イルミナ(Illumina, Inc. / ILMN)の9月締め四半期決算(2021年第3Q)について、アナリスト予想とも比較しつつその内容をまとめていきます。
■イルミナの事業内容や年次決算について紹介した記事はこちらにあります。
1. アナリスト予想との比較(EPS)
アナリスト予想を超えるEPSを報告し続けていますが、前期、前々期と比較すると予想との差が縮まっています。
また、売上、EPSともに前期を下回りました。
※今回、イルミナは10月3日締めで第3Qを報告しており、9月30日の欄はその10月3日締めの数値を記載しています
次は、実際の売上高と利益額がどのように推移しているのかを見ていきます。
2. 四半期ごとの売上高と純利益(損失)の推移
これは、四半期ごとの売上高と純利益をまとめた表です。
(単位:百万ドル)
売上高は前期と比較すると減少しましたが、前年同期比では40%増加しました。
また、純利益額はどちらと比較しても大きく増加しています。
しかし、今期(第3Q)の営業利益は545百万ドルのマイナス、つまり5億4,500万ドルの営業損失が発生したという結果です。
これは主に、GRAIL社の買収に関連した株式報酬費用(前倒し分を含む)の増加が原因となっています。
一方、事業外の利益として、買収前に保有していたGRAIL社の株式を再評価したことによる差益が900百万ドル計上され、最終的には黒字となっています。
3. その他の補足
3-1. 調査完了前のGRAIL買収
イルミナがGrail社の買収を発表した後、”この買収は今後の競争・技術発展の妨げ”になるとして、FTC(連邦取引委員会)や欧州委員会によってストップがかかりました。
そしてイルミナは欧州委員会から調査を受けることになったのですが、2021年8月19日、この調査期間中であるにも関わらず、GRAIL買収を完了させてしまったのです。
この買収完了が発表されると株価は一気に暴落し、欧州委員会からは”遺憾であり、義務違反を深刻に捉える”旨のコメントが出され、FTCは後日”買収取り消し”を求めると発表しました。
ただ、イルミナは欧州委員会の調査には協力するとしており、これが完了するまでGRAIL社は別会社として保有することを明言しています。
イルミナの主張や、罰金などのペナルティの可能性といったGRAIL買収の詳細についてはこちらの記事でまとめています。
3-2. GRAIL社の業績
別会社としているため、GRAIL社の業績はイルミナと別に公表されています。
今期のGRAILの売上は2百万ドル、営業損失は750百万ドルです。
3-3. ガイダンス
2021年の売上成長率は約36%になると予測していることが発表されました。
3-4. インサイダー取引での売却
イルミナの大株主の一人でSVPで最高技術責任者でもあるアレクサンダー・アラバニス氏が、11月2日に120万ドル分(2,926株)もの自社株を売却していたことがわかりました。
ちなみにこの売却後も約188万ドル(約4,700株)分の株式を保有しています。
4. まとめ
イルミナ(ILMN)は第3Qもアナリスト予想を上回る結果を出しましたが、株価は下落しています。
営業損失が発生したことや、大きなリスクを冒してまで買収したGRAIL社の業績が予想以上に悪かったことなどが一因となっているようです。
また、重要な株主でもある社員が自社株を大量に売却した点も気になります。
GRAIL買収に関する欧州委員会の調査は来年2月までかかる見込みですが、FTCの訴訟も決着がついておらず、2月より早い時期に何かしらの動きがあるかもしれません。
技術力や収益力はある企業ですが、引き続き注視しておきたい銘柄です。
(イルミナの事業内容や年度末の決算書分析を行った記事もこちら↓にあります)
今回の記事は2020~2021年のIllumina, Inc.の決算書及び四半期レポート、コーポレートサイトを参考に作成しました。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
また、記事の内容はあくまでクロの考え・判断を中心に構成されているため、投資の際はご自身の判断の上、自己責任で行ってくださいますよう、お願いいたします。
コメント