スタンドの運営を行うビジネスモデルも行っており、事業形態としては幅広いです。
また、住宅用の充電装置も提供しています。
2021年第3Qまでの9ヶ月間(記事作成時点の最新決算は第3Q)の売上は13百万ドルで、前年同期比では244%増加しています。
また、チャージポイント同様事業はまだ赤字の段階です。同期間の純損失は37百万ドルで、前年同期比265%増加しています。
ブリンク・チャージングの株価の推移は以下の通りです。
2-5. マーチン・マリエッタ・マテリアルズ(MLM)
Martin Marietta Materials Inc / MLM
マーチン・マリエッタ・マテリアルズは、骨材(砕石、砂、砂利)を供給する企業です。
セメントや生コンクリート、アスファルトといった製品やサービスも手掛けています。
積極的な買収によって業績を伸ばしており、米国内の地域を分割したイーストグループとウェストグループの2つのセグメントで事業を行っています。
2019年~2020年の売上(4,730百万ドル)はほぼ横ばいでしたが、それまでは売上を順調に伸ばしていました。2021年第3Qまでの9ヶ月間(記事作成時点の最新決算は第3Q)では、前年同期比10%の売上増加(3,918百万ドル)、1%の純利益増加となっています。
マーチン・マリエッタ・マテリアルズの株価の推移は以下の通りです。
2-6. ヴァルカン・マテリアルズ(VMC)
Vulcan Materials Co / VMC
ヴァルカン・マテリアルズも建設用骨材(砕石、砂、砂利)を供給し、アスファルトや生コンクリートなどを製造する企業です。
米国最大規模を誇り、米国南部へ重点的に事業を展開しているのが特徴です。
2020年の売上(4,857百万ドル)は2019年からわずかに減少しましたが、それまでは売上を順調に伸ばしていました。
2021年第3Qまでの9ヶ月間(記事作成時点の最新決算は第3Q)では、売上が3,946百万ドルで前年同期比7%増加、純利益が13%増加となっています。
ヴァルカン・マテリアルズの株価の推移は以下の通りです。
2-7. キャタピラー(CAT)
Caterpillar Inc. / CAT
キャタピラーは世界最大級の重機メーカーです。建設や掘削に使用する機械、ディーゼルエンジン、天然ガスエンジンなどを製造しています。
2020年の売上は2019年から22%減少していましたが、2021年はかなり回復しました。(ただし2021年の売上は50,971百万ドルで、2019年の売上53,800百万ドルには及ばなかった)
純利益も2020年は2019年の約半分まで落ち込んでいましたが、2021年は再び増加し、こちらは2019年を上回っています。
キャタピラーの株価の推移は以下の通りです。
3. まとめ
今回はインフラ整備という点で、建設機材レンタル、鉄鋼メーカー、EVステーションプロパイダー、建設用骨材メーカー、重機メーカーの7銘柄の事業の特徴、売上・利益(損失)傾向、株価チャートをまとめました。
EVステーション事業はまだ大きな損失が出ている状態ですが売上の伸びは大きく、今後EVがさらに普及していけば、今回のインフラ法案の影響に限らない長期的な成長が期待できます。
また、今回取り上げたものには景気変動の影響を受けるシクリカル銘柄が多いため、テックやグロース銘柄に偏ったポートフォリオのバランスを取りたい場合にも、候補の一つになり得ます。
記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
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